ガンバレジャストシステム一太郎
  
私は松下の「レッツノート」を愛用している。それだけに、正直な話し、一太郎のヘルプ機能をめぐる「一太郎裁判」は、びっくりした。これはひとつのイジメではないのか。松下は、なぜいじめっ子に成り下がってしまったのか。

しかも訴訟の争点は、ヘルプ機能の絵文字をめぐる問題だという。細かいことは分からないが、大体一太郎を使っている人間で、ヘルプなんて、見ている人間がどれほどいるであろう。ほとんど見ていないというのが現状である。したがって、現在のヘルプ機能は、無駄とは言わないが、最小限にすべき部分だ。要は省いてシンプルにすれば、松下にイチャモンを付けられることもない。またこれだけオンラインが進んでいるのだから、オンラインヘルプでもよい。

とにかく、今回のような極めて小さな部分で、松下が、鬼の首でも取ったようにして、弱体化したジャストシステム一太郎の出荷を止めるという裁判を提起する意味が分からない。また松下の主張を認めた裁判長の見識をも疑ってしまうのである。

特許をめぐる国際的な流れは、けっして一様ではない。これまでは、些細な技術も、含めて周辺についての技術を底引き網のように抱えて、競争他社が、知らずに、その技術に触れるものならば、ネズミを見つけたネコの剣幕で、巨額の損害賠償金を要求するという拝金主義的な流れが一方ではあったが、また一方では、基本OS「リナックス」を代表とするように、そべての技術情報をオープンとして、世界の技術者や企業がこれを自由に改良しながら、グローバルスタンダードな技術としての統一性を確保してゆくという流れがある。

一太郎については、日本語という極めて特異な言語分野を、たった一人で、ここまで作ってきたという功績がある。しかしマイクロソフトは、こうしたライバル会社をみると、これを徹底的に潰し、寡占状態を作るという特徴をもった企業である。この結果、一太郎は、マイクロソフトがその力によって、世界標準とした「ワード」というソフトによって、絨毯爆撃のような大攻勢に曝されて、壊滅状態となった。

誰も「ワード」が最良のワードプロセッサーとは思っていないのだが、周囲がみな「ワード」で文章を作っているために、仕方なく「ワード」を使うというのが現状である。マイクロソフトは、いったん寡占化が進むと、容易にバージョンアップはしない。当然だ。ライバルのソフトを潰すために、それ相当の研究資金を投下して、そのライバルにまさるソフトをこしらえるのだから、その投下資金をゆっくり時間を掛けて吸収するということになる。そのやり方の極端な例は、インターネット閲覧ソフト「ネットスケープ」を潰した後の「インターネット・エクスプローラー」がほとんどバージョンアップしないということに現れている。

今、この数年「ワード」にも、ほとんど技術改善が見られない。一方「一太郎」は、マイナーになりながらも、今回で15回目のバージョンアップをする予定である。さてワープロは、日本語辞書が命である。これについては、誰もが、ワードの辞書よりも、一太郎付属の「ATOK」と呼ばれる辞書の方が遙かに優れていると思っている。だから「ワード」使用者も、日本語辞書については、一太郎付属の「ATOK」を使う者が多いのである。

私は、ここであえて、一太郎をプロデュースしているジャストシステムの経営者に言いたい。「最優秀の日本語ワープロというのであれば、もっとATOKの辞書を充実させなさい」と。おそらく、日本語を専門に使用する者にとって、現在のATOKは不満だらけである。そうした現状をジャストシステムは汲み上げる努力をしているのか。残念ながらしていないと思う。最近の改善は、小手先のことばかりで、だからヘルプ機能なんてつまらない部分で、会社が潰されかねない事態にまで立ち入ってしまうのである。経営者の怠慢を厳しく指摘しておきたい。

今こそ、一太郎は、危機感をもって、日本語の専門家を呼び、委員会を作り、日本語の未来を創る位の気概で「ATOK辞書」を最強のものとする努力をするべきである。古文書をそのまま読み、異字体も入れ、漢文の返り点、レ点、一、二点もない現状を改めて、あらゆるフィールドで使用ができる辞書にかえるべきである。もしもそこまで辞書が進化すれば、日本語はやはり一太郎でなければダメということになり、シュアもあっという間に改善するであろう。技術の蓄積に一太郎は、もっと自信をもつべきだ。しかしながらどうも最近は、目先の改善ばかりで、小学生から、専門家まで使用可能なフトコロの深いソフトにはなっていないように見える。

この裁判で、男下げたのは、松下である。日本的美風などとは言いたくないが、周辺技術までを底引き網的に自社技術にする分野は、もっと他にあるのではないですか、と言いたい。頑張れ、九郎判官ジャストシステム。佐藤
 


2005.2.3

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