Eにっぱち講座

第6回   「E28フロントホイールベアリングの交換」

講師は、にしやん  さんです。
ご感想、ファンメールは   にしやんさんへ是非どうぞ。


目次
1 フロントから異音が! 2 具体的な症状 3  ホイールベアリングとは?
4  必要パーツと道具 5 作業 6  交換後の試乗インプレ
7 さいごに(ベアリング不良の原因)

---- 1982年533i: 167000km走行時 ----

1 フロントからゴーーという異音が!
3シーズン履いたタイヤREGNO-ER50もそろそろ交換時期ということで、新しくなったER-55に換えました。このタイヤは静粛性が向上しているということで期待していたのですが、走ってみてそんなに静かじゃないなぁ...という感じでした。むしろゴーーーとかすかなロードノイズを拾っているような音がします。あちゃーハズレをひいたかー!と思いつつ、まぁもともとE28はそんなに静かな車じゃないんだしなぁと自身を慰め、そのまま1年ほど乗っておりました。

さて2001年のお盆。帰省先からの帰り、やたらとフロントからロードノイズが大きく聞こえてくる事にはたと気づきました。妻「この車、前からこんなに音大きかったっけ?」、私「そういえば最近やたらと音が大きくなってきたような...。前はヒュィーンって心地好いエンジンの音がしてたよねぇ...」。
そのゴーーという不快な音はフロントの下あたりから聞こえてきます。ビビビビという細かい振動さえもステアリングを伝わって来ます。天下のREGNOタイヤがこんなひどい筈はない。原因は........きっとホイールベアリングの不良だ!と思いついたのでした。ホイールベアリング不良でゴーって音がするって良く聞くもんねぇ。ついにこの車もホイールベアリングの交換時期かぁ、と16.7万キロを示すオドメーターを見ながら、帰ったら早速パーツの注文だなと考えるのでした。



2 具体的な症状はこんな感じでした
時速30キロ以上での走行時にフロント下回りあたりからゴーーと異音がし、こまかな振動もステアリングに伝わって来ました。このゴーーという音とは、ちょうど、粗い舗装道路を走行しているときのようなロードノイズ音に似ています。速度を上げるにつれ、音が大きくなっていきます。時速60-80キロでは結構な音がします。
他の症状としては、走行中にステアリングを右にきって車体がロールしたときにのみ、異音がふっと消えます。逆に、ハンドルを左にきったときには異音は消えません。このことから、不良の箇所は右か?左か?となるわけですが、未熟な私は、右のホイールベアリングが不良だ!と判断して先に右を交換したのですが、実は左が不良でした。ちなみにホイールベアリングのがたのチェック方法は、ジャッキアップしてタイヤの上下を持ち、思いっきり上下にゆすってがたがあれば交換すべし!と本にあるが、実際左右やってみてもがたは感じませんでしたよ....。(体力と慣れが必要か?)


3 ホイールベアリングとは?
画像1 新品ベアリングセット名のとおり、タイヤを転がすためのでかいベアリングがありまして、E28の場合、フロントはWheel bearing Unitとして一個のパーツとして入手できます。価格は海外の通信販売などでは1個92ドルぐらいですから、日本の正規ディーラー価格では2-3万円ぐらいするのかな??
ホイールベアリングユニットはSealed Hubとも言われているようで、2コのボールベアリングがセットになってひとつのパーツになっています。これを注文するとSKF というメーカーのものが届きました。箱の中にはホイールベアリングをストラット車軸に締めつけ固定するでっかいナット(46ミリソケットが必要)もセットで入っていますから、だぶって注文しないようにしましょう。
→画像1参照
ちなみに他の車種のホイールベアリングにはテーパード・ローラーベアリングというのもあるようで(ボルボ240とか)、この場合は分解して清掃、グリスアップしてメンテできるみたいです。ナットの締めつけ具合が難しいようですが...。E28は分解できません。ホイールベアリングユニットごと交換しますので簡単です。交換は新品を使いましょう。


4  必要パーツと用意した工具
・ホイールベアリングキット(ABSなしタイプ)/BMWパーツNo.31 21 1 131 298/2個
・グリスキャップ/BMWパーツNo.31 21 1 130 124/2個
・46ミリソケット、ブレーカーバーと延長パイプ、汎用ギアプーラー、ベアリングプーラー、36ミリソケット(ベアリングの打ち込み用なので他のものでも代用可能)、ハンマー、ピンポンチ、その他


5 作業
(ある程度、自己流です。Bentley,haynes等のマニュアルなども参考にして下さい)

1.フロントをジャッキアップし、ホイールを外す。

2.グリスキャップをドライバ等でこじって外す。キャップ内側には緑色のグリースがマーガリンのようにへばりついてます(このグリスは再使用します)。大きな46ミリナットも見えます。このナットのカシメをピンポンチとハンマーで打って外します。

3.ホイールを取付け、ジャッキを下ろしてタイヤを地面につけます。この状態でタイヤ止めなどをかませます。まずはハブ軸と46mmナットの位置がわかるように印をつけておきます。次に46ミリソケットとブレーカーバー、さらに延長パイプで大きな46ミリナットをエイヤッとゆるめます。このナットは290Nmという大きなトルクで締まってるそうですが、延長パイプ効果でか、意外にスンナリ回りましたよ....。そして、このゆるまったナットを手持ちのトルクレンチで適当なトルクで締めつけます(たとえば100Nm)。この状態で、最初につけた印どうしが角度で何度ずれているか確認して下さい(この角度が手順9で役に立ちます。つまり角度締めをするための測定です。
290Nmまで締めつけられるトルクレンチを持っている方は必要ない)。角度を測ったら、再びナットをゆるめておきます。

4.ふたたびジャッキアップ、ホイールを外します。ブレーキキャリパーも外してストラットにつり下げておく。さらにブレーキロータも外せば、ホイールベアリングだけが残ります。この時点で手でホイールベアリングをゆすってみて、カタカタもしくはガタガタしていたら、要交換です。

5.大きな46ミリナットを外したら、汎用プーラーでホイールベアリングを抜きます。(→画像2参照
*汎用プーラーがなくても、裏側からハンマーでガンガン叩いても割と簡単に抜けます。片側はハンマーで外しました。

画像2 プーラーでベアリングを抜く

6.ホイールベアリングのインナーレース(内側の輪っか)は、一緒に抜けずに軸に残ってしまいますので、こんどはベアリングプーラーを使ってこいつを抜きます。こればかりはツメ先の厚い汎用プーラーでは無理と思います。なるべくツメ先の鋭い大きめのベアリングプーラーを用意すればバッチリです。私はstraightの通販で買った2400円ので抜きましたが、これでもやや小さめでした。プーラーを使えば、インナーレースは、ぬるーっ、って感じで割と簡単に抜けましたよ。(→画像3参照
画像3 インナーレースはベアリングプーラーで
外したホイールベアリングはばらばらになってしまいます。(→画像4参照
画像4 外したホイールベアリング
7.軸に潤滑剤等をタップリ吹き、新しいホイールベアリングを「あてもの」をしてハンマーで奥までしっかり打ち込んで行きます。数回叩くだけで以外とスンナリ入っていきます。あてものはインナーレースにのみに当てるようにします。私は36ミリソケットをあてものに使いました。これが丁度いいんですね。なぜ36ミリソケットがあるかっていうと、36ミリはクランクシャフトのボルトのサイズなんです。上死点出しなどに使えます。工具箱におひとつどうぞ!(→画像5参照)  奥までしっかり圧入した新しいホイールベアリングをゆすっても、当然ガタはありません!(^^)

8.新しい46ミリナットをハンド・トルクで仮締めし、ブレーキローターを取付け、ホイールを取付けます(ブレーキキャリパーはとりつけません)。

画像5 ソケットをあてものに
9.ジャッキを下ろしてタイヤを地面につけます。この状態でタイヤ止めなどをかませ、46ミリソケットとトルクレンチで大きな46ミリナットを290Nmのトルクで締めつけます。ですが、この大きなトルクレンチが工場から借りられなかった、またはお金を節約したい、というひとは、まずは手持ちのトルクレンチで100Nmで締めつけ(何Nmでもいいのですが)、さらに手順3で測っておいた分の「角度締め」を行い、よしとしました。(自己流です...)(→画像6参照
画像6 角度締め
10.ピンポンチやタガネなどで46ミリナットのゆるみ止めのカシメを行います。

11.古いグリスキャップにこびりついていたグリスを46mmナットの周辺に塗込んでから、あたらしいグリスキャップを打ち込みます。



6  交換後の試乗インプレ
走行中の異音と微振動の原因は左ホイールベアリングの不良(がた発生)だったわけですが、交換後の試乗では全くの異音無しで修理大成功です。しゅるしゅるーーって走りだし、走行中は全く静かで、エンジンの心地好い音がクリアーに聞こえるようになりました。振動もなく、本来のE28ってこんなに静かだったのぉーって感じです。
205/60R15のレグノER55の静粛性もすばらしいもので、満足しています。
いま思えば、この静かなタイヤに換えたことで、当時低級ロードノイズと思っていたホイールベアリングの異音がより聞こえやすくなったのではないかと思います。この1年ぐらい不良のホイールベアリングで走っていたことになります。恐ろしいことです。みなさんのホイールベアリングは大丈夫ですかー? 



7 さいごに(ホイールベアリング不良の原因は!)
取り外した不良ホイールベアリングをいじっていましたら、インナーレースに画像のように、表面をひっかいたような傷を発見しました。ここはベアリングのボールが当たるところなので、高速で回転すればゴーーという音が発生するかもしれないですね。
画像7 劣化していたインナーレース
16万キロも走るとこうなってしまうのかな...?

注....今回の整備ではABSなしの1982年533i での場合です。ABSつきの車の場合はABSセンサー等の取り外しも必要と思います。 

いやー、車がスムーズに走るようになって、まるでべつものみたいです。

written by Nishiyan September  2001



「第6回 フロントホイールベアリングの交換」おわり