混沌の廃墟にて -91-

DynaBookヒューマンインターフェース考

1989-12-01 (最終更新: 1996-07-17)

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 調子に乗って作文していると、いきなり DynaBook がハングアップしてしまっ た。MicroEMACS で仮名漢字変換の確定操作の直後、たまにハングアップすること があるのだ。この場合、まず CTRL+ALT+DEL で reboot することもできないので、 リセットするしかないのだが、DynaBook のリセットは先の細いものが手元にない と押せない。これが結構面倒だ。98Note のリセットは、その点押しやすいし、普 段はディップスイッチと同時にカバーに隠されているので、間違って押すことも なさそうである。

 DynaBook で、もう一つ気になるのは、購入直後の状態である。198,000 円とい う定価が、ぎりぎりまであらゆるコストを節減した結果だからかもしれないが、 購入直後にはバッテリーが完全に放電した状態になっているのである。

 私は2台交換してもらって、今のが3台目だから、これはまず間違いないと思わ れるが、まず、いきなり電源を入れても動かない。(*1)

 いきなり電源を入れる前に、まず梱包の箱を開けるはずなのだが、この箱を最 初開けると「ご使用の前に DynaBook ガイドをよくお読みください」と書いてあ るが、これに気づく人がどれ程いるか興味深い。また、気づいてその通りよく読 む人がどれ程いるのだろうか。とりあえず、この表示を無視して電源をいきなり 入れて動かなかった状況を想像してみよう。

 ところで、電源を入れる前に本体のフタを開ける人は多いと思うのだが、ここ にいきなり黄色の目だつ紙が入っている。「ご使用にあたってのお願い」と書い てある。最初に買った(とは言っても、一度しか買っていないのだが)時から、 この紙はあった記憶がある。ここに、何と「お買い求めいただいたとき」の注意 事項というのがあって、次のように書いてある。

>   電源が入らなかったり、DC IN ランプや Batt. ランプが赤く点滅することが
>   あります。開梱時、バッテリは放電状態となっております。最初のみ、必ず
>   右図に従ってバッテリパックを 30 分以上充電してから使用してください。
 ところが、他の人から「DynaBook が動かないのだが」と質問されたので、よく 聞いてみると、実は充電せずにいきなり電源を入れた、ということが実際にあった。 残念、この紙は読まれなかったらしい。30 分程度充電すれば、問題なく動くので ある。また、DC IN ランプが赤の点滅の状態なのはかなり目だつのだが、もっと も、目だってもそれが何のサインなのかわからないと、対処は難しい。

 現実には、このような場合理性を保つことも難しいのだが、もし DynaBook ガ イドを開いて目次を見るだけの余裕があれば、「困ったときには」という章があ って、「DynaBook が動作しない」という項目があることに気づくかもしれない。 p.176 には次のように書いてある。

>   確認 ・DC IN または Batt. ランプが点滅(赤色)していませんか。
>      ・一度動作しかけて、すぐに電源が切れていませんか。
>      ・電源スイッチを押しても、まったく動作しませんか。
>   対処 ・AC アダプタを接続し、5 分以上充電した後、再び電源を入れます。
 ここを見れば、5 分と書いてあるので、30 分待たずに済むのである。:-)

 さて、かようにくどくど書いてあるのに、なお気づかずに途方にくれる人もい るだろう(実際いたわけだ)。ただし、これは重大な被害があるわけではない。と にかくしばらく充電していれば、使えるようになるのだから、いつの間にか使え るようになってしまうのだ。

 さて、私の主張はこうである。本体のフタを開けた途端に目に入る黄色の紙は 確かに目だつのだが、読まずに捨ててしまう人もいるだろう。4倍角の表示で「5 分間時間をください」とでも書いてあれば、真面目に読む人が増えるかもしれな い。または、コストがかさむので推奨はしないが、最近は光をセンスして音楽が 鳴るようなバースデーカードも珍しくないのだから(*2)、このような小道具も活 用してもよいと思う。しかし、最も望ましいと思うのは、赤の Batt. 点滅ではな く、何らかの表示でユーザーに「少し待ってくれ」という意志表示を行うことで ある。もちろん放電状態にならないことも理想だが、長期にわたって倉庫に入れ られる可能性もあるのだから、これは無理もあるだろう。

 もう一つ注意しておきたいのは、薄くて内容もないと一部では批判的な意見す らある、この DynaBook ガイドさえ、読まない人がいるだろうということだ。 ユーザーに必ずマニュアルに目を通せさるには、何をすればよいのだろうか。(*3)

    *
 さて、DynaBook は、電源の入った状態でバッテリーパックを抜き取ると、電源 が切れてしまう。これは当然。しかし、この時ばかりはレジューム機能の有無に かかわらず、メモリの内容が失われてしまう。もちろん私はまだ電源を入れたま まバッテリーパックを抜き取ったことはない。(*4)

 これは、ユーザーインターフェースの観点から考えれば、バッテリーパックを 抜くという動作で電源 off と同じ動作をさせるべきである。そのために、予備の バッテリーが必要になるかもしれないし、コストがかさむかもしれない。このよ うに細かい改善の余地があるという事は、未来を期待させてくれるので変なよう だがわくわくする。

    *
 DynaBook と 98Note を比べると、些細な所の工夫はかなり差がある。例えば、 電源を着るときに、DynaBook は若干スイッチを押した状態にしなければならない。 その後、「ピーッ・ピ」、という音がして電源が切れる。これは、音による「電 源が確かに off になりました」という確認である。画面を見れば電源 off はわ かるではないか、と思われるかもしれないが、「音で確認」というアプローチは 評価されてよいと思う。何となく安心感があるのだ。

 ただし、人によっては、電源スイッチを瞬時触るだけで、しばらく押していよ うとしないので、電源の切り方がわからないと言って悩むようだ。実際に DynaBook が展示されている所で見ていると、面白い。また、瞬間で電源が off できないの でかえってよくないと評価する人もいるかもしれない。私は、ちょっと触っただ けでは電源が切れないことは利点だと思う。

 ちなみに、電源を入れたままフタを閉じようとすると、「ピーーッ」という音 が鳴る。音の鳴り方が、電源断の時と違うのである。これが工夫というものだ。 うっかりフタを閉じると即座に気付くのだ。

 そして、バッテリー容量が残り少なくなった時にも、音が鳴るのだが、これは どのような音か忘れてしまった。最近、バッテリーを使いきるほど長時間アウト ドアで使う機会が少ないから。昼休みは、わずか 50 分である。オフィスに戻れ ば電源を取りながら使えるのである。

    *
 DynaBook に比べると、98Note はフタを閉じる所の機構がやや凝っているよう に思う。付け根の所ではなく、フタを止める所の方だ。私は DynaBook の方が好 きである。Simple で十分機能を果たすのなら、単純さは重要だ。複雑だと、それ だけ機械的にも故障しやすい場合がよくある。DynaBook を裸で持ち歩くことがた まにあるが、自然にフタが開いたことはまだない。一つ難点を言うと、バッテリー パックのある方を下にして持ち運んでいると、うっかりバッテリーパックを外し てしまうことがある。もし、電源がこの時に入っていると、例の RAM 消滅事件に なるのだが…、そういう事件がまだ一度もないのは、フタを閉める時には必ず電 源を切ってしまうからだ。(*5)

 電源がいつでも切れるというのは、やはり強烈である。移動する時に、エディ タを一旦終了して、移動後にまた MSDOS の機動から始めるのと、編集途中でいき なり電源を切って、移動してから電源を入れたら電源を切る前の状態になってい るのとでは、どちらがよいか。この環境に慣れてしまうと、もう止められない。 誰か EWS にもレジューム機能を付けてみようという人はいないだろうか。

 ランチを喫茶店で食べて、コーヒーを飲みながらコメントを書くのである。連 れは週刊誌か新聞などを読んでいる。唐突に、「そろそろ行きますか」と言われ て、「そうですね」。で、こちらは唐突に電源を切るわけだ。エディタは起動し たままである。最近はこの快感も薄れがちなのが、何となく寂しい。

 そろそろモデムも発売されるらしいし、そうなると寒い朝に目が覚めた時に、 どうにも寒くて布団から出る気にならなくても、横になったままでとりあえずア クセスできるかもしれない。こういうのもスタイルには違いない。

    *
 DynaBook を買ってインストールした直後には、カーソルがアンダーバーの最も 細いものなので、見にくい場合がある。AUTOEXEC.BAT の最後に次の行を追加すれ ばよいのだが、これは初期設定で付加されているべきだと思う。あるいは、初期 設定のメニューで選択できればよい。
    MODE CTYP: 0,15
 さて、DynaBook は FD のトラブルが多いと聞いているが、私の場合ほとんど FD トラブルはない。一か月に一度程度の頻度で、FD が読めないことがあるが、 一旦取り出して入れ直すと読める。FD の取扱いについて、DynaBook ガイドに書 いてあることの中でも、次の2つは特に気を使っている。
・DynaBook を持ち運ぶ時には FD は取り出しておく (p.20)
・Disk ランプが点灯中には FD を取り出さない (p.22)
 いずれも、頁数は DynaBook ガイド。これを守らなければ、FD ドライブが即座 に破壊されるような妄想を持っているが、上程度のことは最近は習慣になってし まったので、苦になるものでもない。しかし、やはり理想は FD を入れたままで 持ち運びできるマシンだ。機構的に難しいのかもしれないが、これで使い勝手が 向上するに違いない。(*6)


補足

(*1) よく交換してもらえたものだ…。

(*2) そういえば、ときめきメモリアルPlayStation限定版にはびっくりしたものだ。

(*3) また、マニュアルを読んでも分からないという人もいるものだ。

(*4) DynaBookは、バッテリーが放電してからも、内部のバッテリーでごく短時間だけはメモリー内容を保持するようになっていた。こうしないと、バッテリーが切れた時にメモリの内容を壊さずに交換することができない。もしかすると、レジューム処理には結構電力を必要としたのかもしれない。

(*5) つまり、レジューム状態である。

(*6) ドライブが壊れなくても、フロッピーの中のデータが壊れる可能性はあるかもしれない。


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -91-
    1989-12-01, NIFTY-Serve FPROG mes(4)-388
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1989, 1996