Nov.21 (Tue) "食い倒れ"


この日もずいぶん早い時間に目が覚めてしまった。時差ぼけというよりは
食いすぎが効いているのかなという気もしなくもない。その後また寝たので
8時ぐらい?に起きた。やっとお湯が出たのでシャワーを浴びる。

今日は朝食を外でとることにしてそのまま出かける。 駅のバールでサンドイッチでも食って出かけようというつもり。 だが、あまりのパンのでかさに(といっても直径15cm程度なんだけど) 食欲を失ってカプチーノだけにする。どうせ後で死ぬほど食うんだ。(-_-;;

風間さんが両替をしている間に新聞スタンドを覗く。RUOTECLASSICHE という雑誌を Ferrari 212 inter, Alfa Romeo 1900, Lancia Aurelia などの文字列につられて買う。ついでに絵葉書も買う。Fiat ABARTH 131 Rally, Ford Escort, Audi Quattro, Opel Cadett(?) などの80年代前半?の ラリー車の絵葉書である。まったくよりにもよって。ばかっす。

今日はもっと足を伸ばしてシエナよりもっと南のモンタルチーノと サンガルガーノへいってみようと思う。モンタルチーノはワインを飲む人なら 良く知っている Brunello di Montalcino の産地である。一説には 国賓をもてなすワインだとか。かといってばか高いわけではなく日本でも 4-5,000円位で買えるのでたまの機会に飲んでみるのもわるくないかも。

ちょっと前にトスカーナのワイン生産者を訪ねた雑誌の記事で、この村にある Trattoria Sciame という飯屋がうまいと出ていたので、そこにいってみたい のである。

サンガルガーノにはタルコフスキーの映画「ノスタルジア」で使われた 廃虚となった修道院があるという。映画はみていないのだが、なんとなく 見にいきたくなった。脇ではワインやオリーブオイルも売っているらしいし。(^^;;

今日は最初からステアリングを握る。フィレンツェ市内は道が狭い上に、 一方通行が多いので、行きたいところを目の前にしても行けないことが多い。 車の速度自体はそれほど速くないので苦にはならないのだが、 うるさいゲンチャリが隙あらば左右から抜きにかかってくるのでうっとおしい。(-_-;;

ともあれ市内をなんとか抜けて、昨日のシエナへの国道をたどる。 途中に、internet うんぬん、というのぼりが立っている店がある。 あれは、イタリアのインターネットかへか?と盛り上がる。(ばか)

イタリアもインターネット流行りのようである。新聞スタンドにもその手の 雑誌が何冊か並んでいた。買ってみればよかった。(^^;;

と言っている間に車はシエナを通りすぎる。どうも行きすぎたらしい。 インターで降りて逆方向に戻ろうとするが、周りの景色があまりにきれいなので 車を止めてしばし写真など撮る。今回の目的の一つは、トスカーナの田舎の 景色と田舎の飯を楽しむ(果たして楽しんでいるのか苦しんでいるのかは不明) ことであったのでうれしくなる。 イタリアの空は日本と比べ物にならないほど澄んで青い。

シエナ方面に戻る。またどこかで道を間違えたようだ。道路の案内には Montalcino の文字は見当たらない。そんなこんなが2,3度続く。 結局昨日降りてシエナへの道を間違えた交差点を昨日とは逆に行くと、 やっと看板に Montalcino の文字が。

こうなればしめたもので、あとは標識にしたがっていくだけだ。 片側一車線の狭い道なんだけど飛ばす人は飛ばす。あおられるあおられる。 慣れない車に知らない場所ではそうそう飛ばせず、悪いのー、と思いつつ 走る。(でもこっちだって80ぐらいは出してる)

後ろでいらついているのはミラーで良くわかるが、決して無茶な抜き方はしない。 無理にあおってくるようなこともしない。見通しがよくなったらとっとと アクセルを踏んで抜いていくだけだ。そのへんみんな大人である。

などといいつつ、12時頃モンタルチーノに到着。ここもシエナと同じく 丘の上の町だ。一番上には城跡がある。Rosso di Montalcino というやはり ここのワインの協同組合のマークは城のマークであった。なるほどこれのことか、 と納得する。城の前の駐車場はがらがらで、そこに車を止めて店を探すことにする。 高台だけあって風が冷たい。冷える冷える。

Montalcinoの城跡

こんな小さい町の市内図など地図に載っているわけもなくどうするべえかと 思ったら、すぐ近くに市内の案内看板が立っている。(^^;; 住所は控えてあるのでそれと突き合わせる。ここから出ている通り沿いに あるようだ。ラッキー。

番地を探しながら歩く。おお、ここだ!と思ってドアを開けたら、chiuso! (closed) のつれない声。ドアをよく見ると、よりによって今日まで1週間ほど 休みであった。がちょーん。そりゃないぜ。
飯を食いにわざわざ日本からやってきた客人じゃねえか。(ばか)

しょうがないのでほかの店を探す。街並みは妙にこぎれいである。 世界的に有名なBrunelloの産地ということで観光客も多いのだろうか。 めぼしい店を2軒ほど見つけるが、どちらも開店は12:30から。あと5分。

メニューに兎の文字があった方に決めて飛び込む。 櫻井さんがぜひ食ってきてレポートしてほしいと言った兎である。(^^;;
兎も猪とならんで今回私の食いたいものリストナンバー1であった。(^^;;

すでに何人か客がいた。若いねーちゃんが一人でウェイトレスをしている。 前菜はほんのちょっと白トリュフかポルチーニが入ったクロスティーニ (パンの上にペーストを塗ったいわばカナッペ)

ここで何を迷ったかじゃがいものニョッキを頼むという暴挙に出る。 じゃがいもをゆでて裏ごしし、小麦粉と練って小さく千切ってゆでたものである。 よりによって腹にたまるものである。情け容赦なく一人前特盛ででてきやがった。 ソースは普通のトマトソースだった。 風間さんはパッパルデッレ(幅広手打ち麺、ミートソース?)。

うまい(参考になった)が、後々のことを考えると、全部食った時点で 死んでしまうのは目に見えているためちょっと残す。申し訳ない。

次はメインである。二人して兎のローストを頼んだが無いといわれたので 私は相変わらず猪で、猪の木こり風、風間さんは子牛のロースト。 猪はミートソースで煮込んだ奴だった。木こり風といえばキノコソースじゃないのかと 思いつつも食う。味が濃い。これはやっぱりパスタソースにしたほうがうまいぜ。

キノコのソースがないのでミートソースをこちとらポンニチでわからないと思って 出しやがったなという気もしなくもないが、そうでないのかもしれない。

風間さんのローストは大当り。直径12cmぐらいの薄切りのローストが 何枚か並んでいる。ソースが不思議な味でおいしい。なんだろう? バルサミコ酢か?マルサラ酒のようなものか?と思って何かと尋ねたが、 子牛のソース、だった。単に肉汁ということか、それとも質問の意味が 通じていなかったのか今となっては定かではない。(-_-;;

腹ごなしに観光する。(^^;;
城跡に入ってみる。なかにはエノテカ(酒屋)があって、Brunello をはじめ、 モンタルチーノのワイン、グラッパ、オリーブオイルなど多数揃っている。 Brunello といってもこんなに種類(生産者)があるのね。知らなかった。 2Fは博物館か何かになっているようで上がるのにはいくらかいるようだ。

何本か Brunello を薦めてもらう。90年は Brunello の当り年なのだそうだ。 並んでいるのも90年のものが多い。熟成が終わって出てきたところであろうか。 飲んでもよし、10年、15年と寝かせておくもよしだが、日本の夏を 乗り切るのは難しいだろう。

strong なやつを、と指定してしまった(ばかの一つ覚えである、グラッパも そうだった)のでもしかしたら今開けるのはまだ早いかもしれない。まあいいか。

ガラスケースに入って展示されているものは、Brunello 種のぶどうの品種改良を した Biondi Santi と、トップにランクされている Salvioni の Brunello の 過去のものが何本かずつであった。 ほかにも別の生産者の何十年か前のヴィンテージが何本か。

ここへ来たいと思ったきっかけになった記事では Salvioni さんを取材していた ので、おお、あれか、と思ってしまう。

あるかなと思って見渡してみたが、売り物はなかった。ガラスケースを指さして これいくらかと聞く根性もなかった。Biondi Santi のもののほうは '90 で 8万リラ前後。6千円ぐらい。ぼくらが薦めてもらったもので2万数千リラ だから3倍近くの値段の差である。越の寒梅みたいなもんか。

駐車場の向こうにも酒屋があったので入ってみる。おばあちゃんがひとりで 店番をしていた。電話で娘さんかだれかを呼んで我々の相手をさせる。

Salvioni の Brunello があったがやはり8万ぐらいした。ただ90ではなかった。 同じくSalvioni の Rosso di Montalcino という、それほど熟成させない、 若いワインがあったのでそれを買ってしまう。23,000リラ。さっき買ったのと そんなに変わらない値段である。どんな味なのだろうか。

ふと手のひらをかぐと猪のにおいが。(-_-;;

これだけ立て続けに食えば仕方がないか。 てな感じでうだうだしていたら、3時過ぎになってしまった。

サンガルガーノは諦める。車に乗って、Fattoria dei Barbi というワインの 生産農家へ行ってみることにする。大塚さんが今年ここへ行ってワインや オリーブオイルを買ってきていたところだ。

レストランは中途半端な時間なのでクローズしている。お土産売り場もある。 ここでは毎時30分に案内のツアーがあるのだが、始まってしまったばかりで 売り場にはだれもいない。結局ぶどう畑を眺めて帰る。

モンタルチーノのある丘を降りてしまう。陽もかなり傾きかけている。 野原の真ん中に突然古い教会があるので行ってみた。ほかにも何台か車が 止っていて観光客がいるようだ。中に入ったら、妙にきれいなパイプ オルガンがあって、PAからミサ曲かなにかが流れている。 外からみた感じの荒涼とした雰囲気とはずいぶん違う。まあいいか。 何か由緒などあるのだろうか。

来たのと同じ道は辿らず、モンテプルチアーノ(ここもおいしいワインの 産地だ)を抜けてアウトストラーダに乗って帰ろうか、ということになる。

一日中冷たい風に吹きさらしだったので、なにか寒気がする。帰ってから 寒い中を店を探してうろつくのはいやだ、と思ってこの辺で車で行ける ところで飯を食おうということにするが、まだ腹は減っていない。 とりあえず腹を減らすためにだけ(^^;;、走り続けることにする。

そうこうしているうちに車の方が腹が減ってしまったようでガスを入れる。 イタリアは約 1800Lit/L、120円ぐらい。日本のほうが安い。

風間さんがセルフのスタンドで自分で入れたいという。小さいさびれた スタンドがあったので、セルフだと思って入れたらじいちゃんが出てきた。(-_-;; 結局その後2回給油の機会があったのだがセルフのスタンドは結局逃してしまった。

Arezzo というシエナ、フィレンツェの東の方にある町まで走ることにする。 特にここに行く意味はない。(-_-;;

すっかりくらくなってしまったが、トスカーナのワインディングを楽しませて もらっている。それはいいのだが、ちょっとGをかけると後ろのワインが、 だーっとスライドするのであまりいい気はしない。(-_-;;
結局ちょっと抑え気味で走る。

いったん沈みこんで曲がっていく145のコーナリングも慣れれば楽しい。 といってもそんなに速く走れるわけでもないので相変わらず速い車には 後ろからあおられる始末。(-_-;;

途中ででかいマーケットがあるので寄ってみようということになる。 何だろうと思って入ったら、ディスカウントショップだった。 TV,VTR, 家電などなど。Play Station があったのにはおどろいた。(@_@;; ただ、値段が800,000リラ(6万前後)ぐらいした。ソフトもリッジしか なかった。

生ハムを足ごと密輸したときに備えて、生ハムのスライサーを買おうか、(^^;;
1万そこそこ?だぜ。
電圧違うから使えねーじゃん。プラグも違うしさあ。
トランス位あんたらメーカーだしどうにでもなるっしょ。
うーむ。

などという不毛な会話を交しつつ店を出る。気がついたら Arezzo に着いていた。 市内で駐車場を探し、飯を食いに歩く。寒気がするのであまり食いたくない。

商店街の脇にいかにも定食屋という雰囲気の店がある。 客層もその辺のおっちゃん連中から若いのまでという感じである。 われわれが入った後から段々こんできてほぼいっぱいになった。

家族総動員で若いのがウェイターをやっているという感じ。 メインは20代まんなかぐらいのポール・トレーシーに似たにいちゃん。(^^;;
(インディカーのドライバーっす。↑(^^;)

イタリア語わかる?(とイタリア語で聞くな)
わかんねー、ほんのちょっとだけ。(とイタリア語で答えるな)

といったら、英訳つきのメニューをもってきてくれた。 ないよりはましといった感じではあるが、とにかく暖まるものが欲しいので、 トルテリーニ・イン・ブロードを頼む。詰め物パスタをコンソメスープに 入れた奴である。なんか乾燥のその辺でうってる奴をクノールのコンソメに ぶっこんだつー感じだが、それでも暖まる。(^^;;

モツァレラと生ハムのフリッタータというのを頼んでみたら、 なんのことはないオムレツであった。あっさりしたものが食いたい時なので、 渡りに舟とばかりに頼む。
すっかり暖まった。コーヒー頼んだら、ないけど、自家製アマロ(ハーブなど つけ込んだリキュール)どう?というので飲んでみる。おいしかった。 今回もデザート、フルーツは無し。デザート迄たどり着くのはいつの日か。

近くのバールでエスプレッソを飲んで帰ることにする。 なぜか FIAT というラベルのチョコレート(1cm角ぐらいのちいさいの)が あったので買ってしまう。(でもトリノ産でなくボローニャだ)

途中で曲がるところを見失って言ったりきたりした。 風間さんは気持ち悪くなったそうでダウンしてしまう。 道路標識に従って何とか市内までたどり着く。

しかしなかなかそうは簡単に問屋が卸してくれないのであった。 市内に向かって行ったのはいいが、市内は一通の嵐である。 明日は車に乗らないのでただの駐車場に止めたいのだが、 青空だと盗難がこわいし路駐だとおまわりがこわい。やっぱり金を払って 駅の地下に止めようと思ったところが、駅への道がわからん。

市内はもうほとんど車も少ないのであるが、 あちこち一通の道をぐるぐる回る。 回る回る。いつもより多く回しております。 あげくのはてにはポンテベッキオを車で渡ってしまう。(@_@;;
ポンテベッキオを車で渡った日本人なんて俺ぐらいかー、なんて言ってどうする。

どこかに止めて地図を見る。やっと駐車場にたどり着く。はあ〜。 久々にタブにつかって倒れこむように寝る。グラッパをちょっとだけ飲む。

明日はいよいよ平野夫妻と待ち合わせである。 平野さんが来てくれると心強い。食い倒れの旅ははまだまだ続く。

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text and photo: nigel@st.rim.or.jp