義経伝説ホームへ

義経エッセイINDEXへ

ハンセン病控訴断念の英断に賛辞を 

−政治家不信解消の兆し−


 
国民を助けての政府である。弱い者を助けてこその正義である。しかしこれまで政治家は必ずしも弱い者の味方ではなかった。でも今回だけは、小泉政権の決断に黙って拍手を送りたい。それはもちろん昨日、ハンセン病訴訟事件の控訴断念を小泉首相が英断したことだ。政治に対して、国民の多くが白けた態度で、横目で見ているのは、どうせ政治家が自分の方など向いていない。と政治不信を募らせているためだ。

とするならば、国民の政治不信を解消する方法ははっきりしている。政治家が、国民の声に素直に耳を傾け、かつそれを政策として実行してみせることだ。大事なことは、政治家としてではなく、まず人間として、国民に正直に接することだ。

ハンセン病に長い間苦しんできたハンセン病の原告の人々とその支援する人々は、国会と首相官邸に連日訪れて、「首相と直接話がしたい」「政府はどうか控訴はしないでください」と声をからして訴えてきた。しかし首相は、昨日は、原告の前に姿を現すことはなく、「お会いする時期も含めて真剣に考えている」という紋切り型の受け答えをマスコミにしていて、これはいつもの政治家の曖昧なごまかしの発言のようにも受けと入れて、やはり「小泉政権も駄目なのか・・・」と思い始めた矢先だった。

一転して、今日の控訴断念となった。そのニュースを聞いた瞬間、胸がすーっとした。政治がこのような裁判において、このような形で、弱者の声に素直に耳を傾けたことはなかったのではないか。その意味でも、この小泉政権の決断は、国民の中に根強くある政治不信を払拭する第一歩になる可能性がある。

長い間、ハンセン病に苦しみながら、国家による隔離政策と社会的差別を受けてこられた皆さまの、心情を考えるとき、つい最近まで、事の真相を知らなかった自分をただただ恥じ入るばかりだ。まだまだこれと同じような社会的差別に遭い、声も出せずにいる社会的な弱者がまだまだ居られるかもしれない。今回の控訴断念を契機として、そのような社会的差別が、ひとつひとつ氷が溶けるように解消していくことを期待したい。

最期に原告の皆さまに心からの祝福を申し上げたい。また小泉さんには「良い徳を積まれましたね」と賛辞を送りたい。佐藤
 

 


2001.5.23

義経伝説ホームへ

義経エッセイINDEXへ