Eにっぱち講座

第2回   「バイヤーズガイド:E28のすべてをチェック!(車体編)」

講師は、E28ライフ名誉教授 ヘラルドさんです。
ご感想、ファンメールは   ヘラルドさん(munich_e28_520@yahoo.co.jp)へ是非どうぞ。


目次
2    車体
2.1 塗装 2.2 さび 2.3 へこみ
2.4  ボンネット 2.5 サンルーフ 2.6 フロント・リアガラス
2.7 ドア 2.8 燃料タンク 2.9 バンパー

2.車体
ここでは、普通に使って年を経るにしたがって傷んでくる箇所のチェックについて書いてみます。「ハコ」については、事故車かどうか?というのも重要なポイントではありますが、私自身がその点についてはコメントできる自信がないのと、それについてはいろいろと参考になる記事もほかにありますので、触れないことにします。

2.1 塗装
E28の塗装は、耐久性に関してはそれなりに優秀という程度でしょうか。現在の水準からすると、とびぬけて優秀というほどではないようです。
表面の細かい傷によるつやの劣化があるのはやむをえないでしょう。新車のころの写真を見ると、つややかな仕上がりの美しさに嘆息するとともに、振り返ってわが身ならぬわが車のとの違いにも嘆息・・オリジナルはそれくらい美しい状態のはずです。そこまでの状態を保った車はそうはいないと思いますので、自分の納得のいく状態であればよしとするべきでしょう。

状態の悪いほうでは、さびが浮いているのは論外として、亀の甲羅状のクラックが入っていたり、部分的につや消し状になっている箇所がどの程度あるかを見てください。屋根やボンネットが一番劣化しやすいので、その辺を見ればおおよそわかります。軽度なものは磨きとワックスがけで復活しますが、全面劣化しているようだと復活させるのには手間もコストも掛かります。だいたい、そこまで状態の悪い車は他にも問題を抱えている可能性もあるので要注意です。

メタリック塗装の車ではクリア層がはがれているのがよく見られます。塗装表面に段差がついて、一段へこんだ部分はすこしつやが落ちたようにみえるようになっています。すぐには悪影響はありませんが、無いほうがいい状態であるには違いありません。運転席ドアのノブ、キーシリンダーまわりが一番やられやすいところです(うちのもはがれてます・・)。



2.2 さび
いうまでもなく旧車の大敵です。E28は02系とかE12(初代5シリーズ)、E21(初代3シリーズ)あたりと比べると防錆性能は高くなっているようですが、やはり「アキレス腱」はあります。
次に挙げるところが代表的な弱点ですので、重点的にチェックしてください。
 
  • フロントエプロン(フロントバンパーの下の外板)

  • バンパーの陰の部分がさびていないか。すその部分にこすったような後がないか。また、すその部分の裏側がさびていないか。左右の部分はフロントのホイールハウスからのぞいても見えます。フロントスポイラーがついているとチェックしにくいところなので慎重に。
     
  • ホイールアーチ

  • 下からのぞいて塗装がぶくぶくしていないか。またツバの部分の上に手で触ってみて、さびが付いてこないか。フロントホイールアーチの後側に樹脂のカバーがビス止めで固定されています。この下のすその部分はさびやすいので要注意。
    また、リアホイールアーチの後ろのフェンダーのすそには後輪がはねた泥がたまりやすいので、ホイールアーチの後ろの部分から後ろの角の部分までの間が要注意箇所です。特に、右側の燃料タンクとフェンダーの狭い隙間をよくみてください。
     
  • リアエプロン(リアバンパーの下の外板)

  •  すそがさびていないか、裏側に触ってみてさびが付いてこないか。Mテクバンパー(ボディ同色のFRP)がついていると見落としやすい部分です。
     
  • トランクフタ

  •  一番後ろのふちの部分や、その裏側がさびていないか。
     
  • ドア

  • 下のふちをなでてみて、ぶくぶくしていないか、また、さびが付いてこないか。下からのぞいて、ウェザーストリップのゴムをくわえている部分が腐食していないかもチェックします。また、ドアの厚みの部分をぐるっとみて(特にちょうつがいの側)、さびが出ていないか。フロ ントドアのちょうつがいの裏側(ドアを閉めた状態で、ドアとフロントフェンダーの間を懐中電灯で照らしてみる)がさびていないか。

    2.3 へこみ
    目に見える部分のへこみは誰でも気がつきますが、思わぬところがへこんでいる場合があります。そして、それがおもわぬトラブルの元になったりしますので要注意です。車の前から順番に見てみましょうか。

    まず、フロントメンバー(エンジンの下、フロントサスペンションのアームが取り付いている一帯の部品)の下面、サスペンションアーム取付部が変形していないか確認します。この部分の変形が大きいと、最悪フロントホイールのアラインメントが狂う可能性があります。また、車検場に持ちこみで車検を受ける場合、落とされることがあります。(経験者σ^^)

    次に、運転席/助手席の足元当りの床の下面に、車の長手方向に箱状の補強がついています。これの前の方がぶつけやすい部分です。結構強度を負担している部分なので、へこんでいるとそれが原因で亀裂が入ることがあります。・・そうなると当然ボディ強度にも影響します。左右のサイドシルの下側は、多少のへこみは問題ありません。
    ただ、前後のジャッキポイントを示す目印のリブがつぶれていたり、ジャッキをきちんと掛けなかったために長手方向のリブがつぶれていたりするのは、あまり車の扱いに気をつけていないオーナーの手元にあった車かもしれません。
    ちなみに、ジャッキポイントの真上のドアのサイドモールの上あたりにえくぼがあるのは、かなりの確率でジャッキを掛けたままドアを開けようとした痕跡です。

    床下をのぞいてみて、大きくへこんでいるようなところがあったら、念のため床板に亀裂が入っていないか確認しておくことをお勧めします。亀裂があると、そこから水が入って床が腐る恐れがあります。

    あとは後ろからのぞいてみて、スペアタイヤハウスと燃料タンクがへこんでいないか確認します。特に燃料タンクは、中央部をへこませると中に入っている汲み上げ用のポンプや燃料残量センサの具合が悪くなる可能性があります。



    2.4 ボンネット
    ボンネットフードを開くとき、2つあるロックがきちんと外れるかどうか、またボンネットオープナーを引くのに極端に力がいるようなことがないか確認します。フードを持ち上げた状態で支えるのは、根元の左右にあるガスストラットですが、これがきちんと動作していないものはフードを全開にして手を離すと下がってきたりします。この部品は準消耗品なので、だめな場合は交換してもらいましょう。

    フード裏の断熱材は少なくとも2種類あるようです。ノーマルなのは15mmくらいのスポンジが3分割で貼りつけられているもので、オリジナルが残っていてもまず間違いなくさわるとぼろぼろ崩れるような状態になっていると思います。気になる方は貼り替えてもらうか、きれいにはがしてしまってもいいでしょう。もう1種類は一体モールドの発泡体で、表面は硬い皮膜がついていて耐久性が良好です。こちらは(たぶん)メンテナンスフリーなので状態は気にしなくていいでしょう。

    フードの前端には水密性を確保するためのゴムのシールがあります。車体側に当たる部分がつぶれているのはやむを得ませんが、なくなっていたりぼろぼろになっていないか確認します。ないと雨天走行時にエンジンルームの上の方に水が入って思わぬトラブルを生じる可能性があります。フードの後端、左右端が当たる部分の車体側にもシールゴムがかぶっています。これもそれなりの形でついていればOK。後端のゴムがないと、バルクヘッドに沿って水が流れて、足元にいくつかあるキャップから車内に水が入る可能性があります。

    フード後端のグリルの下には樹脂製のエアインテークダクトがついていますが、これはたいてい見るも無残に変形しています。ボンネット内に直接水が入らない程度の状態を保っていればよしとしましょう。


    2.5 サンルーフ
    サンルーフのついている車では、後ろを持ち上げるティルトと普通の開閉の両方が正常にできるかどうか確認します。

    全開にした状態で上からのぞいてみて、屋根のふち(特に後ろ側の奥の方)がさびていないか見てください。
    また、開口部の一番前の左右にある水抜き穴が詰まっていると雨漏れしますので、ここから水がきちんと抜けるか確認します。






    2.6 フロント・リアガラス
    傷のチェックは当然ですが、フロントガラスではふちの部分が白く濁っているものがよく見うけられます。これは合わせガラスの中の樹脂膜が白濁しているもので、あまり幅が広くて気になるようだと交換するしか手がありません。リアガラスにはデフロスタの熱線がついていますが、きちんと動作するか確認します。寒い時期なら、スイッチを入れて(必ずエンジンをかけて! バッテリーに結構負担が掛かります)5分もすればなんとなく暖かくなるのでわかります。・・夏はちょっと難しいかもしれませんね。

    M5以外はガラスを固定しているウェザーストリップの下辺以外の3辺に銀色の樹脂のモールがはまっています。これは劣化してクリーム色になっているものがほとんどです。実用上は変色していても問題ありませんが、みばえが気になるなら要交換です。下辺の金属製のモールも表面が白っぽくなっていることが多いのですが、これは根気良く磨いてやれば結構きれいになります。ただし、このとき絶対に外さないこと。外してしまうと、ガラスを外さないと元通りにはまりません。



    2.7 ドア
    まず、ドアの周囲のウェザーストリップの状態をチェックします。E28は内外2重にウェザーストリップがついています。外側はドア側、内側は車体側に止まっていて、外側が水の侵入防止をしています。従って、ドア側が傷んでいると雨漏れする恐れがあります。全周ぐるっと確認して、切れたりむしれたりしているところがないかどうか見てください。内側のウェザーストリップは主に静粛性を確保するためのものなので、多少傷んでいても害はありません。

    窓ワクのまわりについている銀色のモールと、雨どいのふちのモールに白い斑点ができているのはよくある現象です。実害はありませんので、根気良く磨いてやれば男前があがります。(いい女になります、かな?)

    次に、ドアラッチはきちんと動作するか確認します。中と外から開閉してみればわかるでしょう。リアドアはチャイルドプルーフがついています。ドアを開いた状態で、ラッチの脇にあるつまみを動かして内側からドアが開かなくなれば正常です。ドアラッチのつめの先端には樹脂の小さなカバーがついていますが、これがよくなくなっていることがあります。実害はないのですが、ないとドアを開閉するときの音が少し安っぽくなります。

    センタードアロック(集中ロック)がついていますので、その動作が正常かどうかも確認します。トランクのセキュリティ機能がついている場合、キーはマスターキーとイグニッション専用キーの2種類がついてきます。
     

  • 運転席でロック全てのドア、トランク、給油口フタがロックされる。
  • 運転席のドアを開いた状態で運転席側のロックノブを押す

  •  →ロックできない(キーの閉じ込め防止)。
  • その他の席でロック

  •  →その席だけロックされる。
  • 運転席の外からマスターキーでロック(90度キーを回す)

  •  →全てのドア、トランク、給油口フタがロックされる。トランクはイグニッション専用キーでは開かなくなる(らしい・・うちの520iにはこの機構がない)。
  • 運転席以外の外側からキーでロック、または運転席の外からマスターキーでロック(45度キーを回す)

  •  →全てのドア、トランク、給油口フタがロックされる。
  • 運転席のドアを開いた状態で外側からキーでロックする

  •  →キーを戻すとロックが解除される(キーの閉じ込め防止)。

    他に、ドアをロックした状態で車が衝突すると全てのロックが解除され、ハザードが点滅、室内灯がつくという機能があるはずですが、これはちょっとテストできませんね。
    (できれば実証する機会も欲しくない)



    2.8 燃料タンク
    無視されていることが多い部分ですが、思わぬトラブルを起こすことがあるので必ずチェックしてください。
    へこみについては既に書きましたので、その他の点について触れます。給油口のキャップを取って、中をのぞいてみます。懐中電灯があるといいでしょう。ただし、安全のため給油口の近くでスイッチのオンオフをしないでください。まして、ライターの火でのぞくなんているのは論外です入口のパイプや底のほうがひどくさびているようだと、燃料系のトラブルにつながる可能性があります。きれいにさびを落とすのは難しいので、交換する必要があります。

    燃料タンクには、タンクから気化するガソリンをエンジンの方に吸い込むための配管があります。このゴムホースが劣化していると、満タンにしたときにトランク内がガソリンくさくなったり、室内もガソリンくさくなったりすることがあります。また、ひどくなるとここからガソリンが漏れるので要注意です。トランク内がガソリンくさい場合、まずここを疑ってください。トランクの右側のサイドの内張りをめくると、奥の方に灰色のプラスチックのタンクとそこにつながる3本のゴムホースがあります。このホースに亀裂が入っているようなら即交換です。



    2.9 バンパー
    MテクのFRPバンパーは表から見て傷やへこみがなく、車体とのチリがきれいに出ていれば問題ないと考えていいでしょう。

    メッキバンパーは中央と左右の3ピースで、角のボルト止めの部分にカバーがついています。、きちんとしているものは黒い樹脂モールがカバーの部分以外全周すきまなくはまっています。ちょっとこすっただけでも沿いが悪くなるので、ずれたりすきまがあるものはぶつけるかこするかしてそのままになっている可能性が高いと思われます。また、車体とのチリがきれいに出ていないものもぶつけている可能性があります。少し離れてバンパー全体を眺めて、微妙にひずんでいないかどうか観察してみてください。

    表面のメッキの状態の良し悪しは見ればわかりますが、表面がきれいでも裏がさびだらけになっているときがあるので、裏側に手を入れてチェックしてみてください。実用上は問題ないのですが、さびているとあまり気分はよくないものですから。



    「第2回 車体編」おわり