混沌の廃墟にて -87-

ジャックは何を買いたいのか

1989-11-11 (最終更新: 1996-03-19)

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これを書いているうちに、久々に DynaBook(*1)をストールさせてしまってやや落 ち込んでいる。どうも仮名漢字変換の確定を行った途端にこの現象が発生する。 一度、東芝に問い合わせる必要がありそうだ。

最近、この程度のことで気分が暗くなるのでよくない。神経質になっているの かもしれない。逆に、楽しいことがあると必要以上に明るくなる。これも危険信 号かもしれない。最近面白かったと言えば、fortune (UNIX 上の運勢(?)表示プ ログラム--気の利いた「今日の一言」を表示する)で久々に「ジャックと豆の木」 を見る事ができた。前回これを見たときには数分笑いが止まらないので非常に苦 しかったが、二回目ともなると落ちついて笑える(ご存知の方もいると思うが、 ジャックと豆の木の、童話のパロディ、詳細は覚えていないが…要するに、ジャ ックが RAM だかBASIC かを買いに行くために Hamilton-Path を歩いていると、 途中で巡回セールスマンにばったり出くわした…という感じのお話)。(*2)

とりあえず最悪の状況は、どんどん FPRG が廃虚化する傾向にあることで、ち なみに 12 月には恒例のクリスマスリアルタイム会議もあることだし、おなじみ 強化月間にする予定だが、それまで会員に張り付いていてもらえるか怪しくなっ てきた。

廃虚化が進むと、CHAOS RUINS も俄然調子が出てくる。(^_^;)

    *
98Note の話の続きだが、プログラマー寄りの立場の感想もある。98N が大ヒッ トしたとして、どのようなソフトが付随して売れるのだろうか。ソフトの売れゆ きを考えるためには、まず購買層をイメージしておく必要がある。そこで、98N がどのような購買層を持っているか考えて、次の3つのケースをまず思い浮かべ た。 初心者に対しては、「ブックパソコン」というイメージ買いもあるかもしれな い。高級ワープロという意味では、無駄にならない使い方の可能性が常にある。 だが、98N の本体価格+ソフトの合計金額は、決して安くないし(しかし高すぎ ることもない?)、同じ値段でデスクトップのマシンを買った方が性能的にも有 利である場合もあると思うし、これがどのように影響するか興味深い。例えば、 98N で atok を使いたいなら、やはり一太郎を買うしかないのであるが、すると 合計価格が 30 万円台になってしまう。(*3) DynaBook で atok を使いたい場合、最低 なら私のように本体だけ買えばよいのである。

セカンドマシンとして買う場合、目的が重要である。通常の人が趣味で使うな ら、セカンドマシンの必要性があまりあるとは思えない。もっとも、新しく買う 方が機能的に優れていて、そちらをメインにするという含みでセカンドマシンを 買う場合はあると思う。例えば、初期の 98 や、LT を持っている人が、セカンド マシンとして 98N を買うケースは十分合理的だ。しかし、現在メジャーな 98 の 殆どは、処理速度の面で 98N を上回ると思う。そこで、わざわざ CPU 性能も低 く、モノクロの機種を追加購入するとすれば、まず想像できるのは持ち運びの必 要性がかなり高い人である。この条件に合致する個人ユーザーは、そう多くない と思う。例えば、会社にも家にも 98 があれば、フロッピーに save したデータ だけを持ち運ぶ方が、ずっと軽い。私は今週は毎日 DynaBook を持ち歩いている が、2.7Kg でも結構重いものである。気軽に持ち運べるには、ウオークマン程度 の重さならなければダメである。

私のように外でドキュメントを作る人もあまりいないだろう。私はまだ自分以 外に、喫茶店などでドキュメントを作成している人は見たことがない(*7)。 ただし、 新幹線の中でワープロを使っている人なら、数回見たことがあるが、あまり個人 的な用途という雰囲気ではなかった。

結局、私の想像力では、98 を持っている人が、セカンドマシンとして 98Nを買 う目的が、よくわからないのである。

では、なぜ私は DynaBook を買ったんだという説明は何度かしたので詳細は省 略するが、特に SYSOP マシンを最低限の設備投資でフォールトトレラントの構成 にしたかったことと、現在持っている PC-286U に比べると、DynaBook の方が快 適な部分が非常に多いことが+の方向に働いているのだ。私は HD も持っていな いし、拡張メモリはないし(*4)、CRT はモノクロなのである。 しかも、EPSON MS-DOS の EgBridge という不定期にハングするFEP しか持っていなかったのである(こ の FEP の辞書を引くたびに、FD をアクセスするわけだ)。

それに、DynaBook は PC-XT コンパチだから、98 のセカンドマシンとしてこれ を買うことは、かなり違った使い方もできる。98 のソフトが使えない反面、98 で使えないソフトが使えるのだ。例えば、SimCity で遊びたいという理由だけで DynaBook を買う人がいてもおかしくないでしょう。:-) (*5)

ポイントは、やはり価格設定である。東芝の人が「価格設定もスペックのうち」 とインタビューに答えていたのは正しいと思う(*6)。 少なくとも、16 ビットのデスク トップパソコンが買えない程度でなければ、初めて買う人は迷うだろう。

    *
98N は、メーカーは初年度 15 万台売ると言っている。この程度は売れそうな 気がする。さて、ソフトのマーケットはどの程度広がるだろう。DynaBook の場合 は、ソフトのマーケットが開拓された形になった。J-3100 の出荷台数の比を考え ても、かなり予想通りの成り行きだし、私のように 98 のセカンドマシンとして DynaBook を買う場合は、DynaBook では 98 のソフトが動かないから、普通は DynaBook のためにソフトを買わなければならない。私のように買わずにfreeware ですませる屈折した人間はそういないと思う。(*8)

しかし、私はどういうわけか 98N がいくら売れても、ソフトの売れゆきがちっ とも増えないような気がするのである。なぜこのような気分なのか、よくわから ない。:-)


補足

(*1) 初代だから、J3100-SS001というモデルである。CPUは8086。定価が20万円を割ったことと、初のブックパソコンということで、大変なセンセーションを巻き起こした。

(*2) 「Hamilton-Path」や「巡回セールスマン」は、情報科学の教科書に書かれている有名な用語。内容は分からなくてもその手の人なら名前位は知っている。

(*3) わざと書いていないことを読み取っていただきたい。実際は「既に98を持っているから」という理由で98Noteを買う人が多いのだ。しかも、ソフトは買わないのである。今あるのをコピーすれば動く。「ソフトウェア買わず買い込む98ノート」という、ひねりすぎて本家が「古池や…」だと分からない川柳があるが、奥が深過ぎたか。

(*4) 拡張メモリがないというのは、640KBしかメモリがないということである。

(*5) 当時はSimCityはPC/AT用のソフトはあっても98用はなかった。

(*6) 言ったのはこの時だけ。この後、どんどん高価格ブックパソコンを販売し、自ら「DynaBookは(価格という)スペックにおいて劣る」ことを証明することになる。口は災いのもと。

(*7) 今も喫茶店等でワープロする人は見かけないな…なぜだろう。

(*8) フリーソフトに走る真の理由は「お金がない」に尽きる。


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -87-
    1989-11-11, NIFTY-Serve FPROG mes(4)-335
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1989, 1996