sony盛田を評価するアメリカ

日本文化と和について


何故ソニーの盛田の追悼する雑誌が少ないのだろう?と、不思議に思いながら、このところずっとそのことが心のどこかで引っかかっていた。

それにしても冷たい。何故こんなに日本人は、同じ日本人の天才経営者に対して冷たい態度しか取れないのだろう。流行でもタレントでも、日本では長続きするものがない。昨日は良いところまで来たかと思うと、今日は忘れ去られ終わった情報として捨てられてしまう。全てが一瞬の刹那(せつな)でお仕舞いとなる妙な国だ。色々考えたが、結論で言えば、「盛田は、自分の後継者を育て、自分が必要ないようなソニーを作り上げた。それでどの出版社も取り上げないのだろう」と、言うことになった。
 

そんな矢先に、アメリカの週刊誌「ニューズ・ウイーク」が10月20日号で、「ソニーの遺産」と題した盛田の特集をしたというので、早速買ってみた。実に素晴らしい内容で盛田への愛情に溢れた大特集であった。まず丁寧に盛田の経歴と業績に対する評価が書いてある。次に現在のソニーの出井社長のインタビューがあり、最後にはアメリカの様々な人物の盛田評が載っている。その中で私は特にアップルの会長ステーブン・ジョッブスの談話が気に入った。

私たちに最も偉大なインスピレーションを与えてくれたのが盛田だった。世界初のトランジスタラジオ、トリニトロンテレビ、家庭用VTR、ウォークマン、CDプレーヤーなど、ソニーは市場に革新をもたらし、私たちはそこから大きな影響を受けた。今日の発表会を彼は喜んでくれると思う(10月5日の新製品発表会で)」

この日、アップルは、新しい「iMAC」の発表会を開催していた。考えてみれば、アップルという企業も、ソニーと同じ創造的な企業だ。アップルコンピューターは、最近の「iMAC」にも見られるように「私は世界の誰とも似ていない」(ソニーの標語)作品を作り続けている。

ソニーだってかつては創造的ベンチャー企業のひとつに過ぎなかった時代もある。どんなに大企業になっても、ソニーがソニーらしくあるためには、この社風を失っては、ソニーはソニーではなくなってしまうのだ。盛田が盛田らしいと評価されるように、ソニーは、世界中の誰とも似ていない精神が評価されたことになる。

アップルのジョッブスは、アメリカ人とか日本人とかという差異を越えて、盛田に自分と同じ独創の人の匂いを嗅ぎ取り、自分もそうなりたいと、思い続けている人物なのである。

何故、日本人が、盛田の死に対して冷たい態度をとっているのに、アメリカではこれほど人気があるのだろう。不思議だが、盛田は、アメリカの経営者たちに向かって、常に辛口の挑戦的な発言を繰り返した男である。石原慎太郎との共著「ノーと言える日本人」もそんな著作のひとつであり、「メード・イン・ジャパン」では、アメリカの余りに短いスパン(期間)で利益を獲ろうとする経営スタイルを厳しく批判した。

アメリカは、そんな自分というものをしっかりと持って、自分らしく生きた盛田という人物を評価し、その死に当たって、最大級の追悼の言葉を送ってくれているのである。盛田特集の「ニューズ・ウイーク」を読みながら改めて盛田の偉大さと共にアメリカという国の懐(ふところ)の深さというものを感じた。佐藤
 


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1999.10.18