ハッカーの言い分

サイバーテロに思う


1月25日、科学技術庁と総務庁のホームページ(HP)に連続してハッカーが侵入し、いたずら書きをされる事件が起きた。

まず総務庁のHPには、中国語で南京大虐殺に対する日本政府の対応に対する避難の言葉が並び、最後に英文で、次のように記してあったと言う。

日本人?みんな知っているよ。歴史の真実に立ち向かう勇気のない民族、アジアの恥

科学技術庁の方には、初期画面に英語で「日本人は負け犬」という文字が浮かび、「ぺージはこちら」という文字をクリックすると、アメリカの成人雑誌「プレイボーイ」のHPに飛んで行くよう、不正にページが改竄(かいざん)されていたというのだ。

私はこの事件自体は、そんな大したことだとは思わない。

我々が問題としなければいけないのは、いたずら書きの内容だ。このいたずら書きをした人間は、かつて日本の軍隊が第二次大戦中、中国の南京で働いた大虐殺に憤りを持っていることは確かなようだ。最近、日本国内では、「元々南京大虐殺は、中国人やアメリカを始めととする戦勝国のでっ
ち上げで、南京の村人すべてを抹殺するような事件はなかった」とする一部の歴史家や評論家の言動が相次いでいる。おそらく今回の事件は、この動きに対して、政府がきちんとした態度でたしなめられないでいることに対する抗議の意を持って行われた行為であろう。

人間は一度しでかした罪は消えるものではない。かつてのように島国で、鎖国でもしていれば、世論操作もでき、あったことも無いように歴史をねつ造したりする事は出来るかも知れないが、いまは世界中が日本の行動や過去の行為のすべてを歴史書として書いているのである。我々も多くのかつての
日本軍に従軍した人々から、言葉にも出来ないような驚くべき行為をしたことなどを聞いている。あの時は日本自体がまさに鬼の形相で、常軌を逸した行動を行ったことは残念ながら事実である。

ドイツはユダヤ人600万人を虐殺したことを公式に認め謝罪の言葉を発し、イスラエルとユダヤ人組織に対して莫大な賠償金を払い、かつ教科書に書き、ドイツの若い人たちに対して、自分たちの恥ずべき歴史を教えた。「だからあなた方は絶対同じ過ちを犯してはいけないよ」という訳だ。一方日本の
教科書は、日本の戦争犯罪が曖昧に書かれてあることは衆目の認める処である。

ドイツと比べ、日本は謝罪が曖昧で、まったくアジア諸国を納得させられるような内容ではなかった。全てが曖昧だからこうなってしまったのだ。かつて島国だった古代の日本は、征服した部族の歴史を燃やし、新たに歴史を書き直し、自分たちの神や宗教を押しつけ、それで何百年か時代が経てば、どうにかなってきた歴史を持った国家である。おそらくそんな記憶が、時間を待って、ほっかむりでもしておけば、そのうち忘れるさ、位に思っているのかもしれない。

しかし21世紀目前の今、そんな甘いことを考えているのは世界中で日本人だけだ。今や謝罪も出来ず、頼みの経済力もこける寸前にある日本という国家は、このハッカーが示す通り、「負け犬」と呼ばれても仕方のない情けない国家に成り下がったという訳である。

心ある人間は、この事件を契機に「日本人の曖昧さ」というものを真剣に反省し、アメリカや欧州だけを見て行動するのではなく、アジアに対してもう少し、正しい歴史観を持って、接することの出来る国になるよう努力すべきではあるまいか。本当に「負け犬」になりかねないかもしれぬ。佐藤
 


義経伝説ホームへ

2000.01.26