混沌の廃墟にて -60-

店員のいない食堂

1989-06-21 (最終更新: 1996-05-02)

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NETWORKER という本を買った。一応季刊で税金込み 1600 円 である。話が関係 ないが、宇野総理大臣は消費税の見直しを早急に検討するなどと言っているので、 仮に消費税が廃止になったらこの本も書店に 1553 円で並ぶのであろう。:-) (*1)

春にASCIIという雑誌を買うと、おまけのフロッピーが付いてきたのだが、今 NETWORKER を買うと同様におまけのフロッピー(もちろんプログラムが入ってい るのだ)が付いてくる。これが何と5インチ2HD で私のシステム構成ではまるで読 めない。ようやく今年は 3.5インチが主流になろうという時に、あえて新しさよ りも古いものを選んだ所に雑誌全体像が反映されているような気がした。これに ついては後述する。

ところで、3.5インチユーザーは見捨てられたかというと、実は 1000 円出せば 3.5インチのフロッピーを送ってもらえる。1000 円ですよ、1000 円! これがほ ぼ実費と書いてあるが、10 枚 2000 円、いや少なくとも 3000 円出せば買える時 代にフロッピー 1 枚が 1000 円とは…人件費だろうか(*2)。封筒や郵送費もかか るだろうけど…それに、本体価格も疑問はないか、月刊の頃は 500 〜 600 円だ った。私は全部持っている(*3)。それが季刊になるといきなり 1600 円になるの だから、貧乏の私としては、ようやく次から買わない(買えない)決心が付いた かな、という所だが、ここで先輩がボソっと言った。

「サービスディスクが 1000 円するんじゃないか?」

な〜るほど、それで全部つじつまが合うのか、よく出来ているなぁと今度は本 気で感心しているのだった。

    *
実費 1000 円ということは、利益を見込んでいないと解釈してよいのだろうか。 もしそうなら、NIFTY-Serve には NETWORKER フォーラムというのがあるのだから、 データライブラリにディスクサービスのプログラムを登録することは当然検討し ただろうから、なぜそれを断念したのか理由を知りたい。

他の雑誌なら「思い付かなかった」というケースもあろうが、NETWORKER フォ ーラム(GO FASCII)においてはその理論は成り立たない。オンライン・コミュニ ケーション(*4)をテーマとする雑誌がオンライン・コミュニケーションを活用で きずに記事が書けるわけがないし、記事を読んでみると、いわゆる「パソコン通 信」など触ったこともない人達が記事を書いているとは思えない。従って、飛躍 が論理して、データライブラリに無料ソフトを登録するという方法を思い付かな いわけがない。こんなの基礎の基礎だから。

つまり、人件費は最初に登録する手間だけですむ。発送の手間がかからないの である。これは結構大きなファクターである。また、欲しいと思った人が即座に プログラムを入手できるのもメリットである。雑誌とのマルチメディアを実験で きる環境にあって、このような方法が取れなかったことが、私としては非常に残 念である。

    *
NETWORKER、1989 夏号、p.89 より部分的に引用
>     しかし今のカメラはとんでもない、シャッター押すだけであとはカメラ任
>   せである。固定焦点方式の*****カメラあり、…
伏字にした所は、私はこの言葉を差別用語だと認識しているから、あえてそう したのである。(*5)

白状すると、以前はこの言葉に差別的な背景があるということを知らなかった。 これを知ったのは、オンライン・コミュニケーションを始めてからである。もっ と詳しいことを書くと、あるネットワークに GoodEarth という sig があって、(*6) そこにあった“人種差別について議論するノート”を見てから、どんなに重大な ことか知ったのだ。

私見だが、もしこの言葉の背景を知りながらこのような記事を掲載した雑誌を 出荷したのであれば、とんでもないことだと思う。逆に、昔私がそうだったよう に差別用語だと知らないで使ったのだとしたらどうだろう。先の文章で「あるネ ットワーク」と書いたが、そこには今(89/6/21)でも(今日アクセスして確認し てみた)この表現に関する議論のノートが残っている。

偶然この記事を書いた人がこのネットワークを知らなかったのかもしれない (マイナーなネットワークなのだろうか?)。しかし、記事というのは決して書 きっぱなしではない。例えば、校正をする人は気がつかなかったのだろうか? 記事を書いた人がもし直接校正に出すのではなく途中に内容をチェックする人を 経由するのだとしたら、その段階で気がつかなかったのだろうか。実際本になっ ている所をみると、気がつかなかったのか、あるいは知っていた上で出荷したの だろう。

ここで私が強調したいのは、私がこの言葉が差別用語であるという知識を(*7)、 あるネットワークからオンライン・コミュニケーションという手段で手に入れる ことができたという点である。明らかにオンライン・コミュニケーションは自己 学習には一つの有効な手段になると思う。

そういう意味で、NETWORKER という先駆的な分野に関する雑誌を扱う方々には、 ネットワークを私程度以上に体験した上で本を作って欲しい(これは私の個人的 な希望である)。しかし、NETWORKER という本はもはや先駆的ではないのかもし れない。これについて後述すると書いたことを書こう。

数年前は、オンライン・コミュニケーションはすなわち「パソコン通信」だっ た。しかも、メインは「通信」よりずっと「パソコン」に片寄っていた。コミュ ニケーションの心掛けも重要だが、どのような機種を選んで、どうやって接続し て、どんなプログラムを使ってアクセスするか、という点も同じくらい重要だっ た。

だが、今は、このような状況が変わってきたと思う。パソコンを知らない人が 通信機能の付いたワープロを買ってきてかなり簡単にネットワークにアクセスで きる環境が出来てきた。その意味で NETWORKER 誌に通信ワープロの特集があった ことは高く評価したい。

しかし、本当に今重要なのは「パソコン」をどうするということではなく「コ ミュニケーション」をどう成立させるか、という視点ではないかと思う。例えば 最低限のコミュニケーションマナーについての記事がある(p.37)。内容につい て深入りしないが、私はこれと同じ程度の内容を数年前に見た覚えがある。

コミュニケーションマナーというものが本当にあるのか、というと難しい。例 えば私でも申し訳ないことに、発言して放置したまま、というフォーラムがいく つかある。あえて言えば FBMAN と FMCN はそうである。次のコメントを連鎖させ ようという気力があるが、時間と能力がない。FSCI は今文面を作っている。FC は…。

そんな私が書くと説得力がないのを承知で書かせていただけるなら、FASCII を 少なくとも1日おきでアクセスしている私にとっては、NETWORKER にコミュニケー ションマナーについて何か書かれていたとしても、信用できないのである。これ は痛烈な自己批判であるから、私自身この場を借りて不愉快な気分を与えた皆様 へおわびさせてください。(*8)


補足

(*1) で、「早急な消費税の見直し」は、どこに行ったんだっけ?

(*2) もちろん人件費である。それ以外に考えられない。ところで、人件費とすれば、これは確かにペイしない金額になり得る。

(*3) 既に全部捨てた。置き場所がないのである。他意はない。

(*4) online communicationは私の造語。いわゆる「パソコン通信」と同義。

(*5) 元は「バカチョン」という表現が入っている。これについてはfj等でさんざん議論があったし、今もやっているかもしれない。

今回はあえて深く考えないが、議論の内容としては、次の二つの事実が重要だと思う。

 ・歴史的事実として、「バカでもチョンでも」という表現は、元は特定の人を指して差別するような意図ではなく、通常の日本語として存在した。特に「チョン」という表現は、バカと同義の言葉であって、それ以外の意味はない。例えば特定の人を蔑視するような表現ではなかった。

 ・この表現に対して、(一部の?)韓国人が強い不快感を表明している。なぜなら、「チョン」は朝鮮人の蔑称として使われることがあるからである。

 すなわち、ある人達は「バカチョン」という表現を「馬鹿でも朝鮮人でも」という表現であると解釈して差別語だと判断しているが、またある人達は、この表現は「バカでもアホでも」といった感じの慣用句として昔からあるもので、朝鮮人差別とは無関係であると主張している(従って、バカチョンという表現を自粛すること自体が言葉狩りだと主張して反発している)。

(*6) アスキーネット。ここで問題にしているのは、当時アスキーネットでこの言葉に関する議論があったにもかかわらず、最もメジャーなネット雑誌であるはずのNETWORKERがその言葉を使っているということに対する解釈である。

(*7) しかしこの知識は誤りだったのかもしれない。このあたりは原文を修正すると意味不明になるので原文のままにしてある。

(*8) FASCIIのスタッフと猛烈なバトルになった。根本的な原因としては、FASCIIがフォーラムを放置してしまった所にある。さらに「今まで放置していてすみません、これから何とかします」と書いて、またまた放置したのである。それで私がキレた。向こうの回答にも誠意は感じられなかったので、そこまで会員を見下す所にいる気はいないと放言して退会したのである。私の場合、もう行かないと書いたら本当に行かない。ただし、FASCIIはその後SYSOPが交代した後に、スタッフが変わったら大丈夫かと思って再入会している。現在はSASCIIとなっているはず。


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -60-
    1989-06-21, NIFTY-Serve FPROG mes(?)-288
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1989, 1996