ポッタラ

スラヴェシ(セレベス)島の南に、ポッタラという農夫が住んでいた。ポッタラは村長から借金をしたが、期限が来ても返すあてがなかったので、もう少し期限を延ばしてくれるよう頼んだ。しかし、2回目の期限が来ても、ポッタラはまだ金を返すことができなかった。

今日は村長が取り立てに来るという日の朝早く、ポッタラは川で魚を捕まえ、家に帰って鍋で煮た。そして、魚を取り出すと代わりに斧を入れておいた。

村長がやってくると、ポッタラはその魚のスープを出した。「とてもおいしいじゃないか。どうやって作ったんだ」と尋ねられたポッタラは、「あの斧を入れるとおいしいスープができるんです」と答えた。そこで村長は、借金の代わりにその「魔法の斧」を持っていくことにした。しかし、家に帰って斧を煮ても、いっこうにおいしいスープはできなかった。

村長はポッタラに斧を返し、金を返すよう迫った。ポッタラは村長に表に出てくれるよう頼み、そこで筒笛を取り出した。ポッタラがそれを吹いてから家に戻ってみると、食卓の上にアヒルが乗っていた。てっきりアヒルを連れてきてくれる魔法の笛だと思った村長は、金の代わりにそれをもらって帰ったが、もちろん、村長の家の食卓にアヒルが現われることはなかった。

村長は再びポッタラの家にやってきた。ポッタラは今度は犬のしっぽに銀貨を隠しておいた。犬がしっぽを振ると、まるでそこから生まれたかのように銀貨が現われた。村長は今度も犬を持って帰り、またまた失望させられることとなった。


怒った村長は、部下をポッタラのところへ送り、彼を袋詰めにして川に放り込ませた。ポッタラは隠し持っていたナイフで袋をやぶり、かろうじて逃げ出した。そして、しばらく森に隠れていたあと、再び村へ戻っていった。ポッタラを見た村長は驚き、いったいどこへ行っていたのかと尋ねた。するとポッタラは、海の底に住む一族が救ってくれて、彼らのすばらしい王国に招いてくれたと言った。自分もその王国を訪ねてみたいものだと思った村長は、ポッタラに袋詰めにして川に投げ入れてくれるよう頼んだ。こうしてポッタラは、欲深で愚かな村長を葬ることに成功したのである。

マリオ・ルスタン

海の底の王国
「海の底の王国」と言えば浦島太郎の物語が有名ですが、これは元々海幸彦山幸彦の神話から来ているといわれています。そして、この海幸彦山幸彦の伝承は、インドネシアから伝わったのではないかとされています。つまり、海の底の物語はインドネシアが元祖なのでしょうか。このポッタラの物語のほかにも、「南海の女王」という海の底の王国にかかわるお話があります。




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