川村渇真の「知性の泉」

思考に役立つ視点や方法は提供可能


既存の方法は抽象的なものがほとんど

 世の中には、いろいろな思考法や発想法が出回っている。本屋に行くと、アイデアの出し方や企画のまとめ方といった本が数多く並ぶ。対象範囲を広げると、文章の書き方の本の中にも、思考法の一部を含んだものが見付かる。
 この種の本で語られている内容は、残念ながら、あまりにも抽象的すぎる。正解は1つではないとか、常識を否定しろとか、おおまかな特徴を述べた“簡単な心得”に過ぎない。このような内容なので、そのままでは活用できないし、実際にどうしたらよいのかには答えていない。ハッキリと言ってしまうなら、思考法や発想法といったレベルには達していないのだ。実際に活用できない本が多い点は、作文の本と状況が似ていて面白い。ただし、作文の本の一部には利用できるものがあるため、発想法の本のほうがレベルは低い。
 思考法や発想法と呼ぶためには、もっと具体的な方法を示す必要がある。また、読んだ人が実際に試せなければならない。具体的といってもレベルはいろいろあり、どの程度なのがが重要となる。最低限のレベルとして、方法の説明を読んだ人がすぐに試してみれる程度までは、具体的になっていなければならない。それを基準にするなら、現状のほとんどの方法は不合格である。
 多くの人が求めているのは、もっともっと具体的で、実際に試すことができる方法だ。これからの時代は、その条件を満たさないと、思考法や発想法と呼んでほしくない。

いろいろな形で思考のヒントを与える

 具体的で役立つ思考法を作るためには、実際の思考過程を論理的に分析する必要がある。考えるときに何をどのようにしているのか、もっと突っ込んで観察する。その結果をもとに、多くの人が使える形の思考法として構築すれば、役立つ技法になる。
 思考法というのは、あくまで手助けをするツールでしかない。実際に考えるのは本人であり、思考法は考えるためのヒントを与えるだけだ。与える技法はいろいろあり、考える方向の見極めを助けるといった、直接的なヒントだけではない。対象を整理して見通しを良くするとか、思考の漏れを発見しやすくするなど、間接的にヒントを与える技法も含まれる。
 1つの方法を単独で用いるのに加えて、複数の技法を組み合わせる使い方もできる。どの技法が最適かは、対象となるテーマの特性や、使う人との相性によって異なるので、いろいろな技法を試して、自分にあった技法を見付けるしかない。実際には、どんなテーマであっても、いろいろな方法を順番に試すことになるだろう。
 いろいろな技法がある場合は、全体を体系的に構築することも重要だ。対象テーマの特徴に合わせて、どの技法が最適かや、どんな順番で適応すると効率的かなどを提供する。また、複数の技法を組み合わせる場合には、効果が大きい組み合わせを示すことも求められる。さらには、思考がスムーズに始められるようにと、出発点となる技法もいくつか用意しなければならない。
 もう1つ重要なのは、どの技法を用いて思考した場合でも、何らかの結果を記録として残す点だ。単に頭の中で考えるだけでなく、テキストを中心としたデータとして、記録を残しながら思考する。その記録は、思考の進み具合を全体的に把握するのに役立つ。また、同じ技法を再び用いる際にも、前回の続きから始められる。このことが、好きな時点での思考の中断を可能にする。加えて、別な技法を用いるときの参考になり、思考の堂々巡りを防止できる。これらのことから、思考法にとって、テンプレートは非常に重要で必須のものだと分かる。すべての技法には、形式化されたテンプレートを用意するつもりだ。
 以上のことを満たすには、かなり大変である。しかし、そこまで達しなければ、本当に役立つ思考法にはなり得ない。

将来はコンピュータに搭載する

 体系化された思考法を確立できると、その機能をソフトウェアとして実現して、コンピュータに搭載できる。ソフトウェアなので、学習機能も搭載すれば、使ったオプションなどを記録し、その使用者に最適な思考環境へと整えられる。
 将来は、ほとんどの作業をコンピュータ上で行うため、入力済みのいろいろなデータをそのまま活用できる。また、ネットワークの発達により、外部のデータの参照も簡単だ。そのため、コンピュータ上で実現した思考法は、その効果を最大限に発揮するだろう。
 以上のことまで考えると、これからの思考法は、コンピュータ上での実現を大前提としなければならない。このコーナーで紹介する思考法は、将来のコンピュータ上での実現を考えてある。ただし、最初のうちは、思考法の本体部分だけを解説するつもりだ。

自分が実際に使っている思考法を紹介する

 本コーナーで提供する思考法は、現在まで自分が使ってきた技法であり、今後も使い続けるつもりのものだ。本ウェブページや雑誌記事などで書いている内容は、その思考法を用いて求めた結果といえる。本コーナー以外では、その思考法を使って求めた内容を紹介しているが、本コーナーは思考法自体を解説する。実際に使っている技法だけに、使っている本人が自分の頭の中を分析することで、提供が可能である。
 自分が現在使っている思考法は何種類もあって、それぞれがまだ独立している状態だ。それらを体系的に整理統合し、目的に応じて使い分けできる形で公開したいと考えている。体系化はこれから始めるので、方法の公開までにはもう少し時間がかかるだろう。

(1998年4月22日)


下の飾り