「総合目次」にもどる |  「演奏会報告の目次」にもどる |  最終修正:2002-02-05(火)

2002年2月3日(日) 渋谷 ON AIR WEST 【ビデオ「見知らぬ世界」発売記念ツアー】
17:00開場 18:00開演

【レポート】

この日の東京は予報通り雨が降り、寒さのためいつもの休日より人出が少な目な渋谷の街を横切って会場入りしました。
しかし人間椅子ファンにはこの寒気はあまり影響しないようで、今回は2階席も開放して、すでにフロアは半分以上埋まっている状態です。前回11月のライヴは、平日かつ「特撮」とバッティングしていたためかお客さんは少な目だったのですが、今回は最終的には300人前後入っていたのではないでしょうか。男女比率も6:4くらいで男子率高し。休みの日は出てきやすいのか? 開演も1時間早いので、翌日仕事の方もラクラクです。
物販コーナーは、これまでのアルバムやビデオに加え、ビデオ『見知らぬ世界』ももちろん並んでいます。
開演待ち音楽はイエスの古い曲「I've Seen All Good People」などが静かに流れています。プログレだと待ち時間があまり気にならないのは私だけでしょうか?

イエス「South Side of the Sky」(『こわれもの』に入ってる曲)がフェードアウトするのとシンクロして客席が暗転。 今年の入場テーマ「木曜スペシャル」が始まってしばしの間があった後、メンバーの入場。磁石に吸引される砂鉄のごとく観客が前に移動し、目の前に広大な空間が空いたので、私もそそくさと前に移動してみました。フロアのちょうど真ん中、8列目くらい?
楽器チェックが終わり、鈴木氏のベースの重いリズムから始まる開幕曲は、1stアルバムの1曲目「鉄格子黙示録」久々のインスト。続いて2ndアルバム1曲目「爆弾行進曲」と、懐かしい選曲が続きます。間奏部の掛け声では、観客の呼吸もバッチリ。

最近のステージでは鈴木氏の衣装を見るのが楽しみになってますが、今夜は紺(黒?)の和服で、胸の左右に2匹の白蜘蛛が描かれているというもの。背中にも何匹かいて、昆虫好き(クモは昆虫じゃないですが)の鈴木氏に似合った服装です。
和嶋氏は前回ツアーに引き続き宇宙服で、頭にはダースベイダー型ヘルメット、背には通信機も背負っています。ギターはお馴染みのバット2です。 後藤氏も前回ツアーの兵士の恰好ですが、シャツは湾岸戦争頃の米軍の迷彩(チョコチップパターンというらしい)柄のTシャツになっています。

まだまだアルバム1曲目攻撃は続きます。3曲目も『二十世紀葬送曲』から「幽霊列車」。発売記念ライヴということで、ビデオ『見知らぬ世界』収録の楽曲を持ってきたようです。 発車ベルを模したギター、機関車のリズムを刻むベースに加えて、レール通過音を模したドラムスのタムが目新しかったです。

「本日もお足元のお悪い中…」と鈴木氏の挨拶から最初のMCとなります。 和嶋氏の宇宙服姿が拝めるのは、今回のライヴで最後(「に、したい。暑いんだよね」)ということで、特別にヘルメットにも金色テープを貼りバージョンアップしたとのこと。 鈴木氏の衣装も、和服の柄を自分で描いているそうで「最近、和嶋くんの言う自作の楽しさに目覚めてきました」とのこと。今後のライヴの衣装にも期待が持てますね。

次は、そもそもこの曲をやるために宇宙服を着たという「侵略者 インベーダー。間奏部ではテルミンが唸ります。和嶋氏は宇宙服での最後の演奏にエキサイトし過ぎたか、曲の途中で頭からヘルメットが落ちてました。以後の演奏は無帽のまま続行。
再び初期アルバムの楽曲から「盗人讃歌」を演奏します。節分にちなんだ“鬼”の唄か? 鈴木氏はエフェクターを操りつつ、朗々と詠いあげます。ハードな演奏から一転して、ブルース的な物悲しい雰囲気を堪能します。10年前のアルバム・バージョンより老練さを増した演奏でした。

会場は冬場ながら汗ばむほどの熱気となってきており、次のMCで和嶋氏も無線機をはずしていました。
「自然児」のモデルとなった和嶋氏の叔父上の話。和嶋氏の家系が藤原氏の子孫であるという説を信じているそうで、年賀状も<和嶋 藤原 慎治>とミドルネーム付きの宛名で送られてきた、とのこと。鈴木氏は、奥州藤原氏 → 平泉の金堂 → 今日の金色のヘルメット、と和嶋氏との類縁性を指摘。
ということで次は、「太陽にほえろ!」的イントロからキング・クリムゾン風リフへと続く「自然児」を演奏。アルバムでは正直言ってあまり印象に残らないのですが、ライヴだと全く様相が変わり、自然児の持つ根源的なパワーを感じさせてくれます。
曲の合間に後藤氏がマイクを手前に持ってきて、次の曲は「都会の童話」。ライヴの後藤氏のプレイにはいつも目を見張らされるものがありますが、特にこの楽曲では、ドラムスにボーカルに楽曲に、後藤氏の持ち味が十二分に発揮された演奏でした。かっちょいい!

ここでMCとなり、ビデオ『見知らぬ世界』の話題。 同時収録されている田舎館村ライヴの映像については、公民館でのライヴということもあり、カメラアイ、歌謡ショーのようなライティングなど、ある意味「70年代風」(和嶋氏談)な内容とのことで、思わず私も首肯してしまったことでした。なお、主催のFM局JAIGO WAVEの「じゃいご」とは「田舎者」の意とのこと。
そして曲は、この時のライヴで演奏しながらも今回のビデオに収録できなかった「君忘れじの田舎館村」。アイアン・バタフライ「ガダ・ダ・ヴィダ」に和嶋氏のオリジナル歌詞が乗るという「針の山」方式の曲ですが、津軽弁の歌詞のため、残念ながら私には聴き取りできませんでした…。誰か教えてちょ。

前の曲から間を入れず後藤氏のドラムソロが始まり、その隙に鈴木氏はベースを1音半下げのミラージュへ交換。和嶋氏のギターはそのままでギターソロへなだれ込みます。この楽器の組み合わせで演奏される曲といえば、青森シリーズ「どだればち」です。ライヴでの演奏頻度は高くないかもしれませんが、個人的には毎回演奏されても飽きない楽曲。ギターソロでは、津軽三味線奏法を駆使する和嶋氏の神速の左手に注目が集まります。

次のMCで通常チューニングのイーグルに持ち直した鈴木氏が、人間椅子の前身バンド、7人組編成の「死ね死ね団」時代の元メンバーが弘前から来-ON AIR WESTされているので、今日は特に古い曲をやると宣言。
鈴木氏の「花嫁人形」をBGMに、和嶋氏の前説の朗読から「わたしのややこ」を演奏します。当時のレパートリーでもあったこの曲は、1stアルバム『人間失格』レコーディング時に録音はされたものの、歌詞の問題で「闇から闇に葬られた」楽曲とのことです。
私がこの曲を聴くのは、1990年日本青年館の【霜月LIVE】以来2回目です。前回はアンコール曲だったせいか、今回の方が落ち着いてじっくりと演奏されていたような気がします。以前「辻斬小唄無宿編」に似た曲、と書いたような覚えがありますが、今聴くと似てるのはリズムだけだということがわかりました…。
続いてシンプルながら深みを感じさせる「天体嗜好症」へ。中間部の展開は、スライドギターのソロから、テルミンを駆使した宇宙的な広がりを見せます。 このあとギター、ベースが舞台袖に引っ込み、後藤氏ドラムソロのコーナーへ。まさに鬼神のごとき怒涛のドラムソロ、潜在パワー炸裂、締め括りは銅鑼3発。再び鈴木氏、和嶋氏が合流し、最後の1コーラスで完奏となりました。

次のMCで鈴木氏はミラージュ、和嶋氏はグレコに持ち変えて、1音半下げ曲の準備。 和嶋氏は現在の暑い宇宙服に懲りて、「次回からはもっとスポーティな恰好に」と人間椅子のメンバーらしからぬ発言も。 ステージ衣装の話から、「見知らぬ世界」プロモーション・ビデオ撮影時の話題へ移り、3人の服装のテーマが各々バラバラ(山伏・宇宙人・兵士)で、アルバムジャケット写真撮影などでまったく統一感がなく困惑してしまったとのこと。しかし富士山麓の樹海で撮ったビデオでは意外なほど調和しており「すべてを受け入れてくれる大自然は偉大」という結論に達していました。

さて、曲の頭だしは和嶋氏のギターからですが、度忘れのためもう一度やり直し。後藤氏が銅鑼で警鐘を鳴らします。気を取り直して「見知らぬ世界」を演奏。ローチューニング曲ながら光明を感じる、人間椅子の新しい局面を垣間見るような曲です。
続いてヘビーな「莫迦酔狂ひ」。ドラムスはアルバムとリズムパターンを多少変えていた部分がありましたが、ちょっと乗りにくかったかな?

次のMCでも衣装の話題は続きます。鈴木氏は当初“死神”の恰好を予定していたそうですが、ただの「鎌を持ったねずみ男」になってしまうことに気づき、山伏に変更したとのこと。 その鈴木氏の「和嶋くんのすばらしいギターソロを聴けぇ…!」という前説で「死神の饗宴」。雑誌インタビュー記事によれば「見知らぬ世界」と同じテーマの歌詞ということですが、曲調はまったく対照的な、“陽”と“陰”という雰囲気をみごとに表現してます。
さらに日曜のライヴには欠かせない「暗い日曜日」。潤んだようなギターソロが、今日の天候にピッタリです。
きょうの重暗曲コーナーは、4曲それぞれが際立って聞こえました。

ギターをエピフォン・モダーン、ベースをイーグルに持ち替えます。
節分にちなんで、福は内…ということで次の曲は「幸福のねじ」。観客も、いま一歩前進、ギターのイントロから観客のジャンプで床が揺れ始めます。 和嶋氏は前の「暗い日曜日」に続いての熱唱のためか、ボーカルのキーが高い部分の声が出なくなることもしばしば。無事完奏してくれ…!と祈るような気持ちで見ていました。
続いてはこれもストレートなロック、「青森ロック大臣」。久しぶりに東京ライヴで聴いたような気がするので、後で調べてみたらば、96年3月26日の渋谷エッグマン以来でした。サイト名を取っているからではないですが、演奏してくれるとなんとなく嬉しい曲です。
最後の曲は、終盤の曲として定着した「地獄」。この唄にも節分らしく地獄の鬼が出てきます。もちろんこの曲でも跳梁する観客で床が揺れっぱなし。

ライヴ後のスケジュールは、イベント2本出演、その後レコーディング予定?、次のライヴは秋か冬(イベント除く)とのアナウンスで、メンバーはいったん楽屋へ退場します。

アンコールでは、和嶋氏はバット2を、鈴木氏はこのところアンコール用と化している黒いリッケンバッカーを手にします。後藤氏はTシャツをモスグリーンのランニングに着替えています。 アンコール1曲目は、アルバム・ジャケットなどで縁の深い大越孝太郎氏の新刊『天国に結ぶ戀』発刊記念として「天国に結ぶ恋」。 この曲でもエキサイトし過ぎたか、和嶋氏のバット2の弦が切れたため、MC時に急遽モダーンに持ち替えます。鈴木氏に「以前和嶋くんは『弦を切る奴はヘタクソだ』と言っていましたが…」と指摘され、「自分に返ってきました」と苦笑いする和嶋氏。
本日の締めくくりも、恒例の「地獄風景」の三三七拍子で。
最後に「怒涛マスヒロ!」「蜘蛛男、鈴木研一!」などのメンバー紹介を終えて、メンバーは舞台袖へと消えていきます。

ここで終演を告げるBGM、マイケル・シェンカー・グループ「アームド・アンド・レディ」(懐かしいな…)がかかり、場内が明るくなります。しかし帰り支度を始める人たちを尻目に、アンコール1回だけでは満足できない観客は、「アームド〜」のリズムに合わせて手拍子を続けます。
この執拗な手拍子に根負けしたか、再び場内が暗転し、メンバーが2度目のアンコールに登場してくれました。 鈴木氏によれば、今年からアンコールを1回にしよう計画が、どの会場でも失敗した…とのこと。
ということで、アンコール2回目は「ダイナマイト」。予定していなかった演目にもかかわらず、きっちりと演奏するのはさすがプロフェッショナルです。
長い握手タイムの後、ようやくメンバーが退場し、再度アタマから「アームド・アンド・レディ」が流れはじめ、観客は満足した表情で速やかに家路へとつくのでした。 後で数えてみると、21曲も演奏してたのですね。たくさんの楽曲が聴けて得したような気分です。


総評ですが、21曲もあった割には、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい、非常に短く感じたライヴでした。
セットリストは、ビデオの発売記念ライヴを意識したのか、収録されている田舎館村ライヴ(→セットリスト)を基調としていたようで、安心して聴けた感じです。 冒頭の「鉄格子黙示録」や「わたしのややこ」など最初期の曲も交え、温故知新、10年を超える活動歴と豊富な楽曲群を再認識しました。
ただ、終盤の演奏曲目が固定化しているように思います。この辺りの構成が変わると、ライヴの印象も、かなり変わるのではないでしょうか。

サウンド面では、前回ツアーから導入された和嶋氏のギター“エピフォン・モダーン”は、今回の使用率はあまり高くないものの、弾き易さが求められるライヴ終盤の速い曲で起用されたことを考えると、今後も使い続けられそうな感じですね。音のキャラクターも、やや円いですが、SG寄りな感じで違和感はないです。
音響・照明は、すでに実績のあるON AIR WESTなので申し分のないレベルに達しているのではないかと思います。個人的には、前半ボーカルとギターの音量が若干小さかったかな?と思いましたが、客席の位置によっても変わりそうだし、なんとも判断しかねるところです。

余談ですが、今回が最後らしい和嶋氏の宇宙服、同じような宇宙服でライヴに臨むインベーダー(ウンモ星人)観客が、一人くらい現われないかと期待していたのですが、見掛けませんでした。ちょっと残念です。

新譜『見知らぬ世界』では冒険した感のあった人間椅子ですが、ビデオも売れてるみたいですし(2月5日現在、amazonでは在庫切れになってたです)、次回作レコーディングの話もあるようなので、ひとまず安心です。新譜の前にもう1回くらいワンマン・ライヴを見たいですね。
以上

【チケット】

チケット

【セットリスト】

SEQ. 曲名 使用楽器
ギター ベース
<オープニング 矢追純一UFOスペシャル>
鉄格子黙示録 バット2 イーグル
爆弾行進曲
幽霊列車
<MC>
侵略者 インベーダー
盗人讃歌
<MC>
自然児
都会の童話
<MC>
「君忘れじの田舎館村」
(和嶋氏のオリジナル歌詞で演奏、アイアン・バタフライ「ガダ・ダ・ヴィダ」のカヴァー)
ドラムソロ〜どだればち ミラージュ
<MC> イーグル
10 和嶋氏の朗読〜わたしのややこ
11 天体嗜好症〜ドラムソロ〜天体嗜好症
<MC> グレコ ミラージュ
12 見知らぬ世界
13 莫迦酔狂ひ
<MC>
14 死神の饗宴
15 暗い日曜日
<MC> エピフォン・モダーン イーグル
16 幸福のねじ
17 青森ロック大臣
18 地獄
<アンコール1> バット2 リッケンバッカー
19 天国に結ぶ恋
20 地獄風景 エピフォン・モダーン
<アンコール2>
21 ダイナマイト
<備考>
 ビデオ『見知らぬ世界』収録曲


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