Nov. 18 (Thu)

Torino


昨日は朝は雨が降ったりやんだりでいかにもトリノな天気だったのだが、今朝はすっきりと晴れている。
窓から外を見ると遠くに雪を頂いたアルプス?が連なっているのが見える。
トリノからはアオスタを経てモンテビアンコ(モンブラン)が近いので、見えるのかなと思って
探してみたが、知識が無いのでどれがどれやらわからない(^^;;

さて今朝は市内中心部に出かける前に大事な用を済ませなくてはいけない。
屋上のテストコースに登るのである(^^;;

エレベータの館内説明書には屋上のところにランナーのイラストが書いてあるが、エレベータは
4F止まりでそれ以上は上にいかない。じゃあ、と思ってエレベータ脇の階段に入ってみるが
こちらも行けないようになっている。しょうがないのでフロントまで降りて聞いてみる。

屋上のテストコースはどうやったら行けるの?と聞くとまるで初めて聞かれる質問であるかのように
どこぞに電話して尋ねている。うーむ…なんかこりゃ様子が違うな…と思いつつ待つこと数分、
屋上は完全にロックされているので入れないようになっています、とのお答え。

うーむむむむ、それじゃあ昨日の朝出かけるときに屋上に見えた二人の男は何だったんだー?

ここであきらめればいいものを馬鹿だからあきらめない(^^;;
なにせリンゴットは長さ500mの長い建物である。ホテルに使われているのはその約1/3ぐらいか。
残りはショッピングモールやオフィスになっているし、ホテルの奥はまだ工事中で
シートがかかっているが中はがらんとしているのがみえる。どこかに
登れるところがあるはずである(^^;;

ショッピングモールへはいったんホテルの外に出て、ケーブルカーのように斜めに昇降する
ガラス張りのエレベータで2階に上がる必要がある。結構すごいモールなのかと期待していたが、
テナントの数も少なくしょぼい上に朝まだ早いので人気も無い。先行き大丈夫かと俺が心配しても
しかたが無いが大丈夫なのか。

ホテルと違ってモール側は2階のフロアから上が吹き抜けになっている。
モールの端までいくと銀行やらのオフィス(しかし人気が無い)になっている。
しかしここからは上にいけないようだ。その向こうに大きな鉄の扉が開いている。
ををを、と思って入ってみるとあの有名な螺旋のスロープである。かつて出荷前のFIAT車が
何万台(ほんとはどれぐらいなんだろう)と登り降りしたスロープだ。
うちの子も40年以上前に通っているはずである。

とりあえずここを歩いていけば屋上の扉が開いているかどうかわからないが上までは行ける、
しかし連れはスロープを歩いて上がることに難色を示したので、別の道を探る。

その近くにたぶん工事用のエレベータがあったので見つからないかなとどきどきしながら
行けるところまで上がる。しかしエレベータを降りたフロアはまだ工事中でそこから先へは進めない。

結局どうにもならずスロープを歩いて上がることになってしまった。おれはすっかり興奮して早足で登る。
連れは乗り気ではなかったがいざ歩き出してみると思ったほどしんどくないらしい。

スロープを登りきるとドアは開いていてどこが completely locked だよ、と思いつつ
テストコースに出る。入口は片側のバンクの脇にあるので、反対側のバンクは500m先にあり、
遠くて見えない(^^;;

屋上から見るアルプスやポー川方面の眺めは奇麗だった。
ここに来て急に巻き上げの調子が悪くなったカメラをだましだまし写真を撮りながら
バンクに登る。傾斜は30度あるかないかぐらいで、それほど急ではない。
調子に乗ってバンクの上で万歳などしながらあたりを眺め回していると警備員だか
作業員だかがバンに乗って作業しているのを発見(爆)

バンはだんだんこちらの方にやってくる。そらあたりまえだ、入口=出口なんだから(^^;;
隠れる場所もなくバンの警備員に発見される。とりあえずなにもわからない振りで
にやにやしながらつっ立っているとなにやら無線で話している。

ここはきちゃだめだお、おとなしくかえんなさいというのでとぼとぼとスロープを降りる。
スロープをおりてモールの端の入口までたどり着くと、通報を受けた警備員が二人立っていた。
どっかに連れてかれて二度と日本に帰れないのだろうかとどきどきしながら横を
通りすぎるが何も言われず、後ろで重々しく扉の閉まる音がした。映画みたいだ。

ショッピングモールをぶらぶらあるいているとさえない食料品店発見。とりふあり□と入口に
貼り紙がある。とりふは某大将にお土産をせがまれていたのだが、本場アルバにいたのは
だいぶ前で、ここで買ってもまた腐らせる可能性大だとトリノまで見送っていたのだが、
昨日まで街中をぶらぶらしたかぎりでは見つけられなかった。

なんか信用できなさそうだったのでやめようかと思ったが、市内で見つかるかどうかわからないと
連れに促されて入ってみる。小指の先大のとりふの小さいのを7万リラだかでゲット。いいにほひ…
連れはお土産用のチョコを買っていた。

とにもかくにも目的は果たしたのであとは市内観光というかカフェ巡りというか。
昼食は昨日気になっていたサンカルロ広場脇のカフェへ。
ちょうどお昼少し前の時間だったので客はまだ2,3組、おばあちゃん二人づれとビジネスマンぽい
老紳士。ウィンドウを指さして前菜と肉をそれぞれ取ってもらう。
あたためたり調理が必要な皿は調理してくれるので冷えたままではない。
(カツとかは揚げる前の姿でならんでいたんだったか)

何食ったんだったかすっかり忘れたがおいしくいただいた。
飯食ってとりとめもなくポー川に向かって歩く。途中トイレに行きたくなったのでマクドナルドに入った。
マクドは子供(ちうても昼休みの中高生か)でいっぱい。あまりの客層の違いにびっくりする。
カフェでは大人に連れられた子供以外はみな大人、中年以上といってもいい、青少年の姿は
見られない。イタリアでもマクドが流行っているのかもしれないとはいえ、この違いは何だろう。
やはり不文律は存在するのか。単に広場のまわりは子供がうろつくエリアではないというだけの話なのか。

ポー川までのエリアは学校が多いらしく昼休みのがきんちょがわんさかと集まってうるさい。
トリノ冬季五輪のシンボルにもなっているモーレアントネッリーナは改装中でクローズと聞いていたものの
とりあえず行ってみるがやはり閉まっていた。
ポー川を渡って公園でしばしぼーっとした後バスとトラムを乗り継いでホテルに帰る。

一休みしてまたトラムで中心部へ。トラムはそれなりの間隔で来るので、出ていくのはさほど
苦にならないがやはり面倒なことには変わりない。いいホテルではあるが、
思い入れの無い人には薦めない(^^;;

昨日のリストランテでもらったガイドをぱらぱらめくってめぼしい店を探してみる。
改めて見てみると、地中海の魚料理と宣伝する店がいくつかある、やはりピエモンテでは
魚料理があるというのは一種のステータスなのか?それとも物を知らないアメリカ人旅行者向け(偏見)の
広告なのだろうか?ポー川の川魚レストランというのもあった、しまった、
チェックしておくべきだったか、でもとんでもないものにであってごめんなさいしそうである(^^;;

トリノはピエモンテの州都であるのでもちろんワインを売りにした店も多い。
ぱらぱらめくっていると370種類のワインあり□と広告が出ている店があったので、
地図で大まかな見当をつけて出発。ポルタヌオバ駅からすぐ近くの通り沿いにあることが判明。

駅から店まで歩く途中にエノテカ発見。内装は随分新しいが、最近開店したのか
由緒ある店が改装したのかはわからず。

連れはサンカルロ広場のカフェでクリスタルのディスプレイを見て以来
クリスタルがほしくなってしまったらしい。
この店にもクリスタルが置いてあったので、やったあ、と買っている。

1階はきれいなディスプレイ中心という感じだが、遅い目の時間のせいか段ボール箱など
見うけられてわりと雑然としており、それほど多くのワインが置いてあるわけではない。
店員のお兄ちゃんに連れられて地下フロアに降りる階段の途中にクリスタルやら
ジャックセロスやらのシャンパーニュが並んでいた。
地下のフロアは地物(おい(^^;;)中心。1ブロック40cm四方の木製の棚が2m近くまで
四方の壁いっぱいに並んでいる。

一回り見てみるが、94とか95とかの新らし目のもの中心で古い目の物はなし。
ただ、棚の上から天井までのスペースの間に60-70年代の古いワインが並んでいる。
それぞれ1本、あっても2,3本。
棚の中の新し目のワインが1本以外は寝ているのに対し古いのは全部立っている。
あれはディスプレイなんだろうか、売り物か、なんだろう。

何かいいのないの?とお兄ちゃんに聞くとリストがあるという。
かなり厚いリストを見せてもらう。リストを見るとここ数年のものに加えて60〜70年代の古い物が。
ををををー。連れのバースデイヴィンテージであるところの 68の Barbaresco Gaja があったので、
これある?と聞くとお兄ちゃんは地下へ。ついていくと案の定、脚立に乗って棚の上に立っている瓶を
つかんで持ってくる。まあいいか、なんたって14万リラ、1万円しないのだ(^^;;
たとえくさっていたとしても、瓶代と思えばまあ納得できる。(^^;;

続いて自分の生まれ年のBarolo 1964 ceretto というのがリストにあったので、これもくれ、と
言ったが残念ながらなかった。ひとしきり棚の上を眺めた後、じゃあいいや、
ceretto好感度高いし、ということで1994の Bricco Rocche Brunate を買った。
不勉強のため実はいいのがリストに並んでいたのかもしれないがわからず(^^;;

しかしなんか不自然なリストである(^^;;
丁度良いあんばいの80年代〜90年代初頭のものがすっぽり抜け落ちている。
ごく最近どっかのコレクションを入手して、ちょうど良いのはとっとと売れてしまった結果こうなったか、
地下のセラーを改装して店舗にして、その時にほこりをかぶって出てきたのを並べたのか、
まあどうでもいいことだ(^^;;

予定外のワイン3本を抱えてレストランを探すが、通り沿いにあったのですんなり発見。
一応店頭のメニューを眺めてみる、なかなか面白そうなメニューなのでとっとと店に入ると、
入口近くはちょっとしたカウンターになっていて奥のフロアへ通される。

照明は暗目ではあるが、インテリアは高級感を押し出すでもなく、客層を見渡してみると
アメリカ人だかイギリス人だかの女性観光客三人組(二人組だったか)が目につくほかは、
地元のおしゃれな中年カップルなどが目につき、トレンディ(死語)というか今っぽさで
売りたい店のようである。

オーナーらしきおじさんが注文を取りに来る。日本人は珍しいのかびっくりしたようで、
どこで知ったんだ?と聞かれる。これっすともらったガイド本を見せると納得される。
しかし今更イタリアで日本人が珍しいとも思えないが、トリノでは二三度みかけた以外はほとんど日本人を見なかった。
ローマやフィレンツェがうそのようだ。

最近はワイン観光で雑誌などで取材されることも多いのだが、一般の日本人の観光的には
ピエモンテは暗黒地帯なので無理もないのかもしれん。同じ辺境のシチリアが陽光をイメージさせて
一般にアピールされているのに比べ(だからあえてシチリアでミイラと骸骨を見るのはやめて北イタリアにしたのだ)、
暗くて寒いピエモンテはワインや料理に興味のない人達にはアピールしないのだろう。

店の名前はKiplingといい、店のロゴマークはインド象である。キプリングっていうのは探検家の名前
(しかしすっかり勘違いしていたのだが、Kipling というのは Jungle Book を
書いた作家である(^^;; Kipling biography)
から取っているのか?というとそうだ、とのこと。そう、この店の売りはい
わゆるアジア、アフリカのエスニック料理なのだ(^^;;
とはいえ完全なるエスニック料理店ではなく、ピエモンテの伝統的料理と半々で、そういった物珍しさ
でトリノの新し物好きにアピールしているものと思われる。

猪のサラミを前菜に頼んで、ピエモンテというよりはお隣アオスタの郷土料理であるところの
そば粉のクレープホワイトソースにカルチョフィ+チーズというのがあるのでめざとく頼む。
そば粉のクレープを四つに扇形に折った物が二枚、上からホワイトソース(たぶんフォンティーナ
ダオスタ入り)がかかっている。最近アオスタを旅した知合いは、何にでもフォンティーナが
かかっているアオスタ風の食事にすっかりやられてしまったそうだが、一皿ぐらいならなんてことはない(^^;;

カレー好きな連れはチキンカレーライスを頼んだのだが、出てきた皿をみてびっくり(^^;;
鶏の骨つき腿がまるまる一本でーんと皿の上に乗っていて、ライス(リゾなんだけど)が
添えられてカレーのソースがかかっている。たったしかにチキンカレーライスに間違いはないのだが…
とびっくりしたのも一瞬、量的にはそれほどたいしたことはないのでさくさくたいらげる。
つけあわせには店の名前を冠したInsalata Kipling(野菜、ルーコラ、アボガド、エビのサラダ)を頼んだ。

ワインはどうしよう、さすがに広告の通り370種類もリストにあると、どれを選んだらいいものか
よくわからないのであきらめておっちゃんに尋ねることにする。

なんかいいのないっすかね、あなたの…(えーとえーとイタリア語ではなんていったらいいんだっけ)
…おすすめっすか?

ということで無事意を汲んでくれたおっちゃんが選んでくれたのはロベルト・ヴォエルツィオのヴィーニャセッラ。

といいつつもつい最近ネット通販ショップでラベルを見るまでは作り手も名前もすっかり忘れていたのだった。
本など調べてみるとバローロの高名な作り手であるそうだ。
そのネット通販のヴィーニャセッラは見つけた瞬間に衝動買いしてしまった。

で、リストにはヴィーニャセッラは96と97が載っている。うーむ…どっちがいいのっすかと聞くと、
おっちゃんはお薦めは97だという。
イタリアの97はいいヴィンテージであるとはいえ(というかそれだからこそというか)
まだまだ固いのではないか、そんなら逆に96に賭けるか?という疑念を捨てられずに96…と
頼もうとするがおっちゃんは聞かない(^^;;
素直におっちゃんにしたがって97にする。

おっちゃんによればカベルネとネッビオーロのブレンドであるとのこと(とメモには書いてあるのだが
ネッビオーロとバルベーラのブレンドという説もあって実は後者が正しいのではないかと思っている)。
心配したようながちがちのワインではなくおいしくいただいた。後でおっちゃんはワイナリーのパンフ(といってもロベルト・
ヴォエルツィオのではなく別のバローロの造り手であるのだが)を持ってきて、このワイナリーは
この辺にあるのだ、とそのパンフの中の地図を指さして教えてくれる。おお、何日か前までいたアルバだ、懐かしい(^^;; 

ドルチェは連れが大好きなアイスクリームのAffogato di caffeを頼む。イタリアではぜひとも
食べたかったらしいのだが、最後の最後で食べられてラッキーだった。


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Text and photo: nigel@st.rim.or.jp