桑畑種まき桜の雪花


冬の桜に命の神髄を見た
  

今年も種まき桜に見事な雪の花が咲いた。新春雲間から、朝日が昇って来ると、雪の花は、きらきらと銀色に輝きながら、ある物は、枝に残り、又ある物は風に乗って本物の花のようにはらはらと舞い下りていった。じっとこの美しい光景を凝視していると、不思議な感覚に襲われた。何か太い枝を雪が覆って、これが大地から天に伸びた地球の血管のように見えた。まさに地球は、天にその生命を糸を繋げようとしているのか・・・。そんなことを漠然と思った。この種まき桜の樹齢は、既に400年を越えているが、更に400年の寿命と樹木医は言った。もう既に、長寿と言われる人間の四倍の生を生きたことになる。とするとこの桜は、翁桜でもなければ姥桜でもない。脈々と命の限り、その枝を天に伸ばそうとする壮年の桜だ。考えてみれば、この桜は、今まさに生まれたばかりの赤ん坊が、子をなし、さらに孫が生まれ、曾孫が生まれても、永永として生き、花を咲かせ続けるのである。400年後、どんなことを思いながら、この桜を、私たちの子孫たる人間は、凝視するであろう。この時、日本は地球はどうなっているだろう。核戦争や小惑星の衝突があって、恐竜のように滅びていないともかぎらない。たとえどんなことがあろうとも、この種まき桜は、己が桜であることを常に思い、その命の尽きるまで、花として美しくあろうと生きるのであろうか。この種まき桜が美しいのは、己の根源の使命を忘れないためかもしれない。

新春の朝、桑畑の種まき桜が朝日に映えて凛と立っていた


一生を花とし生きる覚悟もて雪も櫻と見せし老櫻(おひはな)

2003.2.10
 

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