Eにっぱち講座


---矢のように直進するとはこれか!---
第4回   「タイロッドの交換とトーインの調整」

講師は、E28ライフ名誉教授 ヘラルドさんです。
ご感想、ファンメールは   ヘラルドさん(munich_e28_520@yahoo.co.jp)へ是非どうぞ。


目次
はじめに
1 おことわり 2 普通の工具以外に用意するもの 3 事前点検
4  計測 5 調整 6 タイロッド取付と調整例
7 再計測 8 おわりに

はじめに

我が家の520i、しばらく前からステアリングを切ると「こき、こき」という音が時々するようになっていました。リンク周りをチェックすると、タイロッドのボールジョイントにちょっと遊びがあるのがわかりました。さっそく部品は買ったのですが、ステアリングがぶれるというような目立った不具合でないため半年ほどそのままになったまま。今年の夏は暑すぎて屋根のない駐車場での作業をする気になれなかったというのもあります。

やっと気候もよく、「工具親しむのころ」となりましたのでやっと部品を交換しました。この作業自体はボールジョイント外しさえあれば簡単にできる作業ですが、交換した後にかならずトーイン調整をしてやる必要があります。こちらの方が厄介ですし、コツがいるので今回はトーイン調整作業について書いてみることにしました。



1.おことわり

トーイン調整については以前にniftyの会議室にしゃっけんさんが書かれたものがありまして、ここに書く文章はほとんど同じ内容になります。ただ、niftyの会議室の記事は会員でないと参照できないので、類似の文章をここに書くこともそれなりに意味のあることかと思いますのでご了解ください。

では、トーイン調整の手順です。



2.普通の工具以外に用意するもの

・振り下げ(ホームセンターにあります)・・一番小さいものでOK。
・マスキングテープ 巾20mmくらいのもの(表面にボールペンで線が引ける粘着テープならなんでもよい)
・2m以上の巻尺(引き出した状態で固定できるもの)、またはステンレススケール
・一番長い辺の長さが30cmくらいある三角定規
・ボールペン



3.事前点検

まず、ステアリングのロッド類にガタがないことをあらかじめチェックしてください。
ステアリングをすえ切りしたときにボールジョイントに遊びがあったり、アイドラーアームの付け根がぐらぐらしているようでは調整をしても意味がありません。遊びがあるようなら、まずそちらを整備してください! 
また、空気圧も左右均等に。厳密にいうと、アラインメント調整の際には運転席、助手席、後部座席、トランクに所定のおもりを載せ、燃料満タンの状態で行うようにマニュアルに書いてあります。トーインはこれらの条件で大きく変化することはないのであまり神経質にならなくても良いでしょう。ただ、いろいろ余分なものが載っているようなら降ろしましょう。



4.計測

車を極力凹凸・傾斜のない場所(コンクリートで固めた駐車場のような場所がよい。理想は整備工場の床。アスファルト舗装の道路はよくありません)に直進状態で止めます。地面から前輪のハブの中心までの高さを測り、左右の前輪の前側に来ているトレッド面に、この高さの位置にマスキングテープを貼ります。三角定規で地面からの垂直を出して、マスキングテープにハブ中心までの高さの位置に水平線を引きます。
次いで、この線に直角、すなわち地面と垂直方向に線を引きます。この線はだいたいトレッドの中央あたりでOKです。

マスキングテープを貼った前輪の下に巻尺を伸ばして車幅方向に置き、先ほどマスキングテープに引いた垂直線に振り下げの糸をあてて巻尺の目盛に垂らし、左右の垂直線の間隔を測ります。
次に、前輪が半回転してマスキングテープが後側にくるように車を移動させます。エンジンはかけず、手で押すほうがいいと思います。このとき、ステアリングは直進を保つように気をつけてください。三角定規を当てて地面からマスキングテープの水平線までの高さがハブの中心までの高さになるように車の位置を微調整し、先ほどと同じように垂直線の間隔を測ります。
トーイン量は

 トーイン量 (mm)  =   後側で測った間隔  (mm)  −   前側で測った間隔 (mm)

になります。E28では2±0.6mmならOK。



5.調整

もしトーイン量が所定の値から外れている場合、次のように調整します。

前輪のストラットと車体側のステアリングロッドをつなぐタイロッドの左右のボールジョイントのネジ部を固定しているクランプのボルトを緩めます。トーイン量が少なければロッドにねじ込まれているボールジョイントのネジ部が出て来る方向に、多ければ入る方向にロッドを回転させます。タイロッドの両端のネジは片方が逆ネジなので、どちらに回せばよいかはボールジョイントのネジの向きをみて判断します。
必ず、左右のロッドを同じ角度だけ回してください。回す角度が違うと、ステアリングを直進位置にしたときに車が直進しなくなります。回す角度とトーインの変化量の関係は・・測り忘れてしまったのでわかりません。タイロッドを交換した場合でなければ、1/10〜1/8回転位で適正値にもってこられるはず。それ以上回さないといけないようではとんでもなく狂っています。



6.タイロッド取付と調整例

私の場合、タイロッドを交換しましたので調整は2段階で行いました。
まず、ロッドを交換する際に新しい方のロッド両端のボールジョイントの距離を、はずした方のロッドにだいたい合わせて取付けます。この状態で車を動かしてみて、ステアリング直進の位置で車がきちんと直進するよう、左右のタイロッドを回して調整します。
次に上記の要領でトーイン量を測定して規定値に調整しました。目分量でロッドの長さを調整してつけたのですが、車が直進するように調整して測った段階でトーイン量が4mm。うーん、われながら優秀だ・・(ただの偶然 ^^)。



7.再計測

タイロッドを回転させたら、再度上記の要領でトーイン量を測定します。OKとなったらボールジョイントのクランプのボルトを締めるのをお忘れなく。念のため、少し走ってからもう一度、狂っていないかどうか測ってやれば万全です。



8.おわりに

うちの520iは問題のボールジョイントの中を見ましたら、ボールの周りにある樹脂のブッシュがばらばらになっていました。そのせいでボールジョイントに遊びがあったのと、おそらくトーイン量も適正でなかったのか(ボールジョイントにガタがあるので
測れませんでしたが)、交換後はずいぶんハンドリングがよくなりました。高速走行時、ぬうわ以上では速度が上がるにつれ直進安定性が悪くなりふらつくような傾向があったのが解消され、また高速コーナーをハイペースで通るときの反応がシャープになりました。

車検のときにサイドスリップの測定値が規定値に収まるようにタイロッドを調整してしまっているのですが、その時のトーイン量を測ってみたことがありません。サイドスリップを調整した状態でトーイン量が規定値に入っているのかどうか、チェックする必要もあるかな?と思いました。



「第4回  タイロッド交換とトーイン調整」おわり
2000.10.22