Nov. 17 (Wed)

Torino

朝食も取らずにとっとと外に出る。外は今にも雨が振り出しそうで、歩いている
途中で小雨が降り出した。なんというかいつものピエモンテ天気である。
ホテルで立派な朝食が取れるはずなのに、1ブロック先のさびれたバールで
あいも変わらずかぷっちょとすぷれむーたで朝食を取る。

マントヴァかアルバか忘れたが(多分マントヴァだと思う)カプチーノを頼む客と受けるバリスタが口々に
かぷっちょかぷっちょ、というので、自分も試しにかぷっちょというと通じたので
それ以後かぷっちょと言っている。まあかぷっちょ(小)がかぷちーのなのか、
かぷちーの(大)がかぷっちょなのかよくわからないが出てくる物に全く違いはない。
ただ一度、かぷっちょ、とオーダーしたらカプチーノ、と返事されたことがあったが、
理由はよくわからない。カプチーノ原理主義者かもしれんので気をつけるべし(ウソ)

連れはかぷちーのとカフェラッテとマッキアートの違いが良くわからんと言っていた。
見ていると店によってばらばらなのだそうである。三者が区別されているらしき店あり、
異なるオーダーに対してまったく同じ物が出てくる(ように見える)店ありで、すっかり混乱している。
わしもようわからんのだ。

そのままポー川の方へ向かって歩きトリノ自動車博物館へ。
FIATの創設者の一人であるなんちゃらさんの個人のコレクションをもとに設立された
博物館である。開館までにはまだ10分ぐらいあったが、扉は開いていたので中に入る。
チケット売り場は入口すぐ脇にあって、他にも観光客らしき中年男性二人連れが開くのを待っている。

入口ロビーにはジルの312T5 と 156F1, Lancia D50 にマセの250Fが置いてあるので
早速じろじろ見てしまうが、ここはミラノの蛇博物館とは違ってちゃんとポールとロープで
さわれないようになっている(^^;;

イタリアなので三時間ぐらい待たされるかと思ったが(うそ)、我々の熱意に負けて(大うそ)
すぐに入場券売りのおばちゃんがやってきて券を売ってくれる。

一応順路にしたがって一階から。一階は19世紀後半から20世紀初頭の自動車の黎明期のもの。
ダイムラーやらベンツやらプジョーやらフィアットやらの100歳ちかいものが20台ほど。
この辺はよくわからないのでさっさと階段で二階へあがる。

二階の大フロアには10年代〜50年代ぐらいのクラシックを中心に、Ferrari 308GTB, Mondial QVや
珍しいことに 208GTBturbo なんつー税制上の問題でイタリア国内でしか見られないモデルまで
あった。しかしこのフロアも守備範囲外のモデルが多くほとんどパス。
ランチアラムダなんつーのも珍しいのは確かなのだが、今一つひかれない。

二階のフロアは中庭を挟んで回廊のようになっており、その一つを閉めきって
なにやらレセプションが行われている様子で、招待客らしき人達がぽつぽつと
展示を見ていたりする。そちらの方を覗いてみると、ケータリングでなにやら
振る舞われているので、うまく紛れ込んで何かもらえないかなあなどと思ったりもする。

クローズされたフロアにはAlfa Romeo Tipo33 TT12 などの名車が2,3台
あるのが窓越しに見えるのだが、見れないので3階に上がる。このフロアは私のような人にとっては
天国で、Abarth monoposto, Mercedes W196, AlfaRomeo Tipo 159, Ferrari 246F1, Ferrari 500 F2,
Alfa Romeo Disco Volante, Alfa Romeo 2600 Touring spiderといった車が並んでいる。

3階の向かいのフロアは50年代〜の市販車が何台かあって、ビートルだのトポリーノだのが置いてあった。
その下、エントランスのすぐ上のフロアにはDTMで活躍したAlfaRomeo 155V6TI 
(ナニーニ車だったか)と cinquecento trofeo、タイヤの歴史のブースがあった。
ここには売店というよりはバールもある。

先程までレセプションがあったフロアも開放されたので片付ける人々に混じって
Alfa Romeo Tipo33TT12などを見る。こいつはミラノにもあったかな。
レセプションの人達は大ホールへ消えていったようだ。
警備員がいるが気にせず大ホール横の階段をあがってみると、二階席の最後列というか
天井桟敷というかそのドアが開け放ってあって中は丸見え(^^;;

正面のスクリーンにはなんかのグラフが映っていて男の人が話している。
よくわからないがイタリアのFIATディーラーの年次大会とでもいう雰囲気。
見ててもあんまり面白くないのでとっととエントランスホールへ戻る。

エントランスホールの奥は書籍やグッズの売店になっている。
エンブレム、ピンバッジ、ポスター、ミニカーとお宝はないものかと目を皿のようにして探すが
めぼしいものは見あたらず。四谷や恵比寿にありそうなものばかり。
車のポスターに並んでアイドルやミュージシャンのポスターもあるのは子供狙いか(^^;;

結局自動車博物館の収蔵車の図録と Fiat Abarth 750 derivazione というブックレット
(イタリア語版)を買う。後者は英語版を持っているので必要無いのだが一応おさえておくというか。(^^;;

アレーゼに比べたら守備範囲外の車が多かったので、あれほどの感動は得られず
博物館を後にして車を返しに行くことに。ハーツのオフィスは線路を挟んでちょうど反対側に
ある。ホテルから駅と逆方向に走って広い通りで線路を越えると、つきあたりに
FIATのミラフィオーリ工場が見える。おお、これがあのミラフィオーリかと感動しながら通りすぎ、
迷うこと無く無事オフィスにたどりつきレンタカーを返す。

市電で市内中央へ。駅前で降りてブラブラする。トリノのポルタヌオーバ駅も他の大都市のように
ターミナル駅で、駅を出てまっすぐ歩くと、正面に広場を挟んだ繁華街を経て王宮方面へ。
駅裏というか線路脇はやはり多少下町というか、ごみごみとした大都市特有の雰囲気がある。
しかしスラムとかそういう危なさは感じない。あとで水を買いにこの近くのスーパーにはいったら、
中国人経営の中華食材屋でまるで新宿かそこらにいる錯覚に襲われた(^^;;

とりあえず昼食を取らねばならないが、大都市ゆえにレストランガイドの頁も多く、イタリア語も
そうそう読めはしないので見るのは点数ぐらいのもの。そのガイドには地図が無く、
住所を見ても土地勘がまったく無いので、適当に決めても探すのに苦労しそうである。
(たとえ多少土地勘があったとしても、イタリアの住所表示は通りや広場の名で表わされるから、
よほど大きな通りや広場でないとすぐに見つけることは難しいし、たいがいのガイド本に
出ている程度の地図ではすべての通りは出ていない。そういえばローマの地図には通りの
名前でひける索引がついていた)

うーむと思いつつガイドを見ていると駅の近くのサンカルロ広場にある店が見つかったので、
何の考えもなくそこに行くことにする。広場に面した繁華街はアーケードになっており、
カフェがたくさん目につく。バールではなくフランス風のカフェ、それも豪華な内装の
カフェが多い。チョコレート(なぜトリノ名産かは良く知らない)をディスプレイする店あり、
クリスタルを1/2から始まって(1/2だったような気がするが忘れた)2000年記念の6L
ボトルまできらびやかにディスプレイする店ありと様々である。
6Lボトルにはしっかり非売品と札がついていた。

住所表示を見ながらアーケードを歩く。111, 93, 75...と近づいてきてよく見るが
その番地はないしそれらしき店も無い。一つ手前の番号は銀行であった。
ひょっとすると裏から回るのか?と思って裏から建物に入ろうとするとガードマンに
制止された。話を聞いてみるとその番地は広場の反対側である。

むむむむ、やられたっす、奇数番地と偶数番地でどちらの側か違うとは(^^;;
ぐるっと回って反対側へいくと、その店はあっさり見つかった。階段を登って雑居ビル(というと聞こえは
かなり悪いが)の2階へ。予約してなかったが入れてもらえた。

もののはずみで来てしまったとはいえここもかなりの高級店である。
入口のサロン(多少狭くてごちゃごちゃしていたがしっかりサロンだった)でしばらく待たされる。
予約してなかったからしょうがないか。支配人らしきおやじはどことなく愛想悪い。

メニューを見ると、魚介料理が多いのでびっくりする(といっても半々だが)。
ピエモンテは、直訳すれば山の足で、海に面してはいないからここで魚料理にありつこう
などとは思ってもいなかったし、アルバでは魚の姿も見なかった(もちろんスーパーにはそれなりに売っていたけど(^^;;)

そんなわけでトリノの店でわざわざ魚を出すということは、魚介に自信があるのだろうと
いうことで(しかしその実魚介があるということが高級店のプライドで中身はそれほどでもない可能性もあるのだが)
魚介を中心に攻めることにする。

二色のパスタ野菜巻きカレー風味カニのソース、と書くと良くわからないかもしれないが、
卵の手打ちパスタとほうれん草だかイカ墨だか(忘れた)の二種類の手打ちパスタで野菜を巻くという
どことなく伊達巻を髣髴とさせるような(しないしない)パスタにカレー風味のカニ肉のソースである。
連れは、アラカルトにはなかったが、コースメニューから四角い生パスタ+エビ、カレー風味つーのを頼んで作ってもらった。

カレー風味のソースというのがトリノで今流行っているのか、イタリア全土的な流行か、シェフの
マイブームなのかはよくわからない(^^;;
はずすかと思ったが、うまいと言って食べた記憶がある(^^;;

セコンドはすでに記憶に無い魚のフライとえびのムース。
これもはずしたわけではなくおいしいといただいたが、これはぁあああ、という感動はなし。

ワインは昼だしおれだけしか飲まんということでグラスで白ワインを頼んだ。
ちゃんとおやじがボトルを見せに来て(でもすでに開栓して1/3ぐらいなくなっている)、
テーブル横に氷水を用意して冷やしておいてある。もちろんなくなれば言わなくても注ぎに来る。

奥の方は見えないが、6〜8人前後で会食をしている雰囲気がある。
ちらちら見えるようすではかなりおハイソ(死語)な方々とお見受けした。

結局白を2,3杯飲んで退散。ドルチェ頼まなかったのは近所にいくらでもカフェがあったからだ。
お勘定を終えて出ていくときにおやじが観光案内で配っているような
薄いトリノのガイドブックをくれた。純粋に好意なのか、ちみら田舎モンはこんなガイドに出てるような
観光客相手の店にでも行きなさい、という悪意がこもっていたのかはわからない。

あとで見てみたらいきなり3ページ目にまるまる1ページ使って広告がでていた(^^;;
8テーブルしかないから予約が好ましいだって。シアター(オペラか?)のあとの御利用は36時間前までに御連絡を、
ともある。華やいだ雰囲気になるのかなあ。潜り込んで見てみたい気もする。

昼食後は観光と買物とカフェ巡り。カフェ→観光→買物→カフェ→観光→買物のループ(^^;;
を繰り返しながら駅前〜広場〜王宮〜ドゥオモのあたりをぐるぐる歩く。
ドゥオモでは聖骸布が見られるのかとおもったら本物は厳重に温度湿度管理された箱の中で、
飾られているのは写真であった。

ちょうどこのあたりのトリノの旧市街は今まで訪れたイタリアの街に比べると街の雰囲気が違う。
トスカーナや中部イタリアのように赤茶色の屋根が続くのでもなく、ローマのように遺跡然としている
のでもない、ミラノと似ているがあれほどビジネスライクでもない、なんだろう、と思って見ていると
パリの街並みに良く似ているのだと気がついた。グレイの石づくりの建物は4,5階ていどで
横にずらっと長い。実際に影響があるかどうかは知らないがなんとなくそんな印象を受けた。

閑話休題、タートルネックセーターのことをdolcevitaというのね、どういう由来があるのだろう。
アヌーク・エーメが着てたのか?

トリノのリナシェンテの地下で食器やら台所用品やらぶらぶら見て歩く。
日本ブームというよりは漢字ブームらしい。ガラス皿にでかでかと『義』だの『愛』だの
書かれた皿が売っている。絶対某H野さんにお土産にしたかったのだが止められた(^^;;

もっとまっとうなナントカ焼きの茶碗やら皿やら売っている。箱も一緒にディスプレイされている。
でも箱書は上下ひっくりかえっている(爆)

ループを繰り返して3軒目(4度目)のカフェに入る頃にはすっかり遅い時間になっていた。
我々がうろついていたのはサンカルロ広場の西側だけだが、2軒に1軒はカフェではないかと思うほど多い。
だが一口にカフェといっても色々だ。

最初に入ったのは、カフェというよりはほとんどバール。座る席はなく、立ち飲み立ち食い。
ウィンドウにトリノ名物のチョコレートのディスプレイがあって、店内で買えるようになっている。
チョコレートがおいしそうでそそるのだ。かぼちゃの花が小さなチョコの固まりから出ているのが
目についた。ここのチョコをあれこれ各種取りそろえてお土産にする。

4,5人いるバリスタは揃いの上着で全員びちっと決めている。オーダーが入るとかけ声がかかるところは
体育会的ノリで、バリスタはみなりりしく、男の職場!という雰囲気がする。

チョコレートやパン、お菓子類をテイクアウト用に包んだり食べる客のために温めたりするのは
2,3人いるおばちゃんたちの仕事。最後に(もちろんここもこれまでと同様お勘定は最後である)
台の上でレジを打つのはかなりな年で少しイってそうな雰囲気を漂わせながら
まだまだしっかり店内ににらみをきかしているばーちゃん。

もちろんカウンターの上にはフリーおつまみ。
チョコがおいしいこともあってすっかりこの店が気に入り何度か通った。

次は歩き疲れて入ったカフェ。店内は広く、地下はレストランになっている様子。
日本の大規模豪華喫茶店というかんじ。席に座るとカメリエーレがオーダーを取りに来て
伝票を置いていくところも日本の喫茶点と同じか。値段がめちゃ高いところもそっくり。
客がまばらだったのは平日の夕方だったせいなのだろうか。
建物や内装はよく見れば豪華だったのかもしれないが、結果として印象悪し。

いろいろと買物荷物を抱えて7時すぎというより8時前ぐらいに入ったカフェは、
すでに閉店が近いという雰囲気。
若いカメリエーレもどことなくだれた雰囲気がある。
店の真ん中にはフリーなおつまみバーがあるのだがかなり寂しくなっている。

しかしどのカフェもこんな早い時間で閉まってしまうのだろうか。
もう一軒、連れはだいぶ気になっていたようだが入らなかったカフェがある。
ショウウィンドウにはいろんな料理が飾られていて(前菜各種、ミラノ風カツ
など肉類からつけあわせ野菜類もあってそれぞれ大皿に盛られている)、
カフェはカフェでもカフェテリアなのだが、この店も夕方近く前を通ったと
きには品数も量もすっかりさびしくなっていた。

このあたりは繁華街、というよりはブランドショップが中心なので買物客がいなくなる時間には
閉まってしまうのだろうか、意外であった。

ホテルの徒歩範囲には店はほとんど無いし、あれこれ買物荷物を抱えて食事するのは
面倒くさいし、いったんホテルに戻って出てくるのもまた面倒、というわけでフリーおつまみやら
軽食やらあれこれぼりぼり食べながら夕食代わりにしてしまったが、案の定あとでちょっと腹が減った(^^;;
明日は最後、食うぞ食うぞ食うぞと気合を入れ直して寝た(うそ)。

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Text and photo: nigel@st.rim.or.jp