ひとつの癌細胞として自覚


人間は地球という母なる星に巣くった癌細胞かもしれない。いずれこのままでは、人間の文明は、外からの圧力によってではなく、人間の内にあるエゴというものの為に滅びてしまうだろう。恐竜という種は、数億年の長きに渡りこの地球全体にひろがり、たった一個の惑星が衝突したことで滅んだと言われる。歴史はきっと同じことを好まないのだ。きっと人間は、その内部にあるエゴという怪物によって滅ぶのだ。本気でそんなことを思ってしまう。

およそこの世に存在するもので、永遠なるものはない。地球という母なる星が生み出した長男が恐竜だったとすれば、人間は出来の悪い次男坊そのものだ。結局長男がふとした偶然で亡くなったことで、実家を継ぐ羽目になった。ところがこの次男坊は、性悪な自信家で、科学とやらを新興宗教の神のごとく信奉し、この神の前では、未来永劫の反映を自ずと作り出せると錯覚をした。傲慢なこの次男坊は、母の家を好き勝手に壊しては、これこそ科学の勝利、叡智の結晶と自画自賛の挙げ句、次々と起こる災害の多くが、実は自分たちの科学文明の進歩とがもたらす人災であると信じる勇気もない。

所詮、何もないところから生まれた自分に過ぎなかったのに、自分こそが母なる星を支配できる正統な継承者であると増長した。母なる地球は、何も言わずに、この次男坊の好きにさせた。きっといつかは改心して、この星を調和に満ち溢れた平和の園にしてくれると信じていたのだ。ところがこのわがまま者は、ますます自分が勝手に作り出したまがい物の神に凝り固まって、母なる星を壊し続けた。

結局、極の氷が解けて、自分の足もとまで、水が迫って来ているのに、二酸化炭素排出を止めず、既に人間の内の、その罪のほとんどない弱い者から、次々と命の危険にさらされはじめている。それでも、なんだかんだと、排出ガス規制の条約にケチを付け、自国の利益が損なわれると叫ぶ大国もある。人間この愚かな親不孝の種のひとりとして、誰もがこの地球の中に巣くった癌細胞の一片として、我々はすべて親不孝という原罪を背負って生きている罪人である。あなたはこのことに気づいているだろうか。佐藤

 


2002.9.4
 

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