混沌の廃墟にて -107-

「ふ」の麹町冒険記

1990-03-01 (最終更新: 1996-03-15)

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3月に入って、いきなり DynaBook の調子が悪くなったらしく、例の横線が表 示された状態になっている。BASIC 風に書けば、
    LINE(0,201)-(639,201): LINE(221,199)-(221,399)
のように、2本の直線がわずかに交差して描画されている。以前書いた通り、 この現象は突発的に発生し、気が付かないうちに正常化するため、なかなか店に 持ち込むタイミングがなかった。今回は半日以上異常が続いている。
    *
先日、NIFを訪問する機会があった。昨年末から極端に忙しい状況が続く合 間を縫って出かけたため、ほとんど業務上の打ち合わせのようになった。そのた め、ここで述べるような事もあまりないのだが、ネタがないため書いても問題な さそうな感想程度書いてみようと思う。もちろん、私としては、最初からネタに するつもりで出かけたのだが。

まず、この会談日時を決定するまでに、大変な時間がかかった。会談しましょ うという話が出たのが昨年の11月頃だと思う。この時点では、何の為に会談す るのか不鮮明という不思議な状況もあったが :-)、とりあえず日時の都合を教え て欲しいと連絡しておいた。

私は、普段はNIFへのメールの返事は3週間まで待つ事にしている。つまり、 普通は即日返信があることも多いが、待たされる時には経験的に2週間程度かか る。+1週間待っても返信がなければ、担当者が行方不明になるなど非常事態も 考えられるから、当方から再度連絡するのである。

まず、都合のよい日があれば、こちらから連絡するという設定だったが、都合 のよい日がまるでない。私は土日を潰して出勤している状況だから、これは当然 である。これではらちがあかないので、12 月中に無理をすれば有給を半日取って 会えるかもしれない、いかがですか、とメールを送ったが、これは返事がなかっ た。年が明けた。

返事の来る気配がないので、再度こちらから連絡した。NIFも、とても忙し いらしい。いつでもよいという返事をもらったのだが、まさか日曜日とか平日の 深夜1時から会うわけにいかないだろうし、平日のあたり前の時間は出勤しなけ ればならないから、もっと具体的に何時から何時まで、という連絡が欲しいとメー ルを送った。これも返事がなかった。

このように書くとNIFのせいで会談が延びたと誤解されそうだから、実際の 所を暴露しておくと、「相手がこんな調子だから、まあいいや」という感じで、 とうとう私まで向こうからのメールの返事を2週間ほどかかって返事を書く始末 である。だから、お互いマイペースで、何も問題ないのである。ただ、通信が途 絶えた時に「どうなってますか」という Acknowledge を送信するのは、常に私だ ったが。

誤解のないように弁解させていただくと、こういうのは特別である。私はでき るだけメールの返事を早く書くことにしている。大抵の人は即日、翌日、遅くて も2日待てば返事が届いていると思う。たまに、メールボックスの整理の都合で メールを読み損ねて、1週間とか、もっと長く待たせてしまったり、返事を出し たかどうか不明になってしまい、2通返事を送ってしまうことがあったかもしれ ない。非常に申し訳ない。(全然弁解になっていないな…)

返事を期待しているのにいつまで待っても来ない方がいらっしゃいましたら、 「何やってるんだ」という怒りのメールを送ってください。SYSOP 宛メールとい う機能を使えば、送信先も確実に私にメールが届きます。

2月中に解決させておきたい用事もできたため、いきなり「2月中に時間は作 れるか」とメールを送った。この具体的な質問の返事がさらに具体的で、その週 ではどうか、という話になった。これほどあっさり即決できるとすれば、今まで のメールのやりとりは一体何だったのか…。という事に気付かなければ、お互い 決断力・行動力があるということになり、割と格好いい。:-)

    *
この後に、さらに大ポカがある。だいたい、会談の目的がまだ明確でない(明 確な用件があったにしても)。資料も用意したかったので、再度確認を要求し、 また時間と場所を指定して欲しいというメールを出した。時間は、9:00 - 10:00 から1時間程度で何とかしよう、とこちらから提案したら、9:30 に麹町に来てく れ、という事になった。

しかし、のたのたと提案の応酬をしている暇はなかったのである。では 9:30 に来てくれ、というメールは、多分前日の午前中に私に向けて送信されたようだ が、私はその日のうちに帰宅できずに、0:00 を過ぎてからこのメールを見る事に なった。さて、私は麹町のどこに行けばよいのだろう? もちろんNIFへ行け ばよいのだが、麹町に行った経験は勿論生まれてから一度もない。麹町に行けば わかる仕組みになっているのだろうか?

このような場合、別に気にせず、麹町に行けば巨大な城でも建っていて、一目 でNIFとわかるのだろう、程度のつもりで出かけてしまうのは、私のよくない 習性である。ただ、私はUlitma 等で冒険慣れしているため、これでもとりあえず 到着してしまう。途中で運よくおまわりさんに出会ったのは、好運点が高かった せいに違いない。

とりあえず目的地には行けたが、時間がなかったので、ほとんどお茶を飲んで 風邪のウイルスをばらまいただけで帰ってきてしまった。:-)

    *
さて、会談の内容は多分ここで書いてもびっくりする程ありきたりで、差し障 りがなく、まるで面白くない。ゆえに全部省略する。そこで、一つだけ気になっ たことがあったので、それを中心に感想を書こう。それは、「そろそろ、NIF も会員がのべ10万人になり、社会的に認知されるようなメディアとしての方向 を考えたい」という意見である。これは私の意見ではなく、NIFの担当者のご 意見だ。ここでは、誰がこれを言ったというのはむしろ問題ではなく、一般的な 命題として、次のことを考えてみたい。

「ある広域ネットワークが日本で社会的に認知されるとは、どのような状態か。 それは、どのような条件が必要か。」

まず、のべ会員10万人という数を、評価する。全国ネットワークを問題にし ているのだから、日本の総人口、122M 人と比較すると、100K 人は、およそ 0.1 % に相当する。細かい話だが、1K = 1024 だから 100K 人という表記は正確では ないが、適当ということで。

もっと実際的に検討しよう。総人口というのは、まさしく本当にそれだけの人 間がいると考えてよい。誤差は少ない。が、のべ会員 100K 人というのは、本当 はどの程度いるのだろうか?

例えば私は SDI00344 以外に2つの ID を持っているから、この中に既に3名 いるはずだ。しかし、こういう場合は逆に希なケースで、一人が申請する ID は 1つの場合が多いと思うし、逆に会社持ちの ID のように、単独 ID で複数人が 使う場合を考えると、単に登録会員数が 100K 人といっても、実際にアクセスし たことのある人数は、もっと多いかもしれない。

しかし、問題は、そんな事ではない。試しに入会してみたが、少しだけアクセ スして、それっきり、という人が多い筈である。現に、私のごく身近にさえ、ID を持っているがここ1年以上アクセスしていないような感じの人が2人いる。

ここで、1カ月以内に1度でもいいからアクセスした人のことを、「実質会員」 と呼ぶことにする。実質会員数 10 万人、と言うなら、これは本当に 10 万人が 参加していると考えてよいだろう。全然関係ないが、ちなみに FPRG の登録会員 数は 4000 名で、そのうち 2400 名程度の方はこの1カ月に1度もアクセスして いないのだ。

実質会員数が 10 万人となった時に、大々的にイベントをする、というのが、 非常に個性的で面白いと思う。私は、登録されている人数が何人ということでは あまり喜ぶことはない。FPRG の会員が 2000 人になった時、4000 人になった時、 その事を電子会議で発言することすら気が進まない。会員数が増えるに従って、 仮想化した会員の数も増えるのだから。開き直って、仮想会員 3000 人記念、と いうのが面白いかもしれない。

オンライン・コミュニケーションが社会的に認知されたと認められる、最低の 人数はどの程度か。私の感覚として、例えば、実質参加者が 300 万人という数を 挙げておこう。これは国民の 3% 弱に相当する。これでも、おそらくテトリスで 遊んだことのある人に比べれば、はるかに少ないのである(比較が滅茶苦茶だ)。 まともに比較したいのなら、例えばTVの台数や、電話の加入者数と比較すれば よかろう。

この数に到達しない限り、この閉じた世界は、特殊な人々だけが使うことので きる、得体の知れない世界から脱却することはないと思う。

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念のため繰り返すが、実質参加者が 300 万人、と言うのである。仮想会員は数 に入れていないのだ。この数は非常に大変かもしれないが、ちょっとした事で、 ごく簡単に達成できてしまうかもしれない数字である。プランも、いくつか考え たが、ここでは内緒にしておこう。具体的な所は全て想像にまかせよう。そして、 もし、例えば皆さんが「5年以内に実質参加者が 300 万人の広域ネットワークを 作れ」という任務を受けたら、まず何をすればよいか。

この回答も人それぞれあるだろうから、あえて書くまい。最初に「感想を書こ う」と書いたから、どのような感想だったか一言だけ書きたいが、NIFのイメー ジしているネットワーク作り(または、ネットワークそのものの、イメージ)と、 私のイメージとは随分違ったものだ、と思ったのである。私は NIFTY-Serve にど のようなネットワークになって欲しいという要望はあまりない。期待しているイ メージでなくても一向に構わないし、むしろ意表をついた進歩があれば、その方 が面白いような気がするので、これから我々はどこへ向かっていくのか、船の中 から見守ってみたいと思う。

    *
さて、FPRG の登録会員数は約 4000 名、実質 1600 名の参加者に支えられてい るが、この人数で何かできることがないか。例えば、Q&Aのコーナーを作って はどうか、これは昔から考えていた、企画倒れのプランの一つである。実現して いない理由は2つ。まず、Q&Aという名称は、会員のQにスタッフが回答する、 というパターンを想像すること。それを実現するには、あまりに SYSOP は無知で ある。2つ目は「みなさん、発言してください」と書かないというのが FPRG の 妙なポリシーだから、「回答できる方はよろしく」とも書き辛い。

それで、長い間Q&Aは企画のままに終わってきたが、1600 名という会員数に なってくると、いかにももったいないような気もする。というのは、皆さんは現 に体験しているから実感できるはずだが、会員 1600 名と言っても、実際に発言 している人はごく限られた人だけであり、9割以上の人は、ただTVを見るよう な「受けるだけ」のコミュニケーションに満足している(??)わけである。

だから、もし誰かが何かを質問したとしても、回答がつく確率は非常に少ない だろう。現に、Qだけで回答のない質問が、VOP にもあるではないか。

しかし、1600 名も会員がいれば、たとえ回答がつく確率が 1/1600 だとしても、 回答が1つ付くかもしれない。回答が無理でもヒント程度ならわかる人も多いか もしれない、ならQ&Hでもよいのではないか。

ここで最後まで残っている問題が、「回答できる人はよろしく」と書きにくい ことで、では「回答しなくて結構です」と書くか、というと、これも非常に妙だ。 「Q&Hの会議室です。ただし、SYSOP の回答は保証しません」。一体何なんだ。 てなわけで、このあたりで葛藤している SYSOP は会員に実は迷惑をかけているの だろうか、と悩む。なかなか結論は出ない。時間ばかり経過する。こうして、企 画倒れの企画はスタックレベルを増やすのだ。


補足


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -107-
    1990-03-01, NIFTY-Serve FPROG mes(5)-170
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1990