混沌の廃墟にて -80-

感想ウェア

1989-09-17 (最終更新: 1996-03-15)

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PDS について、久々に「パソコン通信」という本からの引用(*1)。'89 10 月号、 p.129 右段より。
むろん、PDSをダウンロードしたときに一言感想をアップするボードがた いてい用意されているし、またそれがひとつのマナーだともされている。 しかし、実際にはあまりそこへの書き込みは活発であるとはいえない。だか らといって、PDSの作成をやめたりそのコーナーを閉鎖したという話は聞 いたことがない。PDSの提供者によっては、PDSに対する評価は、ボー ドへのメッセージがなくても、ダウンロード数が示すという考えだろう。
ここでのPDSの意味が曖昧だが、おそらくフリーソフトという意味だと想像して 話を進める。私の経験では、少なくともいくつかのネットワークでフリーソフト の感想が少ないということが問題になったのを目撃しているので、実際上に書い てある程は楽観的ではないような気がする。

ここで疑問なのは、少なくとも無料で提供するソフトに対して感想を要求する 程度なら特に責められるとも思えないのに、「このソフトを使った方は感想を報 告してください」と書いたソフトが、少なくないかもしれないが、それほど多く もないことである。いわば「感想ウェア」。フリーソフトに対して必ず感想を書 くのが義務的になるというのは、私としてはあまり好きではない。あくまでも、 自発的というのが個人的には好きだ。もちろん、これはフリーソフト一般の話で、 あるソフトが「感想ウエア」であることに何ら異論はない。「感想ウエア」とし て宣言されていないフリーソフトに感想が付かないことについて、言っているの である。

となると、フリーソフトの感想がないというのは、もしかすれば感想を書かせ ないソフトを作った人にも要素があるかもしれない。特に、否定的な感想はなか なか書きにくいと思う。「つまらないソフトですね」と書ける人は正直かもしれ ないが、それを書くのはどうかという感じもする。私が仮にソフトの作成者側の 立場だったら、「つまらないソフト」という感想でも、どこがつまらないか指摘 していただければ多いに参考になるので別にかまわない。つまらない箇所の指摘 がないにしても、つまらないと感じた人がいるというのを知ることができるのは 収穫である。

しかし、心理的な効果を考えると「つまらない」という感想で作者を落ち込ま せるというのはやはり問題があるような気もするので、なかなか書けないのであ る。

と書いた途端に「つまらない」というメールがドカドカと送られてきたらどう しよう。

    *
今日のテレビ番組「空と海をこえて」は、なかなかよくまとまっていたと思う。 私はほとんどテレビは見ないのだが、BFREE(*2)でも紹介されていた程だから、これ は見ておかないと話題にとりのこされる、と思って見ることにしたのだ。特に専 門用語がさりげなく(?)解説されている所が工夫したという感じ。

特に関心したのは、chat に割り込んでいくシーンである。最初に入った部屋で は help のメッセージが無視され、次に入った部屋でも最初は「マナーを知らな い奴だ」というような反応である。何に関心したかというと、私の知っている chat というのは、このようにかなり閉鎖的であったから、よく雰囲気が出ているなあ という所なのだ。

私はリアルタイム会議でも、極力「さん」付けで呼びかけている。普通、リア ルタイム会議や CB、chat では、初対面の人を除いて「さん」は付けずにハンド ルを呼び捨てにすることが多い。これは親近感があるし、公平ではあるという 意味でなかなかよい。

「さん」を付ける理由は、呼び捨てで会話している風景を傍観してみるとわか ると思うのだが、そこに初めて割り込むのは非常に勇気がいるのではないかと想 像しているからである。通常の世界では、呼び捨ての間柄というのは相当親しい 仲間の間ということになるから、非常に親密な同士が会話しているような雰囲気 になりがちだと思う。ここに入ってゆくのはかなり危険のような気がするのでは ないか?

もっとも、chat 慣れした方なら、別段違和感もないかもしれないし、逆に「さ ん」付けで呼ばれるのは相当違和感があるようだ。私は数名の人から「さん」は 付けないで欲しいと言われたこともある。感じとしては、私より年下の人に言わ れることの方が多い。

SUBSYSOP を呼び捨てにすることがあるというのは別の問題である。一応、 SUBSYSOP というのは運営側のスタッフだから、電話応対の時に自分の会社の人の 名前は上司でも呼び捨てにする感じで、そうしているのだ。ただし、実際は呼び 捨てない場合の方が多いかもしれない。

年齢というのは、オンライン・コミュニケーション(*3)が身分・年齢を越えてコミ ュニケーションできるという建て前に反して、結構気にする人は気にするらしい。 私はまるで気にしない方で、年上でも年下でも「さん」に統一している。たまに、 年上の人に普通の調子で書いていて、後で年齢を知って失礼をしたというコメン トをする人がいるが、失礼とか失礼でないというのはもう少し奥が深いような気 がする。

私は相手が年下でも年上でも、性別がどうあれ、どこの人でも、地球人でも宇 宙人でも人工知能でも、関係のないようなコメントを書きたいものだと思う。


補足

(*1) その後、パソコン通信GAZAPEEと改名。1996年3月号、通巻84号をもって終了。この後、「インターネットサーファー」という名前で新創刊の予定となっている。

(*2) BFREEは掲示板にあったフリートークのメニューで、現在廃止されている。

(*3) いわゆる「パソコン通信」に該当する概念を表現する言葉として、個人的には、当時この言葉をよく使っていた。「パソコン」「通信」というのは、これからやってみようかと思った初心者をびびらせる目的としては最高の言葉だ。


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -80-
    1989-09-17, NIFTY-Serve FPROG mes(4)-122
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1989, 1996