混沌の廃墟にて -86-

いずれか1台のシステム

1989-11-10 (最終更新: 1996-03-24)

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 日経パソコンの読者欄に、PC-286L を事務管理用に購入していたので PC-286LE を新規購入したら、カーソルキーの配列が違っているために使えないという投稿 があった。この気持ちはよくわかる。私が頻繁に使うキーボードは、sun3、PC-286U、 DynaBook だから、初期状態のキー配列はどれも微妙に違うのだ。abc はさすがに 違わないが、記号、仮名漢字変換関係のキーはどうしようもない。慣れるしかな い。

 ただし、細かいことを言えば、私はすべてのキーボードのキー配置を、自分で 変更したものを使っている。物理的なキーの数や、仮名漢字変換に必要なキー操 作が一致していれば、ある程度は同一にできるわけである。特に、DynaBook のキー 最上段の記号配列は ASCII の配列で、JIS とは微妙に違う。

        !@#$%^&*()  DynaBook
        !"#$%&'()   PC-286U
私はなぜか ASCII の方に慣れているため、286U のキー配置を DynaBook 流に変 更して使っている。
    *
 PC-9801N は11月末出荷予定だ。既にスペック比較結果を書いているので今回は スペックより前人気に関して書きたいが、正直言ってほっとしている。定価15万 円程度で 98 互換かつ IBM-PC コンパチモードがあったらどうしようと内心ヒヤ ヒヤしていたのだ。出荷後1年間の販売目標台数が15万台である。目標台数で思 いだしたが、今年の目標10万台の FM-TOWNS はどれ位使われているのだろうか。 CD-ROM のソフトは何本程度売れたのだろうか。

 一つ確かだと思うのは、PC-9801N が出荷されて、まず売れなくなりそうなのが V30 登載の 98LV シリーズ。FDD が2台使えるということを除けば、機能的にも 98N の方が上回り、さらに価格が 10 万円の差となると買う人は激減するかもし れない。286 を登載したモデルや、HD が内蔵されたモデルは購買層がやや違うと 思われるが。

 前人気ということで、やはり NEC フォーラムだろうと思って見学しに行ったの が間違い。一言余計なことを書いてしまった。この成り行きは、FNEC のラップト ップ会議を参照してほしい。特に、意識調査の意味合いを込めて、「セカンドマ シンとして 98N を買う場合、最初の 98 で使っていた MSDOS はマシン単位の契 約の筈だから、新規に買わずにそれを 98N で使うのは違法コピーではないか?」 という含みの質問を書いたのでエラいことになった。

 この質問に、一つ意図的に書きすぎたことがある。「違法コピー」という言葉 である。著作権法には、個人的な利用に対する複製を認めるという例外事項があ る。だから、上のようなケースがただちに「違法」かどうか、私としては疑わし い。雑誌などの記事を見ると、「違法コピー」と使い分けて、「不正コピー」と 書いてあるものが多い。CPU 単位の契約を交わしておきながら複数マシンで同時 に使うのは、違法でなくても契約違反なら不正と言えるという論法にはなるだろ う。(*1)

 The BASIC などの過激な雑誌では、「違法コピーは悪くない」という意見も投 稿されているので、どの程度の反応があるのか非常に興味があった。最も意外だ ったのは、CPU 単位の契約の根拠を質問されたことであった。同時に使わなけれ ば、契約上も問題ないのではないか、と言うのである。しかも、NEC、MICROSOFT 等に再度確認したと言うので、これは面白いと思った。

乙は、本契約にもとづき実施承諾された各プログラムを、機械読み取り可能 な形で、いずれか一台のコンピュータ・システム(以下、「システム」とい います。)で使用することができます。他のシステムで承諾プログラムを使 用するときは、別途使用権を取得することが必要です。
(NEC MS-DOS v3.1 ソフトウェア使用権許諾契約書)

製品の使用者(以下「乙」といいます)は本製品をいずれか1台のコンピュー タ・システム(以下「システム」といいます)で使用することができます。
(MICROSOFT C Compiler)

 これらの文面で言う「いずれか1台のシステム」を、登録した1台のシステム ではなく、任意の1台のシステムと解釈したようである。ただし、上の文例では、 NEC MS-DOS の「他のシステムで…」という文章を考えると、やはり登録した1台 のシステムと解釈するのが妥当だと思う。「他のシステムで同時に…」とは書い てないのである。

 しかし、NEC に問い合わせて「使ってよい」という返事があったのなら、やは り同時でなければ使ってよいのだろう。こうなると私には訳がわからん。Borland の Turbo シリーズで、わざわざ同時に使わなければ…というアピールをしている のは一体何だったのだろうか。(*2)

 ちなみに、EPSON の MSDOS は、はっきりと「裏面において指定したシステム」 と書いてあるので、これはわかりやすい。しかし、NEC の MSDOS なら同時でなけ れば複数マシンで使ってよいとなると、喜んでいるわけにもいかない。


補足

(*1) 個人的には「無法コピー」という表現が好きである。

(*2) as a book.. というので有名だった。最近は、同時に1台ならよい、という感じのものが多いが、同時に複数のマシンにインストールするのは問題かもしれない。


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -86-
    1989-11-10, NIFTY-Serve FPROG mes(4)-333
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1989, 1996