高 齢者時代を敵にまわした小泉さん 

−中曽根氏・宮沢氏への小泉首相の非礼を問う−

小泉首相が23日に中曽根康弘氏(85)と宮沢喜一(84)氏に、総選挙に出馬辞退を求めたことについて、一言申し上げ たい。

はじめに断って置きたいのだが、別に私は、中曽根さんにも宮沢さんにも特別の利害を持つ者ではない。いやむしろ中曽根さんのいささか国家主義的な思考には 辟易した思い出がある。また宮沢さんは、現在の日本経済の低迷を生んだ当事者の一人であるとすら思う。

ただ、今回の自民党の比例単独73歳定年という基準をもって、小泉さんが、お二人の自宅を訪れて、立候補の辞退を要請に行くというこの無礼な態度は、どう しても納得がいかないのである。世代交代という考えは、いいだろう。国会議員の中には、あの人が何でまだいるの。と言いたくなる人も確かにいる。しかし高 齢化社会の到来が叫ばれ、年金問題に絡んで、一般企業の定年を引き上げろ。ということが論議されている最中である。

その中であらゆる議員を73歳で退職させるというのはいかがなものだろう。今や老いという問題の価値観が変わりつつある。今年の5月、70歳でエベレスト 最高齢登頂に成功した三浦雄一郎という世界的な冒険家がいる。氏には白寿(99歳)になる敬三氏という父君がいるが、今年の二月には父子孫の三代が揃っ て、ヨーロッパの名峰モンブランからシュプールを描いたことも記憶に新しい。

政治家にとって老いとは何であるか。それは精神的に老け込むことである。年齢ではない。その意味では、若いくせに選挙のことばかりが気になるのか、党派の 論理や派閥の力学でしか動かない若いくせにやけに老いた印象の政治家の何と多いことか。

中曽根さんと宮沢さんの場合は、そんなみみっちいことではテコでも動かない政治家だ。彼らは自分の信念で動いている。小泉首相のブッシュ政権一辺倒の政治 姿勢にも、辛口の批評をしていることは周知の事実だ。要するにこのお二人より前に、辞して頂かなければならない政治家はゴマンといる。

聞けば、中曽根氏は、「断じて了承できない。私は議員として最高の使命感と一途な思いでやってきた。突然こういう爆弾を投げるのは政治的なテロだ」と断固 拒否されたという。このような時代にあって好漢中曽根氏らしい痛快な言葉である。一方宮沢氏は、「総理・総裁に恥をかかせられない。党の若返りに貢献する ことが大事だ。自発的に立候補を辞退したい」と、これまた氏らしい言い回しで辞退を表明された。

私は、「比例単独73歳定年」に例外を設けず、という小泉さんの主張は、結果として、自民党が全国の高齢者を敵に回すことになるだろうと思う。選挙対策 で、少しでも若い民主党に対抗しようとしてのパフォーマンスが逆に勇み足となった形だ。小泉さんは、今すぐにでも、もう一度、足を運んで、平身低頭、お二 人にその非礼と軽挙を詫びるべきだと思う。そこまでの器量がお有りであればの話だが・・・。高齢政治家の処遇というたったひとつの勇み足が、蟻の一穴と なって、大いなる堤が崩れることもある。佐藤

 


2003.10.23
 

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