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去勢された日本人

−日本人は農耕民族か?!−


2001年9月2日(日)9時、NHKの不況についての緊急討論会(タイトルさえ記憶していない)と見たが、腹が立って、すぐに替えた。何故、そんなに腹が立ったかと言えば、余りに一般の視聴者のFAXやeメールの声が、緊張感がないというか、穏やかなものだったからだ。まったく切羽詰まった感じがない。今まさに日本人の精神状況は、去勢された犬やネコのようになってしまった感すらある。いつから日本人は、こんなに腑抜けになってしまったのだろう。

そんな昨今の日本人を、「元々農耕民だから穏やかなのは仕方ない。むしろ美風だ」と考える人もいるかも知れないが、自分の存在が、否定されるに等しい状況に在りながら、何も言えずにただおとなしく黙りこくっている昨今の日本人を見る時、「おいおいお前らそれでも人間かよ、悔しくないのか、何とか言えよ。」と言いたくなる。

最新の統計では、失業率は5%を越えてしまった。これからますますリストラの対象になる人間が増えそうだ。それでも怒りを持って、自分がリストラされることを自分なりの言葉で表現している声が聞かれない。どこかでみんな最後は何とかなると思っているのだろうか。そんな中で、シオジイこと塩崎財務大臣は、「最近では、失業率が5%どうのこうのと騒いでいるが、自分の会社が危ないというので、自分から会社を辞めている人も多いようだ。統計にも出ているらしい」と非常に楽観的な見方をしている。

昨今の日本人は、「首切りされた」というと、聞こえが悪いが「リストラされた」というとかっこいいとでも思っているのであろうか。これほど、経済状況がひどいのに、日本人で、怒りを露わにしている労働者を見た試しがない。

企業家もまた同じだ。先のシオジイに「企業家もしっかりして貰いたい。電機メーカーが軒並み赤字に陥っていて、企業家も反省しなければならない」などと、ピンぼけ発言をされても、ただニコニコと、笑って受け答えをするような企業家がいるのには呆れるばかりだ。しかしこんな馬鹿な発言を政治家にされても、テレビを見ている日本人は何故怒りの声を挙げないのだろう。なるほど、と思って聞いている人間がいるとしたら、日本という国家はとっくに精神のレベルで破たんの極にあると見て差し支えないであろう。

去勢された人、あるいは去勢されつつある人に言いたい。日本人は農耕民族などではない。縄文の時代には、狩りによって、一家を養った。戦国時代農民は、所謂農民ではなく、農業に従事しながら、常に戦場にかり出される兵士だった。農耕民族という現在の既成概念にはまる人間が登場するのは、秀吉の刀狩りと、家康の儒教をベースにした封建的身分制度が確立したことによってであり、日本人の血の中には、常に異民族に自分のイデオロギーを押しつけ征服していくという、強烈な暴力的な攻撃性というものが内在していたのである。

これが第二次大戦後の民主主義教育によって、一時的に虚勢された状態になっているのであるが、それが今日のどうしようもない腑抜けな精神状況を作っているのであろう。さてこの状況を「抜け出すためには、どん底を経験しなければ駄目だ」と言う極めて悲観的な人たちもいるが、私はそうは思わない。まず大事なことは、怒るべき時は、怒りをちゃんとした言葉に代えて表現することを最低意識すべきだ。もちろんここで私は戦前の軍国主義のイデオロギーを復活させろと言っているつもりは毛頭ない。人間としてその怒りを抑え、言いたいことを言葉として表現できないような精神風土では、日本人は、世界のどこの国からでも馬鹿にされ、やがて相手にされなくなってしなう恐れだってある、と言いたいだけだ。佐藤
 

 


2001.8.31

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