Lemon People '94ー95

1994年12月号

月面電波妄想 発行:BODY TALK B5版/44P

 森永みるくさんとぷるこれもんさんによるユニット、「BODY TALK」。数多くのセーラームーン女性系サークルの中でもその人気と実力はピカイチです。
 今回の本はギャグ中心のバラエティ本。<レイ・亜美>を中心として、チャーミングかつおかしい世界が広がってゆきます。特に巻頭の「妄想でGO!」での某国民的まんがのパロディが抱腹絶倒。これだけで十分買いだ!
 そして、特筆しておきたいのは、彼女たちの過激なまでの真面目さです。フリートークを読むと、その同人誌に対する真摯な態度と、愛情のパワーの炸裂が、若さ全開といった感じで伝わってきます。ともすれば、易きに流れがちな、同人誌活動ですが、こういうパッションをこれからも大切にしてほしいと思います。

FANTASIA 発行/HELLO WORLD B5版/96P

 セーラームーンブーム初期から女性系サークルの牽引車的存在として活躍してきたむっちりむうにぃさん久々のセーラームーン個人誌。今回も鋭いギャグが好調です。
 1P〜2Pのたたみかけるようなショートストーリーでのギャグの連射は、スピード感あふれるもので、作者のセンスと才能を感じさせてくれます。
 基本的には、オールキャラ本なのですがサフィール&エスメロードの掛け合い漫才が一番多いかな。後、評者が前々からお気に入りの性格の超悪い亜美ちゃんも健在。
 巻末のシリアス「月の報復」も、転生の意味、戦士としての生を、鮮やかに描いた佳品。次回作の本編への期待を沸かせてくれます。


1995年1月号

MOON PROJECT 発行/どりぃむ・とりっぷ B5版/40P

 その繊細な絵柄で創作少女系では古くから人気の高い神谷香緒理さん。一時オーストラリア留学で同人誌活動をお休みしたりもしていましたが、帰国後は、オリジナルだけでなくアニパロにも活動を広げています。このセーラームーン個人誌も彼女らしいかわいらしさにあふれています。
 まんがはシリアス2本と、ショートギャグ。「時の記憶」は、戦いの合間のささやかな休息の中での女の子たちの様々な想いを細やかに描いた佳品。「未来が私を待っている。」は夏休み前のワクワクした気持ちをみずみずしく描写しています。
 ギャグの「TVチャンピオン」ネタのも笑わせてくれます。
 ゲストに篝瀬里亜、月夜野亭うさ吉、小田和明、佐藤圭児。


あの木かげで君に会いたい 発行/スイスイ・フロート B5版/20P

 創作少年系ではもはやベテランと言っても過言ではない相原ひでおさん。にもかかわらず、常にチャレンジ精神旺盛で、最近はマッキントッシュによるまんが表現にも凝っています。
 まんがは表題作一本。自称<木の精>の葉子さんと、彼女に一目ぼれしてしまった良平君のラブストーリーです。友達になり、デートして、恋人になりたい。文字にしてしまうとあまりに当たり前のことですが、心の高まりとか、あせりであるとかを生き生きと映し描いています。人が人を好きになるということは、他人からは滑稽にすら見えることもありますが、そんなマジな恋もしてみたい、そんな気にさせてきれる本でもあります。


1995年2月号

DELICATE PLANET 発行/REVERSE B5版/40P

 昨年来、女性系セーラームーンサークルの中で、特に元気いっぱいの活動をしてきたREVERSEの高槻理歩さん個人誌。
 今回は珍しくHあり。彼女曰く「自称(笑)15禁本」だそうですが、これくらいで気にすることは、全然ないと思います。
 カップリングは高槻さんお得意のまもる×うさぎ。タイトル作でうさぎの初体験を女性らしい感性で繊細かつおだやかに描いています。
 ラブストーリーでは、作り手のキャラクターの一方への感情移入が強すぎる場合、作品としてのバランスをくずしてしまうことがよくあります。でも、この物語では、まもるは男らしく女の子の夢として、うさぎは女の子らしく男の子の理想として、生き生きしていて、魅力的です。


コズミック・ランデブー 発行/Twin−Fizz−DASH B5版/44P

 幽遊白書の蔵馬×飛影を中心に熱心な活動をしている宮下未紀さん。以前に出された「卒業」のH本もなかなかでしたが、新刊はセーラームーン個人誌です。
 まんがは、前半はHギャグのショートものが3本、うなぎ、ジョイスティック、きゅうりなど、どれもちょっち痛そうですが、ノリの軽さとお笑いが、救っています。
 後半は、うって変わってみちる×うさぎのシリアス「背徳のシナリオ」。なぜ、みちるとはるかは、うさぎたちとは一緒に戦えないのかという主題を、すべてを捨てて、ただ、はるかの手に入れるためであり、そのためには、罰を恐れない、とするみちるのあり方の描写が秀逸。作品世界を恣意的に掌握してもよいという方法論が、実に少女まんがだなあ、と言えます。


1995年3月号

Lunatic Blue【月光】 発行:PL,maria B5版/28P 

 森野うさぎさん(SYSTEM GZZY)と言えば、若い才能の発掘に昔から非常に熱心な方としても有名ですね。彼が、同人界で十年以上も人気作家であり続けているひとつの鍵がそこにあります。その森野さんが現在強力にプッシュ中なのがこの連堂らいきさんです。
 「人」ではない兄妹の契りの後、兄のもとを去った妹。そして、兄とその妹との娼家での再会をたおやかに描いたまんがが佳品。
 はじめての本ということで、詰めが甘かったり、構成的にも絵的にも荒い部分があるのですが、女性キャラの見せるあどけなさとエロティシズムの渾然とした微妙な表情が実に魅力的です。
 同人誌の楽しみって、刹那の快楽とでもいうんでしょうか、結構そういうワンカットへのこだわりだったりします。


ホシノスミレ 発行:PIKA PIKA A5版/30P

 パステルを使った柔らかくて暖かい絵柄がとってもらぶりーなタカハシマコさん。冬のコミケット47のほのぼのした手提げ袋の作者と言えば、解る方も多いかもしれません。「幽遊白書」が活動の中心ですが、その他にも「セーラームーン」、と、「赤ずきんチャチャ」女の子アニメのパロディ本も精力的に発行しています。
 メインのまんがは、創立祭ネタで男の子キャラクターによる「若草物語」が爆笑(ちなみにリーヤがジョー、しーねがベス…)。まんがもアニメもチャーミングな絵柄の一方でパワフルなギャグをかっ飛ばしている原作ですが、負けず劣らずの活躍です。印象的なのは頬の斜線。これがただかわいいだけでない独特の味わいを醸し出しています。
 ゲストも、片桐あつこ、宮下未紀、野火ノビタ、スージー江口と豪華。


1995年4月号

アカイハナ 発行:月光盗賊 B5版/28P 

 幽遊白書パロディにおいて、その強烈な個性で昨年来大活躍中の月光盗賊の野火ノビタさん。蔵馬×飛影を中心に、長編シリアスからショタっぽいエッチまで多彩な作風を誇っている彼女ですが、なんとオリジナルロリコン本が出てしまいました。(前からすっごく紹介したかったサークルだったんだけど、LPの読者に幽白のモーホー本というわけにもいかなかったので、今回は大ラッキー!)
 最初は吾妻ひでおの純文学シリーズ(!)的世界を目指した、というだけあって、古きよきロリコンの香が豊かです。


標本箱の天使[ANGEL IN BOX] B5版/76P

 アニパロ以外にもオリジナル、美少女系と幅広い活動をしている林檎堂のまんだ林檎さんと、「花いちもんめ」で活躍中の江川広実さんの合同誌。なんと、おふたりは高校の先輩後輩だそうで。
 コンセプトはロリータ。まんださん、江川さん、どちらにとってもストライクゾーンど真ん中といったところでしょうか(笑)。ノスタルジックな風景と、目覚めかけた少女の瞬間のきらめきと、未分化の性が醸し出す禁忌とが、見事に調和し、美しく妖しい作品に仕上がっています。


1995年5月号

サークル名変更についての報告書 発行:向陽閣 B5版/58P

 一昨年末以来、男性向け創作系で人気・実力ともに急上昇の歌麿三世さん。今年から、個人サークル中心に活動が変わります。サークル名も日本漁業組合から向陽閣へ、ペンネームも歌麿三世から有馬兵衛へ新しくして、心機一転同人誌に取り組んでいくそうです。この本は、タイトル通りそれについての告知のためのもの、ということになります(しかし、なんつータイトルだろね(笑))。
 巻頭まんがの「天使の魂悪魔の器」が傑作。少女を虐げたい、汚したい、という欲望と、気高く、幸福にしたいという愛情とが止揚された、有馬さんらしい筋の通ったロリコンまんがになっているところがさすがです。
 お友だちサークルへのゲスト原稿や、初期の幻の名書「初鰹」からの再録まんがもあり、ファン必携のコレクターズアイテムと言えます。


よしやすまがじん VOL.20 発行:にこにこCOMPANY B5版/60P

 オリジナル少女まんが、アニパロ、やおい、そして、えっちまんがと、幅広く息の長い活動を続けている篁よしやすさんの個人誌。
 パワフルでお下劣なギャグをぶちかます一方で、ゴシック調の耽美な作品もものしてしまう器用な方。ベタを多用した画面構成が印象的です。
 ストーリーものは、書き下ろし一本とレディースコミックからの再録が一本。前者は、洋館の別荘での主人とメイドの性愛を描いたお得意のシチュエーション。今回はすごくいいところで終わっちゃてるので、ちゃんと続きを描いてくださいね。後者は、レディースらしく、家庭教師と奥さん、という展開なんですが、篁さんが描くと、まったく違った色あいに見えるから不思議です。「かわいい女の子は大好きです。」とにこやかにおっしゃる篁さんらしい、と言えばそれまでなのですが(笑)。


1995年6月号

PRECIOUS METALS 発行:ぱらいそさいくだっ A5版/44P

 伊東岳彦関連作品というと、「ラムネ&40」、そして「リューナイト」と男性、女性両方に熱烈なファンがいるところがおもしろい。
 「星矢」、「サイバー」などで、ショタ系キャラを描かせたら、ベストのひとりに入るかんべあきらさんと、TAKIさんの合同誌が本書。「レモンピープル」では掟破りの男の子本の紹介です(爆笑)。
 でもね、すっごく、すがすがしいんだなぁ、アデユーとサルトビの少年ゆえの勇気と前向きなあり方が。アニパロという表現が、なぜ、魅力的でありつづけるのか、うまく言葉にできないんだけど(それでもライターか、俺は!)、こういう本と出会えると、すごく納得してしまんだよね。
 気が向いたら女の子キャラの本も作りたいなぁ、ということなので、みんなでかんべさんをプッシュしよう!(笑)


SMALL PLANET 発行:ぱんだや B5版/32P

 「キャプテン翼」全盛期から独特の持ち味で、マニアックな支持を受けていた東雲あるふさん。「幽遊白書」に来てからは、どうしたことかパワー爆発。特にギャグの破壊度は強烈の一言。(一連の「馬鹿スペシャル」シリーズは、女の子がこんなこと描いていいのか!! と思わずびっくりマークを書いてしまうくらいすごいので、これもチェック!)
 この本は、まこ×亜美メインのセーラームーン本。うすらなまぐらかったころの亜美ちゃん(作者談)のリリカルであどけなくて切なげな微笑みが、とても可愛らしく、ポイントが高いです。巻末の四コマギャグも亜美ちゃんの壊れ具合も笑えます。
 イベントでは、「チニタ」というサークル名で参加している方が多いので、興味がわいた人は、見に行ってみてください。


1995年7月号

The Tortune Never Stop 発行/MunchenGraph&うさぎ幼稚園 B5版/60P
 1995年4月16日発行

 北かずき(MunchenGraph)、森野うさぎ(うさぎ幼稚園)という美少女同人誌界の大ベテランが強力タッグを組んだアンソロジー合同誌。テーマは「いたぶる女の子、いたぶられる女の子」(笑)。参加陣は、いたぶられるストーリーでは、やまのべきった、茶々木紀之、美月ひな、FLATY FLAT、いたぶるストーリーでは、FREAD KELLY、森野うさぎ、北かずき、と豪華メンバー。この本のテーマにふさわしい面々が集まりました(笑)。
 どの作家さんもご自分の持ち味をうまく出していますが、その中でもお薦めは、やまのべさんの『メモル』ネタの「パブロフなマリエル」と北さんの『ロミオの青い空』ネタの「アンジェレッタ物語」。お二人ともオリジナルキャラクターの魅力を生かしつつ、とってもエロティックで、しかも、独自の世界観を構築していてさすがです。


RING OUT2 発行/世紀末CHILDREN B5版/64P
 1995年4月2日発行

 一連の「人体星月夜」シリーズで、セーラームーン系女性作家の中でも特に高い人気を得ている友里のえるさんですが、最近は「バァーチャファイター」にも凝っていて、これが2冊目の同人誌となります。
 「バーチャファイター1ラウンド順その根拠のない物語」(な、長い…)、というキャラクターごとの連作が一冊目から続いているのですが、今回は、SARA、KAGE、PAIの3人のお話。SARA、KAGEは軽めのテンポのいいショートギャグがとても楽しい。PAIの方のお話は、彼女の成長と、LAUからの自立を、彼女の生い立ちを追いかけながら鮮やかに描いています。昔から元気な女の子は得意な友里さんらしい、佳品です。
 ゲストに、コカール君ターボ、TETSUJIN、柴田文明、狩野藤丸、黒田珠文。


1995年8月号

ねこかぶり姫 発行/さしみこんにゃく A5版/32P
 1995年4月16日発行

 「DRAGON HUNTER」のサークル名の頃から可愛らしくてロリロリな(笑)キャラクターが繰り広げる、リリカルな動物まんがやファンタジーで、男性ファンの熱い支持を受けていた神代遥さん。ここ最近はアニパロでの活動も活発で、しかも徐々にエッチになってきてます。
 まんがは、2本。一本は進悟×亜美ネタの「らじかるじぇねれいしょん」。亜美ちゃんの切なげな表情がそそります。そして、もう一本は、「もしも…」というセーラー戦士動物モノ。これは、大本領発揮といったところで、ネコの描写と個々のセーラー戦士の性格をそれぞれマッチングさせて描き分けているところがさすが。
 巻頭の豪華フルカラー4Pも神代さんらしい淡い色彩がらぶりーです。
 ゲストに土屋馨、未波かずの。


サヴァ 発行/うぐいす姉妹堂 A5版/122P
 1995年4月29日発行

 かつての黄金期、少女まんがは、人間の存在そのものを斬る鋭いナイフを持っていました。その凶器(あるいは、狂気か)を今持っている数少ない作家が、このうぐいす姉妹のおふたりと言えます。
 うぐいすみつるさんの「街に棲むかげろう」は、地方から都会に出てきた女性の話。誰もいるはずのない彼女の部屋に現れた気配をめぐって、彼女そして彼女の親友の内面の孤独が淡々と描かれています。
 Tonoさんの「ホテルバニアン」は、毎夏のバカンスを海辺のリゾートホテルで過ごす少年の物語。過ぎ去りしなにも知らなかった子供の日々を南国の楽園に仮託して、叙情豊かに描写しています。
 この本とは、関係ありませんが、日常まんがのシリーズ「身辺雑布」もすごいです。万人受けはしないかもしれないけど、ハマったら最高ですよ、こりゃ。


1995年9月号

君とバーチャルしたい 発行/つけたらBカップブラの会 B5版/112P
 1995年4月16日発行

 キャプテン翼ブーム以前から息の長い活動を続けている梅丘CHIZUKOさん(じつは、やおい系のペンネームはちょっち違うンだけど)。セーラムーン女性系では割と早い時期から悪友メンバーズ(笑)とハイテンションな活動を続けています。
 今回の本は、総集編。攻めの男性キャラを画面にまったく登場させないで、セーラー戦士5人それぞれとエッチしている演出が楽しいですね。「キミは、誰とバーチャルする? 」というアオリが示すように、まんがへの感情移入をより容易にしています。
 うさぎは教室の中で、亜美は痴漢と、レイは海辺で、まことは台所で、美奈子は女教師&ブルセラショップ、と個々のキャラクターの性格とシチュエーションをシンクロさせて描き分けているところもうまいですね。


ACCESS 発行/ほげろー企画 B5版/24P
 1995年5月3日発行

 同人誌界の今年の台風の目となりそうなのが「ガンダムW」。アニメがなかなか面白くて、キャラも個性的。特に主人公が5人の美少年で、キャラデザインが村瀬、監督が池田成ということで、「トルーパー」的ミーハーノリの女性サークルの熱い支持を受けています。その一方で、ヒロインキャラの生意気さが最高で、ハマっている男性陣も多いようです。
 で、ぶるまほげろーさんもその一人。そのチャイルディッシュなキャラクターのかわいらしさには定評がありますが、この本でもその魅力はいかんなく発揮されています。
 まんがは、連作が2本。白いモビルスーツに乗ったパイロットを私の王子様と夢見るリリーナと、ヒィロの出合いをほのぼのと描いていて、ぶるまさんならではの世界をつくりだしています。


1995年10月号

とらいあんぐるまにある 発行/トライアングル企画 B5版/44P
 1995年7月30日発行

 創作同人誌即売会の中で、唯一千サークル規模を誇るイベントであるコミティア。優等生的なイメージがあって、取っつきにくい人もいるかもしれませんが、実は、最近密かに美少女系サークルが増えていて、そういう意味でも結構おいしかったりします。この本もコミティアで見つけた一冊。
 もっとも作者の咲香里さんは、本来は少女まんがを描いている人なので、こういうH本が出たのは、実はびっくりなのでした。
 内容は、まんがは長編が1本。エスカレータ式の私立のお嬢様学校の繰り返しの日常に、ちょっと退屈していている主人公と、彼女に目を付けていた先輩、仲良しの親友との恋とエッチを描いています。女性作家ならではの丁寧かつ微妙な描写と、キャラクターの性格づけがうまく、ありがちなストーリーを、ちゃんとしたお話に仕上げているところがさすがです。


王子と道化 発行/愛情バンク B5版/56P
 1995年7月23日発行

 中村月人さんこと源氏街子さんといえば、C翼以前からの同人誌歴を誇るベテラン作家。トルーパーや幽遊白書パロの一方で、オリジナルやセーラームーン、麻雀本と出す本のジャンルも実に多彩です。で、その彼女も「ガンダムW」に夢中です。
 タイトルが示す通り、カップリングは<トロワ&カトル>。原作のストーリーを生かしつつ、しかも自分の世界観を両立させる手法のうまさは、数多い女性系パロディ作家の中でもピカ一。しかも、お話はわかりやすく、キャラも可愛い。彼女が、常にそのパロディの流行はじめの時期に、牽引役として大活躍するのは、そういった魅力ゆえだと思います。
 長戸花子さんの小説も、展開が非常に速く、削ぎ落とされている原作の空白の部分を埋めた上で、うまくエピソードを構成している佳品です。


1995年11月号

裏モロモロ 発行/モロモロ B5版/36P
 1995年8月18日発行

 同人誌界最狂の、いや最凶の、もとい最強のギャグまんが家といえば、Dr.モローであるという意見に異論がある人間はいないだろう。その破天荒なギャグと、溢れんばかりの悪戯心はコミケットカタログ等で皆さんお馴染みのはずである。
 そのDrモローがわざわざ「裏」という言葉をタイトルに付けた以上、この本が並のギャグまんが本でおわるはずがない。全編これお下劣ギャグのオンパレードで、絶好調のノリを見せている。「珍機動戦記キンタマW」、「ピ幽ピ遊白書」とタイトルを見ただけでもくらくらしてしまうまんがは、とてもやおいねーちゃんには見せられない強烈なパワーを誇ってる(とはいうものの、「モローさん最高!」と言って喜んじゃってるレディもいたけどね)。「役に立たない天才」ということばは、まさに彼のためにあると言えよう。


STRAWBERRY ROMANOV 発行/STRAWBERRY TOUCH B5版/90P
 1995年8月18日発行

 芸能ジャンルの頃から、独特の可愛らしい絵柄で隠れ男性ファンもいたまつおゆりこさん。LP読者には「カイザーペンギン」などの商業誌での大塚ぽてとのPNの方が通りが良いかもしれません。彼女もセーラームーンブームでブレイクした女性作家の一人で、最近はオリジナルの美少女モノにも作品の幅を広げています。
 この本は、ここ1年ばかりの作品を集めた再録本で、まつおさんお気に入りの天王寺はるかちゃんを中心に、タイトル通りの甘い世界が繰り広げられています。うさぎをリードする時のかっこよさと、逆にみちるやうさぎに攻められた時のかわいらしさという両面を、うまくはるかというキャラクターに内在させているところがまつおさんのうまいところ。アイドル系での経験がうまく生かされているのかもしれません。


1995年12月号

新せん組三上!! 発行/うたってゴー B5版/36P
 1995年8月20日発行

 春の新番組アニメの中でも出色の出来を誇るのが「飛べ!イサミ」(同じ総監督が某「ストU」の総監督もやってるけど、こんだけ出来が違うと、あっちは名前貸してるだけなんだろうあ)。千葉治郎さん、あさりよしとおさんというこの手の子供向けアニメの大家の方にはこたえられない作品なわけで、当然に面白いパロディ本になっています。千葉さんのまんがは、光る剣をバイブレータに間違えられてお母さんに取り上げられてしまう話と性教育ネタの2本。あさりさんのは、主題歌を使ったえっちまんがです。
 イサミと言えば、やっぱりあのスパッツ姿が魅力的ですが、千葉さんのこだわりもひしひし感じられ、「少女」の健康さとエロティシズムを十分に堪能できます。
 他、ゲストにいし、田沼雄一郎。


オキタ13 発行/ガミラス愛国党 A5版/28P
 1995年8月18日発行

 「宇宙戦艦ヤマト」のパロディと言えば、元祖アニパロとでも言えるモノですよね。例えば、今から十五年近く前にゆうきまさみがヤマトのパロディ同人誌の個人誌を出していたこともあるなんて、若いモンは知らんじゃろうなぁ(おもわず、遠い目)。
 ただ、ここしばらくはちょっと手垢がつき過ぎてしまい、描く人もほとんどいませんでした。しかし、あの作品がパロディとしての揚げ足取りの宝庫であることは言うまでもないことで、まだまだ遊び方はいろいろあるよ、と我々に教えてくれたのが、ひらのあゆさんです。ひらのあゆさんは、オリジナル、「ドクラ・マグラ」、「沈黙の艦隊」など、様々なジャンルでユニークな本を作り続けている方で、今回も鋭い切れ味のギャグを連発、大いに笑わせてくれます。


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