混沌の廃墟にて -23-

XMODEM vs MNP (1)

1988-11-25 (最終更新: 1996-06-15)

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先日、回転寿司を食べに行った。ねぎとろと、納豆巻を注文した(あえて反論 を待つ!?)。一応、ちゃんとエコーバックも帰ってきたにもかかわらず注文の品 はこなかった。ここで普段ならかなりいじけるのだが、その日はNIFTY-Serveに 接続中に突然ハングアップしたことで頭が疲れていたので、「電話回線だって化 けるんだ、回転寿司も文字化けしていいじゃないか」などと訳のわからないこと をつぶやいて4皿だけ食べて出てきた。4勝3敗というのはまれにみる悪成績だった。 あと1皿の注文が思い出せないので悩んでいるのだが…。

さて、情報が正しく伝達されることが重要である。次に、その情報が正しく処 理されることが必要で、これがなければ正しく伝達された意味がない。回転寿司 で勉強してしまった。

    *
そろそろ2代目 Voice Of Programmers(*1)が打ち止めになりそうなので、発言 のダウンロード(*2)を始めた。手元のモデムはMD2400Fという新兵器になってい る。FSCIをこそこそROMしてみると、好評のようだったので(?)悩んだ末に買った のだ。SYSOPの業務の大部分が大量のテキストデータの転送であり(*3)、しかもデ ータライブラリに登録した時点で文字化けしていると、それを参照する全員にと ばっちりが行くわけで、すなわち文字化けなどは許されない立場であるから、普 段はエコーバックと比較して一致しないと再送するという手段にたよっているが、 MNP は文字化けがないから接続時間の短縮になるだろうと甘い見通しを立ててみ たのである。(*4)

甘い見通しというのは、MNP といってもモデム間がエラーフリーになるだけで、 上のレイヤーでエラーが発生するのは防げないというのが一つ目の解釈(*5)。も う一つは回線速度が上がると結局快適になった分いろんな情報を集めることにな るので、かえって電話代がかさむという説である。

とりあえず、100発言ごとに VOP(2) をダウンロードしてみた。

001-100 88/11/23    12:22:00 - 12:33:00     145172 bytes    (1760 bps)
100-200 88/11/23    12:35:40 - 12:47:15     154468 bytes    (1681 bps)
201-300 88/11/23    12:50:10 - 13:04:10     186485 bytes    (1776 bps)
301-400 88/11/24    23:04:00 - 23:17:15     175409 bytes    (1765 bps)

------- 88/11/25    09:18:10 - 09:30:00     140195 bytes    (1580 bps)
いずれも、2400bps、MNP class 5の場合の実測値。誤差はある。特に、ダウン ロード前後の待ち時間があるので、実際は若干速い値だと思う。しかし、class 5 は最大 4800bps と聞いていたのだが、どこで間違ってこうなってしまうのだろ う? (*6)

単位時間あたりの所用時間を計算しようと思ったら、電卓がない。暗算する気 がしなかったので、会社に置いたままの電卓を持って帰ってから計算することに した。上の結果がそうである。

次に、データライブラリにそのままアップロードするのだが(*7)、ここで一つ 気になっていた実験をすることにした。MNP というのはパケット単位でエラーが 発生したら再送することにより、エラーフリーの環境を実現しているはずである。 また、XMODEM のプロトコルも同じようなことをやるはずである。となると、MNP で XMODEM を使った時にはパケットのずれによる衝突がタイムロスになる可能性 が高い。少なくとも XMODEM でエラーフリーになるはずのデータを MNP で送るの だから冗長な分だけ損をするはずだ。

    XMODEM - upload

001-100 88/11/23    14:09:00 - 14:24:00     145172 bytes    (1290bps)
                                (not MNP, 2400 bps / 5 retries)
101-200 88/11/23    14:56:00 - 15:23:00     154468 bytes    (763 bps)
                                (MNP class 5)
これは想像通りの結果と言えよう。ただし、XMODEM が 5リトライで済んでいる のは、かなり回線の状態が良かったと考えて欲しい。私の経験では 145KBの情報 のやりとりで 5 回しか文字化けがなかったと言うのは、NIFTY-Serveでは滅多に ないことである。

一つ心配なのは、この事実があらかじめ想像できる種類のものであるはずなの に、NIFTY-Serveからは何もアナウンスがないということである。上の実験は回数 だけを考えてみても絶対的なものではないが、XMODEM を使う時は MNP モードで 接続しない方がこの程度の速度差があるとなると、「XMODEMを使う時には非MNPモ ードで接続することをおすすめします」位のアナウンスが欲しい。しかし、私の 知るかぎり NIF の判断は「MNP で XMODEM による転送をした時のパフォーマンス はほとんど変化しない」というものである。「ほとんど変化しない」の根拠とな った実測データを機会があれば要求してみたい。

    *
このことは、特にパソコンに詳しくない会員にとって重要である。モデムの宣 伝文句を見ても、「2400 bps MNP class 5 は最大 4800bps の実効速度で接続で きます」ということしか書いていない。素人なら非 MNP で接続した方が MNP class 5 接続より早いという発想はまず思い浮かばないだろう。店でモデムを買 うときの風景を想像してみよう。

客「この、クラス4のモデムと、クラス5のモデムは、どこが違うのかね?」
店「クラス5のモデムは、データを圧縮して転送するので、実質倍程度のスピー ドでデータを送受信できるってわけでさぁ、旦那」
とでも言われた人なら、MNP をわざと解除して接続した方が早いなんて発想は 永遠に思い付かないというシナリオである。もっともこのレベルの知識のネット ワーカーが、自力で非 MNP 接続することができるかどうか、かなり疑問の余地が あるのだが…。

とにかく、ここで店員が「しかし、場合によってはクラス5の方が遅いことも ありますぜ、旦那」とは決して言わない。なぜなら、普通クラス4のモデムより はクラス5のモデムの方が高価なので、店としてはそちらを売りたいからである。 せっかくクラス5を買わせようとしているのに、マイナスイメージになることを 言うワケがない。:-) それに、クラス5の方が普通の使い方なら高速であるのは 事実なのだ。

ならば、このような付加情報は、モデムの取り扱い説明書に書いておくか、ま たはネットのオンラインマニュアルに書いておくのがよいと思う。よほど暇でア クセス時間をなんとか増やさないとやばいネットなら別だが、busy でなかなか接 続できないネットの場合、ユーザー一人あたりの接続時間短縮は、累計ユーザー 数が増加することも考えられる。何々ネットはいつも話中だからアクセスしない …という発想の人もいるのではないか(本当にいるんですが…)。

(つづく)


補足

(*1) VOPはNIFTY-Serveプログラマーズフォーラムのメイン会議室で、当時はこの 名称だった。現在はVoice of Programmers' forumとなっている。会議室遷移は NIFTY-ServeのFPROGの年表を参考に。

(*2) 当時はmreadというコマンドがなかった。

(*3) 当時のNIFTY-Serveの規模を想像して欲しい。SYSOPはSUBSYSOP、ボードリー ダーの業務を兼任するような感じの所も多かった。最近は全く表に出てこない SYSOPも珍しくない。

(*4) MNPが広まり始めた頃の話なのである。

(*5) これは一般論。この時は、多分本当にそれが頻発するとは思っていなかった。

(*6) 後で判明したのだが、NIFTY-Serveのセンターは、プロトコルとしてMNP5で 接続できるにもかかわらず、センターホストとセンターモデムを2400bpsで接続し ていたのだ。だから、2400bps以上が出るわけないのである。しかも、最初の頃は この状態で「NIFTY-ServeはMNPクラス5」と宣伝していた。実効4800bpsでアクセ スできると勘違いして入会しても不思議はない。その後、広告からこの表現は外 されたのだが、MNPクラス5でつないでも2400bpsしか出ないという説明は公表され なかったため、多くのユーザーが「2400bpsしか出ないのは、パソコンの設定がお かしいのか、それともモデムが故障しているのではないか」と悩むことになった。

(*7) 原則として、そのままではなく編集してから転送している。


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -23-
    1988-11-25, NIFTY-Serve FPROG mes(?)-465
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1988, 1996