混沌の廃墟にて -95-

1990 に向けて

1989-12-21 (最終更新: 1996-03-23)

[↑一覧] [新着] [ホームページ]


FPRG の定期リアルタイム会議では何度か話題にのぼっているので、今更繰り返 すまでもないが、そろそろコンポタイプのパソコンが出てきてもよいと思う。オー ディオの世界のような拡張性は、新旧交代の著しいパソコンの世界でこそ必要だ。

例えば、80386 + 2MB RAM + HDD (内蔵)という構成のパソコンを買ってしま ったら最期。次に 80486 のモデルの新機種が発売された時、全て買いなおしにな るのはどう考えても納得できない。CPU ボード、RAM ボード、ハードディスク、 全て組み合わせタイプならば、CPU ボードだけ 486 にすればよいのである。設計 上非常に難しいとも思えない。(*1)

現状では、パソコン全部を捨てて買い直す方式が多い。かろうじて、外付けの HDやモデムを買えば、その部分だけは救われる。再利用できるものまで買い直 させると、余計な利益が上がると錯覚するかもしれないが、実際は買い替えを断 念するケースが多いのではないか。

余談だが、FM TOWNS が発表された時、キーボード別売というのに批判的な人も いた。キーボードがなければ使いものにならないのだから、わざわざ別売にして 定価を安く見せようという魂胆が気に入らないらしい。私は、キーボード別売に より、例えばサードパーティーによるキーボードを使うことも可能かもしれない し、本体がバージョンアップした時には、本体だけ買い替えればよいという所を やや高く評価してもよかったような気もする。:-)

    *
パソコンにHDがあると便利であることは身をもって体験している。最近のア プリケーションの中には、HD前提のものも多い。そこで、パソコンには必ずHD を内蔵すべきだという意見が出てくるのだが、これには反対である。すでに書 いたように拡張性・柔軟性の点の問題もあるが、つけ加えるなら、HDは比較的 故障の可能性の高い装置である。外付けの場合は最悪の場合でもHDなしの状態 で本体だけ使える点に注目したい。(*2)

HDがない環境は我慢できないという人でも、修理期間中他のHDを借りる手が残 されている。本体に最初から内蔵されていると、本体ごと修理に出している間、 何もできないのである(もちろん、本体ごと別の機械を借りればよいのだが)。 そして、ブックコンピューター等は別にしても、パソコンはまだまだ重量級なの で、修理の時にHDだけ運べばよいというのは合理的だと思う。

また余談になるが、HDに不良セクタがあるとが気に入らないという人がたま にいるらしい。私の感覚としては、不良セクタがないと製品チェックが行われて いないような気がして逆に不安なのだが、最近は不良セクタが皆無になるほど技 術力が進歩しているのかもしれない。しかし、そのため生産コストが数倍〜数十 倍になるのだけは避けてもらいたい。私のように経済性最優先のユーザーもいる のだから。(*3)

ラップトップの場合は設置に必要な面積を減らす意義があるから、HD内蔵は 望ましいが、その場合でもカートリッジ方式にするなど工夫して、HDだけ自由 に交換できるようにするべきである。もちろん、デスクトップの場合も、ユーザ が簡単に交換できれば内蔵タイプのHDでも構わない。要は、HDだけグレード アップ可能であること、他のHDとコンパチビリティがあること、これが重要な のである。大抵のモデムはどのパソコンにも接続できる。しかし、HDはそうは 問屋がおろさない。これはメーカーがわざとそうしているだけで、必然ではない と思うのだが…。

*

今年は DynaBook に多いにネタを提供してもらった。既に、沖が来年には386SX を積み、HDを内蔵した AX 準拠のブックパソコンを出すと発表しているし、他 メーカーも同様の動きを見せる気配がある。個人的には、HD内蔵のブックパソ コンは買いたくない。(*4)ラップクラッシャーとは違って、ブックパソコンは本当に ラップトップで使うのである(今、朝の6時、布団の中でこの文章を書いている)。 使用中に振動を与える場合が非常に多い。それでも絶対にクラッシュしないとい うなら、HD内蔵もよいかもしれない。もう一つの難点があるとすれば、HDは バッテリーを早く消耗させるということだ。

それよりは、20M 程度の RAM DISK を内蔵したブックコンピュータが出てくる と面白いような気がする。または、国語辞典か英和辞典程度は ROM で入れておく。 FEP のための辞書だけが辞書ではないのである。

コンセプトで面白いのは、やはり SONY のパームトップだろう。流石 SONY、ネー ミングのセンスがなかなかよい。てのひらに乗るかどうか知らないが、パームマ ンと呼ぶと何となくパーマンみたいだから、やはりパームトップの方がよい。:-) ちなみに、この手の製品は既にアメリカでは発売されているそうだから、何も SONY が世界に先駆けてということではないようだ。もちろん日本語認識の技術は日本 製品に限るだろうが。(*5)

手書き入力というのは誰でも思いつくのになかなか製品にならないコンセプト である。日本語入力に手書きを採用するのは、キーボードに慣れていない非常に 多くの人に対して説得力がある。手書き入力は、一見漢字を覚えていないと書け ないような気もするが、ひらがなを手書きで入力して仮名漢字変換すればよいの だから、ど忘れした漢字もちゃんと入力できる。

そこで問題は入力速度だけである。手書きでどんなに早く入力しても、少しキー 入力に慣れた人よりはずっと遅い。Chat 慣れした人相手に手書き入力は無理であ る。むしろ、音声入力の方が速度の面では有力かもしれないから、併用できれば ありがたい。手書きと音声の速度の差は、誰かがしゃべっている内容を書き留め てみれば即座に体験できる。

    *
来年あたり技術的には出てきても不思議でない製品を3つばかり予想しておこ う。しかし、あまり当たりそうにない気がする。DAT を使った大容量の安価なス トリーマー(音楽用の DAT は既に定価で 10 万円を切っているから、せめて 10 万円台で出てきてほしい)。DynaBook の 8M RAM カード(8M も増設できないか もしれないが、本体をマイナーチェンジすれば不可能ではないと思う)。CDROM として使う端子の付いたディスクマン。(*6)

補足

(*1) いわゆるDOS/Vマシンが、最近はWindows 95がプリインストールされた状態で販売されている(DOS/Vマシンって一体…)。原理としては、マザーボード(とCPU)だけ交換すればグレードアップできるかもしれない。ところが、最近はまるごと買替えた方が安かったりして…。

(*2) 当時はハードディスクが高かったことも考慮してほしい。

(*3) 最近は、こういうことを言う人が少なくなったが、ハードディスクの品質が向上したことも確かだが、不良セクタがなくなったわけではない。ハードディスク側で自動的に代替処理をするような工夫でユーザーに見えなくなったのだと思う。

(*4) しかし最近使っているTP230Csは、ハードディスク内蔵ですねぇ(^^;)。

(*5) パームトップはどうなってしまったのでしょうか。それに対して大流行したのはザウルス。何が違ったのか。

(*6) 当時検証しなかったのですが、6年経過して…


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -95-
    1989-12-21, NIFTY-Serve FPROG mes(4)-469
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1989, 1996