ここに三枚の写真がある。いずれも私がこの師走に須磨で撮影したものだ。
一枚は、平の敦盛が埋葬されてある須磨寺の赤い赤い紅葉である。
冬紅葉散らぬなりけり物部の心映してただ真紅(くれない)に
二枚目は、新しい明石海峡大橋からみた播磨灘である。信じられないような赤い夕日に、私は思わず息をしばらく止め、車中から夢中で撮影した。その時の一枚である。 屋島に向かう海は、平日は穏やかな海ではあるが、時として嵐の海と化すことがある。その中を九郎判官源義経は、決死の覚悟で船出したのである。
この海を越えて渡りて兵(つわもの)は軍(いくさ)の神となりにけるかも
三枚目である。吊り橋で世界最長と言われる明石海峡大橋を渡り、淡路島に着く。夕暮れが迫っていた。東の空をみれば、須磨の沖に一三夜の月が、昇って輝きを増していた。源平合戦で激しく戦った多くの兵たちが、この海で尊き命を落とした。そのすべての出来事を、月は見ていたはずだ。月は秋と言うが、このように冴えた月をみると、冬の月もいいなと思った。無性に月の光が悲しく思えた。
月冴えて播磨の海に御坐(おわ)します滅びし亡者(もものふ)弔うように |
2001.1.4