養生訓を読む

ー養生は健康の貯蓄ー


 
周囲で健康を害している人が多い。「なぜだろう」と、ふとその人物の日常のことを思った。

その人物は、普段から、朝食をキチンと取り、水分を補給し、栄養のバランスを考えた生活をしていただろうか。いやそうではない。どう見ても、身体に負荷がかかり過ぎる生活をしているように見える・・・。貝原益軒の「養生訓」を引くまでもなく、不摂生の蓄積は、必ず悪い結果として、自分の身体に変調をもたらす。普段からの養生は、目には見えないが、健康の貯金のようなものなのだ。 

「延年」という言葉がある。「延年の舞」の延年だ。「年を延ばす」と書く。この深い意味は、天寿を全うするという祈りのことである。人間は、本来130歳までの寿命があるという説がある。しかし広い世界で、そこまで生きることのできる人は、まずいない。理由は、様々だ。戦争もあれば、食糧事情もある。また過度の飲酒や不摂生もあるだろう。文明社会は、この長寿を、医学の力で無理矢理に叶えようとしているようにも見える。現在世界の中で、日本は、男女ともに確か、世界一の長寿国となった。しかしお年寄りが、幸せだという話は聞いたことがない。最近では、唯一の老後の頼りだった年金も破綻の危機に瀕しており、支給額はどんどんと減らされる一方だ。 

いくら長生きしたとて、不健康となって、病院でチューブを付けられた状態で、ただ生きているだけならば、何の命だろう。健康な状態でなければ、長生きそのものに意味はない。その為にも、普段からの養生が大切である。

江戸の儒学者貝原益軒は、その著「養生訓」の中で、このように述べている。 

「養生のコツは、まず自分をそこなうものを遠ざけるべきだ。自分をそこなうものとは、内欲と外邪というものである。内欲とは、第一にもっと食べたいという欲。第二に好色の欲。第三に眠りたいとの欲、第四にしゃべりたいとの欲である。その他、喜、怒、憂、思、悲、恐、驚の七つの心に沸く欲をいうのである。外邪とは、自然の四つの気候の変化のことで、風雨と寒さと暑さと湿気が人間にもたらす害のことを指す。人間は、この内から沸いてくる欲を辛抱して、自然の変化に対応できれば、簡単に健康をそこなうことはなく、病にもかからず天寿を全うすることができるというものだ。(中略)人間の命というものは、天より授かったものだけれども、キチンと養生すればその命は長く。養生しなければその命は短かい。ただそれだけのことだ。だから長命で一生を過ごすも、短命な一生を過ごすも、ただただ普段の自らの養生によるのである。」(現代語訳佐藤) 

要は自分自身の心がけ次第で、天寿は全う出来るということになる。 

  養生を貯蓄と思へ年老いて寄る年波の波避ける杖 
 

佐藤

 


2004.6.16

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