Nov. 13 (Sat)

Alba - Imperia


朝起きて小銭をパーキングメーターに突っ込みに外に出ると、
ホテルの前の通りとメインストリートに市が立っている。
といってもホテルの近所にあるのは日用品や洋服などばかり。
もともと狭い道のまんなかにテントで市が立って両脇を人が
歩いているので、人につっかえて歩きづらいったらありゃしない。

朝食を取りにいつものバールへ。馴染みの少年バリスタもAさんもいなかった。
なんとなく寂しさがつのる。ぶらぶらと歩くうちトリュフ市場が
オープンしているのを発見。土日だけの営業なのだろうか。

テントの中にはピエモンテ各地のトリュフ業者(個人のトリュフ採りではなく
仲買や加工業など)が10軒ほどテーブルを並べている。
もちろん売っているのは白と黒のとりふとりふとりふ!とソースなどの加工品。

まあ、何と見事な光景であろうか。買って帰りたいものであるが
まだまだ先は長い。前回のようにまただめにしてしまってはもったいない。
テントは人でごったがえすという感じでも閑散という感じでもなく
適度に人で賑わっている。とりふを買っている人もいる。
連れはトリュフソースの瓶詰めを買っていた。

メインストリートからすぐ裏の広場にはトラックで乗りつけて鍋釜を
広げている店や荷台にいっぱいおもちゃを並べているトラックがいた。
日本のキャラクターグッズのおもちゃを実演しながら売っている。

なにやらきれいな日用品店があるのではいってみる。
堅琴のデザインのエッグスライサーとサメのデザインのナイフを買う。
日本では見たことの無いブランドだったが、後に青山通りと外苑西通りの
交差点の雑貨屋で大量に売られていた。

アルバに最初についた市場とおぼしき駐車場はやはり食料品の市場になっていた(^^;;
ソーセージの焼いたのなどぱくつきながらぶらぶらする。
そろそろ出発しなければならずゆっくり見なかったせいもあって
ををを、これは、というものはなかった。

お昼前にアルバの街を出発してバローロ村へ。アルバはちょうど
バローロ村とバルバレスコ村の中間あたりにある。
車で20分も走ると村についた。

バローロ城がバローロの協同組合のエノテカになっているそうなので、
覗いてみるべく城へ向かうが、エノテカの扉の前に立った途端
昼休みで閉まってしまった。しくしく。

回りに酒屋とか土産物屋もあるのだが人気もなく、
あまりそそられなかったのでさっさと車に乗って出発。
結局昼飯を食いそびれてしまう。

そのまま大きい国道でなくよくわからない下道を地図と標識をたよりに
南へ南へと向かう。秋のトスカーナは広々として空が高く開放感を感じさせたが、
同時期でも初冬のピエモンテはどんよりしている。
空から時折陽が差すので重苦しくはないが、雰囲気はだいぶ違う。

所々濡れているので十分気をつけつつ、ワインディングのアップダウンを
くり返しながら幹線道路に出る。ガソリンがなくなってきたので
道端のスタンドで給油。店員はいない。

よく見てみると料金先払いの自動販売機である。
細かいことを考えずに何万リラだかまとめて機械に突っ込みボタンを押す。
よくよくみると止めた車と指定した給油ホースの位置が違う(^^;;
あわてて車を移動して給油したのはいいが、お金が1万なんぼ余ってしまった。

細かく刻んで満タンまで給油するのは、以前ドイツで失敗して吹きこぼして
洋服の袖をガソリン臭くしてしまった虎馬があるのでやめておく(^^;;
他に給油していた人が教えてくれたところによると、隣のゲーセンの
カウンターでレシート出せばお釣りをくれるとのこと。

ゲーセンで遊んでいる連中の風体にビビリながらも店員いないの?と
尋ねると、昼休みであと1時間以上出てこないよと言われる。しくしく。

1時間以上待って数百円の金をもらってもしかたがないので出発。
さらに1時間ほど走ると山間の温泉町のような雰囲気の街についた。

チロル帽らしき帽子をかぶった銅像の後ろにはほの白く雪をかぶった山が見える。
サヴォアあたりの山か?アルプスではないのかな。
銅像を囲む広場の両側にはホテルっぽい建物が並んでいる。
シーズンオフなのか、ここも閑散としている。

腹が減ったんでとりあえず何か食べたいと思って店を探す。
手ぢかにあったレストランは夕方までクローズしていた。
広場の両側にバールが2軒、どっちにしようか迷って人が多そうな方へ。

カウンターの奥にはおねいちゃんがいて手前のテーブルにはじじいが
4,5人腰をかけている。あまーい菓子パンとコーヒー。連れはいつもの
アランチャスプレムータ。(その場で絞ってくれるオレンジジュース)

とりあえず一休みしてまた出発。
川に沿って走っていた谷底の道は尾根沿いに上がり、展望が開ける。
最後の峠を越えて下りに入るとまわりの景色が一変して
オリーヴやシュロの木が目につくようになる。

雨がぽつぽつと降り出してくるが、空気は生暖かく、
たったこれだけの移動でもすっかり異なった土地に来たことを感じさせた。

山沿いを海と平行に走る高速の下を抜け、オリーヴオイル博物館の
脇を通ってとうとう海につき当たる。
右に折れてフランス国境方向にいけばサンレモまであと20km。
左に折れてジェノヴァまではあと60kmぐらいか、まだだいぶ距離がある。
インぺリアという街らしい。

時間はまだ夕方4時過ぎ、暗くなるまではもう少し間があるが、結局どちらにも
いかずこの街に泊まることにした。明日のことはまたそれから考えよう。
ではホテルを探さなくては。看板とか案内のたぐいがけっこう目につくので
飛び込みで当たってみることにする。

地中海沿いには多いのだろうがこの街はまるで尾道のように坂が多く路地は狭い。
車一台しか通れないような狭い路地を看板に従ってみつけたホテルは
シーズンオフで休みとのこと。おじさんが門を開いて駐車場でUターン
させてくれる。そこぐるっとまわって降りた先のなんとかいうホテルなら
やってるんじゃないかな、とのこと。

そうは言われたもののよくわからないのであいかわらずぐるぐる回る。
港の入口まで降りてまた坂を登ると左手に営業中らしきホテル発見。
フロントにはおばちゃんと娘らしきおねーちゃん。施設は明らかに
アルバで泊まったホテルよりしょぼいが値段は高い。シーズンオフとはいえ
リゾート地価格なのであろうか。
今にして思えば旅慣れた人なら交渉して負けさせるのであろう、しまった。

エレベータは狭く観音開き式の押して開く扉なので出入りの際に荷物がひっかかる。
それでも4階の部屋から眺める港と地中海の風景はみごとだった。

暗くなる前に街を散策することに。フロントできれいな観光用の地図をもらい
(そんなものがあるとは思わなかった)街へ出る。
ホテルを出て少し登ったところにバールがあり、ウィンドウにプチフールぐらいの
小さなお菓子があれこれ並んでいた。
連れは小さな生シューを食べてうまいうまいとご満悦の様子。
その後何度か店の前を通ったが、店が開いていたのは結局この一度きり。

雨は降ったりやんだり、霧雨でほとんど気になるほどではない。
ほとんど閉店寸前で閑散としている狭い常設市場と何軒かの店が並ぶ
短い商店街を抜けて坂を下ると、海岸沿いの道路に出た。
そのさらに下に岸壁に沿って遊歩道がある。

遊歩道の終点は港の入口。あたりはすっかり暗くなった。
Aさんはまだ旅程を残す我々のためにレストランガイドを貸してくれていたので、
この街のページを開いてみる。まさかこんな小さな街は載っていないだろうと思っていたら、
4軒も載っているのでびっくり。ただどれも評価はそこそこでずば抜けた店はなかった。

とりあえず今歩いている通り沿いに一軒あるようだ。
他の店はもらった地図ではどこだかわからないのでパスした。

土曜の晩だがシーズンオフ、海岸通りやそこからすぐの通りにはレストランが
散見されるのだが、まだ少し時間が早いせいなのかシーズンオフのせいなのか、
人の雰囲気がしない。

ガイドに出ていた店に行ってみる。店内はまだまっ暗。
入口近くにはタイル張りの水槽らしき構造物が見えるが、中は空っぽのようだ。
ドアにメニューを書いた紙が貼ってある。ちょっと高めかな?

いかんせん少し時間が早いようである。ホテルに戻って少し休み、
8時になったので支度をして出かける。
さっきは行ったり来たりで気付かなかったが、ホテルの前をまっすぐおりていけば
5分でつくのか(^^;;

店はあかりがついていて、おやじが入口の前の歩道にY10を駐車しようと
バタバタやっている。入口のメニューを眺めて入ろうとすると後ろから、
うちは魚料理の店だけどいいのかな?
振り返ってみるとさっきのおやじである。オーナーだったのか(^^;;

そのためにピエモンテから海までおりてきたんだい、と思いつつ席に通してもらう。
外から見たちょっと安っぽい感じとはうらはらに店内は随分おちついた
ムードで、テーブルにはキャンドルと花など立っている。
おやじはちびで陽気な風だが慇懃で、どことなくこのあたりでは一番の高級店
なんだぞと店の格をふりまいているようである。

他の客は3,4組。日本人駐在員父娘と女性コーディネーター?らしき三人連れ、
ドレスアップした中年カップル、離れた街から車を飛ばしてきた風のカップルなどなど。
じつは隠れた(隠れてないって)名店、穴場だったのかも。

奥には広いフロアがありそうなのだが、オフシーズンのためかみな道路沿いの
狭いテラス風のフロアに通されている。カメリエーレもおやじの他には一人。
もう一人いたような気もするが厨房の人だったかもしれない。

メニューはおやじの言った通り魚料理ばっかり(^^;;
肉料理はたったの二品。

前菜に生牡蛎を1ダース、量が多いですからピアットウニコ
(一皿でプリモとセコンドを兼ねる)をお薦めします、と書かれた 
Zuppa di pesce(魚のスープ)をそれぞれ頼んだ。

あまり期待しないで開いたワインリストがすごい。でもすごいのは赤(爆)
Barbaresco 1985 Gaja なんてのが平気で並んでいる。
こっこっこれは…と見つめたまま固まってしまった。
なんで魚屋にこんな赤ワインのリストが要るんだ?(^^;;

赤に比べたら白はどちらかというと若目のワインが中心でそれなりというところか。
必然的に白ばかり回転して赤は残ってしまうのだろうか。

結局悩んだ末、牡蛎も頼むし泡物でいくか、と Bollinger RD 1979 を頼んだ。
泡はかなり抜けつつあるが熟成された風味がたまらん。くううううう。

日本のと同じような牡蛎をじゅるじゅるとたいらげてズッパディペッシェがくる。
要はブイヤベースとおんなじで魚介類のゴッタ煮みたいなものであるが、
さすが高級店は一味違う(^^;;

家で作るとスープに魚介の臭みが出ることがあるのだがそれがない。
見た目から判断するに、スープと魚介は別々に火を通して、
皿の上で一緒に盛りつけたという様子で、鍋でごった煮、一気にどーん、には見えなかった。

魚介は何が入っていたんだかすっかり忘れたが、スープのうまかったこと。
書いていた通り量は結構あって、我々にはこれ一皿(でもそれぞれ一人前ずつ)で十分であった。

レモンのソルベとオレンジのババロアとどことなくリヴィエラなドルチェを片付ける。
魚を食べている頃から、やんでいた雨がまた降り出した。
今度は随分強く降っている。歩いて5分、走れば3分だがどうしよう、と
思っているとおやじが傘を貸してくれるという。

どこに泊まってる?と聞かれたのでホテルの名を教え、明日傘持ってきますから、と言って店を出る。
工事中の歩道を避けながら坂を登ってホテルの前につくと車が止まっている。
車から降りてきたのはおやじだった。
彼は傘を受け取って、おやすみ、と坂を下っていった。

おやじ、それって格好よすぎるんじゃないの。

ん、おやじの一張羅の傘を貸したら自分のがなくなってしまうだけだってか。

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Text and photo: nigel@st.rim.or.jp