日本の若者の意識の荒廃に思う


 


昨日、日本青少年研究所という文部省・総務庁の外郭団体が、例年行っている、中高生に対する国際的な意識調査(日本、中国、韓国、アメリカ、フランスにおける中高生の意識調査)の結果を発表した。

それによれば、「学校生活」に対して満足と答えたのはアメリカ74%、フランス59%、韓国41%、日本32%の順となっている。「社会全般」の満足度は、アメリカ72%、フランス54%、韓国19%に対し、日本はわずか9%だった。家庭生活や自分自身への満足度も、日本はやはり最低だった。「21世紀は希望に満ちた社会」と答えたのも米国86%、韓国71%、フランス64%に対し、日本は最低の34%だった。要するに日本の若者は、現状に対して希望を持ち得ぬ状態にあるということだ。

また特に注目したいのは、結婚観の差である。「結婚は必ずしなければならないか」という質問に対して、イエスと答えたのはアメリカで80%、韓国50%台と高率だったのに対して、フランスは30%台、日本は20%台に過ぎなかった。更に日本の女子生徒の場合は、回答者の86%が「結婚しなくてもよい」と答えているのは驚異である。「結婚前の純潔は守るべきか」という質問にもアメリカや韓国がイエスがそれぞれ70%、80%を占めたのに対して、日本は40%、フランスは20%台と低かった。離婚の意識に関しても、日本の若者たちの80%は、別れるべきと答えのに対して、アメリカでは60%である。

この結果を特にアメリカとの比較でみれば、日本は60年代から70年代にかけてのアメリカ社会以上に性意識が頽廃化していることは明白だ。ただ違うのは、当時のアメリカには、根底に女性解放運動の思想や性文化に対する革命思想があった。言うならば、既成の権力や文化に反抗する若者が、様々な思想と結びついて起こったラジカルな文化運動の側面があったのだが、現在の日本の少年少女の意識の根底にあるのは、漠然としたムードにおける心の退廃そのものなのだ。

今では明らかにアメリカの中高生の方が、考え方が健康的で予想以上に保守的だ。日本の若者の結婚観の稀薄さと性道徳観に対するオープンさは、明らかに日本社会の戦後教育のやり方の失敗をはっきりと物語っている。アメリカの若者が、日本の若者と比較して、健全に見えるのは、やはりアメリカ社会が、離婚社会と言われた社会を、苦労しながら何とか克服しようとして、何よりも家族関係を大切にする伝統的なアメリカ的な家族関係を回復しようと努力している成果なのであろう。それにアメリカには、キリスト教の文化が厳然と存在し、日曜日には礼拝に行く習慣がしっかりと残っている。今の日本には、日本の道徳教育の根幹を為していた宗教的な習慣も縛りもない。結局価値観を得られないまま育った中高生が、この意識調査のような答をするのは、そのような社会的な背景があってのことだ。この意識調査の結果を踏まえ、責任ある立場の大人は、若者の意識形成にいったい何が必要で、これまで何が欠けていたのか、真剣に見つめるべき時であろう。佐藤

 


2001.8.3

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