サーズ・パニックを起こさないために


サーズ(重症急性呼吸器症候群=Severe Acute Respiratory Syndrome:SARSと略)という病気が世界中を得体の知れない恐怖に落とし込みつつある。

2003年4月21日、世界保健機関(WHO)は、サーズの患者数が、世界一八カ国に及び、感謝総数3861人、死者217人と発表した。サーズという病気は、初めは、風邪に似た症状を示し、潜伏期間は3日から7日程度で、高熱、頭痛、喉の炎症などの症状が現れる。次第に症状は、悪化の一途を辿り、咳がひどくなり、肺炎を起こし、最後には患者に呼吸不全に陥らせて、死に至らしめるという恐ろしい病だ。

このサーズが、アジアを中心に、世界中に拡散するのではないかと言われて不安が世界中に拡散し始めている。震源地は、香港、中国、ベトナム、シンガポールなどだ。中国では、この発表に虚偽があったとして、市長や保健相が更迭される騒ぎとなった。中国の国際的信用は、サーズによって揺らぎ始めていると言っても過言ではない。シンガポールのゴー・チョクトン首相は、「建国以来最大の危機」と、このサーズ問題が、今後のシンガポール経済に深刻な影響をもたらす可能性を否定しなかった。これまでの例では、香港のホテルのエレベーターに感染したことなどが報道されているから、このウイルスは、極小のウイルスで、空気感染するものと見られ、その被害の拡散が心配されている。

今やサーズの不安は、アジアを越えて、世界中に広がりつつある。最近では、ローリングストーンズや、サンタナと言った大物ミュージシャンのコンサートが相次いで延期となった。サーズによるアジア経済の急降下も叫ばれる始末となっている。

そんな中で、4月16日、世界保険機関(WHO)は、サーズの原因が新型のコロナウイルスによってもたらされたことを、各国の研究機関の研究成果を元にして発表した。これまでコロナウイルス(旧型)は、人間には寄生していなかったタイプのウイルスとみなされていた。それが何かのきっかけで、自分の形を変化させることによって、人間に猛威をふるい始めたことになる。

コロナウイルスは、動物の呼吸器や消化器に感染(かんせん)しやすいウイルスと言われている。タイプは4つあり、ひとつの遺伝子を膜(まく)が包み、表面に突起(とっき)が多数あって太陽のコロナに似ていることから命名されたものである。今回、人間には「ヒト呼吸器コロナウイルス」が感染し、「鼻かぜ」のような症状を引き起こしたものと考えられている。

今の所、予防に関しては、このウイルスが存在するような箇所には、近づかないことが一番のようだが、世界経済が、現在のように、緊密にネットワーク化した現状では、それもなかなか難しい。冒頭で述べたように世界経済の阻害要因になることも十分に考えられ、一日も早い、特効薬の開発とワクチンなど予防法の確立が待たれる。

幸い、世界保健機関が、サーズの警戒情報を出してから、各国の研究機関の、対応は素早かった。ほぼ一ヶ月でサーズの病原体が特定されたことは朗報だ。これはやはりやはり、新しく発表されるサーズ情報を共有化していることの成果である。今後、予想以上のスピードで、この新しい病に対処できる可能性がある。

一番問題となるのは、もう中国で始まっているようだが、効果も定かではない漢方薬が、人の噂によって、さも特効薬のようにして、売れたりする流言飛語の類だ。世界に於いて、サーズによって、新たな差別が生み出されないとも限らない。妙なこのような噂に流されないようにしたい。

そこで、とかく後手に回りがちで評判の悪い日本の厚生省労働だが、今回こそは、正しいサーズ情報を日々、きちんと提示できる体制を整えて貰いたいものだ。佐藤


サーズ関連情報

厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/03/tp0318-1.html

世界保健機関(WHO)
http://www.who.int/en/

http://www.who.int/csr/sarscountry/2003_04_21/en/

 

 


20034.22
 

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