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この中で驚いたのが、NIF(*2)の判断では、第18条7.(N.I.F.が会員として不適 当と判断した場合)(*3)に相当するためID取り消しも有りうるとしていることだ。 18-7 の実例は今まで見たことがなかった。これは判断基準の参考になるという意 味で、SYSOP としてはありがたい。
なお、この発言で、発言者がオンライン・コミュニケーションを「不自由なコ ミュニケーション手段」と評している箇所があるのだが、これは私も同感である。 ただし、「自由」の意味を、「思ったことをそのまま表現する」という意味に取 った場合である。公共の場での行動というのは、他者に迷惑にならないことが大 前提になると思う。自分の感じたことを何でも書いてよいかというと、そうでは なく、まずそこが対象発言を掲示するのに適した場所かどうか十分検討するべき だと思う。私はこの吟味で発言が没になることが最近多く、つくづくネットワー キングは不自由だと思うのである。
しかし、公共の前の行動が不自由になるのは、むしろ当然であって、それでい いと思う。暗黙または明示的なルールというのは社会の中いたる所に存在し、そ れらに従えないのなら、それなりの覚悟が必要だろう。
「他者に迷惑」という基準は、非常に曖昧である。例えば、自分と違った意見 を見るのは不愉快だという人もいるかもしれない。このような人が読んでいるボー ドで発言することは、この人にとっては迷惑になると解釈できるかもしれない。 こうなると、自己の感性を信じるのみ、である。覚悟さえあれば、出来ることも 多いはずだ。
*ところで、本論はここからである。この発言の中で、宛先を間違って電子メー ルを送ってしまい、何とかならないかという主旨の部分がある。要するに、間違 って送ったメールを削除したいのだ。
この発言全体の雰囲気にのまれてうっかり見逃してしまう所だったが、これに 対するNIFの回答まで引用されている。まとめると次のようになると思う。 「電子メールは一般の郵便と同様、一度ポストに入れたら出すことができない。 従って、削除できない。」
これは、あまりに目茶苦茶な議論ではないか。
まず、郵便物は、一旦ポストに入れても取り出すことができる。こんな事は常 識だと思っていたのだが…。郵便番号簿(ぽすたるガイド)から引用させていた だく。
郵便物をポストに投函してから、あて名のまちがいや切手のはり忘れ、料金 不足などに気がついたら、できるだけ早く、郵便物を出した郵便局やポスト の取り集めを受け持つ郵便局へお申し出ください。ただし、こうした請求に は一定の場合、手数料が必要となりますのでご了承ください。もし、「一般の郵便と同様…従って」という議論の流れとすれば、結論は「削 除できる」で終結しなければならない。これだけでNIFの主張が無意味になっ てしまう。
(p.153)
しかし、これは全く本質的ではない。わざわざ電子メールの特長を殺して悪い システムインターフェースを設計する必要が、はたしてあるのか。出したメール の宛名の間違いに気がつけば、(その時点で相手が読んでいない場合)削除でき る機能は非常に効果的ではないのか。一般の郵便と同様にしたいのなら、手数料 を取っても構わないと思う。もちろんメールを出す前に宛先を確認するのが手順 としては必須だとは思う。つまり、このようなことは、厳重に注意して処理すべ きことがらだ。
しかし、実際私には何度か間違いメールが届いているし、私が間違いメールを 出したことがたったの1度だけある。この時にはすぐにお佗びのメールを出した が、その返事はなかった。
早い話が、人間は間違えるものだ。そこで、間違いに対する処理を用意してお くことが、ヒューマン・インターフェースの意味で重要だ。これが主旨。
*ところで、「一般の郵便と同様…従って」というのは納得できないが、一つ気 になっていることは、分散処理システムで出したメールのキャンセルは、そう簡 単なものではないということだ。これは FPRG の会員の皆さんには直感的に理解 してもらえると思うので、あえて説明しない。
だから私としては、もし「システム上の制約により出したメールは削除できな い仕様になっています」と説明されていれば、ひとまず論理としては納得したに 違いない。その分、他の人が納得できないかもしれない。また、システムにこの ような制約があること自体、仕様設計レベルの欠陥だという指摘もあるかもしれ ない。
とにかく、出したメールの削除機能程度は実現して欲しいと思う。私が某所で 使っている電子メールシステムでは、仕様設計段階の必須要求項目として当然こ れが入っていたし、まれではあるが、キャンセル機能を使ったこともある。文字 化けで宛先 ID が変わってしまうかもしれない、電話回線経由のシステムでは、 なおさら必要である。
(*2) 現在のニフティ株式会社は、この当時はN.I.F.株式会社だった。
(*3) 会員規約はその後変更されている。この条文の内容は変わっていない。
COMPUTING AT CHAOS RUINS -84- 1989-10-27, NIFTY-Serve FPROG mes(4)-290 FPROG SYSOP / SDI00344 フィンローダ (C) Phinloda 1989, 1996