ニ・ロロ・キドゥル

以前に "南海の女王の話を簡単にしましたが、これはその詳しいストーリーです。


パジャジャランは、1333年から1630年まで西ジャワにあった王国です。その後、中央ジャワのイスラム国マタラムに滅ぼされました。

パジャジャランの最も偉大な王は、シリワンギ王です。彼のハーレムにはたいそう美しい娘がいて、王との間に一人の子どもをもうけました。その女の子はデウィ・カディタという名で、ハーレムの女性たちはみな、デウィとその母親の美しさをねたむようになりました。そして、その母娘を陥れる計画を練ったのです。

ハーレムの女性たちは黒魔術を使って、デウィとその母親の姿を醜く、汚いものにしました。シリワンギ王は母娘の姿を非常に不吉なものと考え、2人を宮殿から追放してしまいました。

2人は国中をさまよい、やがて母親は死んでしまいました。悲しみながらも歩き続けたデウィは、やがて南海(インド洋)の岸辺にたどり着きました。

大きな岩に座っていたデウィは眠り込んでしまい、とある夢を見ました。それは、海に飛び込めば自分にかけられた呪いが解けるというものです。目が覚めたとたん、彼女は海に飛び込み、以前同様の美しい姿となって水から上がってきました。しかし、彼女は自分がもはや人間ではないということに気が付きました。姿は同じでも、超自然の霊のような存在となっていたのです。

それ以来、彼女はジャワ島の南岸のすべての生き物を支配するようになり、「ニ・ロロ・キドゥル」(南海の女王)として知られるようになりました。父親に復讐するため、彼女は敵国マタラムの代々の王の第一夫人になったということです。

ニ・ロロ・キドゥルはジャワへ抜けるため、中央ジャワからインド洋に流れる河ベンガワン・ソロを使うと言われています。

また、緑の服を着た男が海岸を歩くと、彼女の護衛または夫になるために、彼女にとらえられて失踪したり死んだりしてしまうとされています。

これは、ジャワの南海では海底に渓谷があり、海上のものを強く引き込む作用があることから来る伝説だとされています。また、心理学的に考えると、ニ・ロロ・キドゥルは男に裏切られた結果、あらゆる男を攻撃するようになる女性の象徴だとも考えられますが、この考え方は、ジャワの古い世代にはなかなか受け入れられないようです。

マリオ・ルスタン






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