平和の天使現る?!

−瀋陽事件に思う−


瀋陽事件が、昨夜未明(2002.5.22)取りあえずの決着をみた。

国際政治の複雑怪奇な話は別にして、私は今回5人の亡命者の中にいた僅か二歳の少女ハンミちゃんの姿に救われる思いがした。もしも彼女が居なかったら、どれほどこの事件がおどろおどろしいものになっていたか。

確かに瀋陽事件は、アジアにおける国際情勢の緊張を象徴する事件だった。しかしこの深い暗闇のような事件にあって、終始、彼女のあどけない表情だけが、唯一の救いではなかったか。日本大使館に突入しようとした時、ハンミちゃんを背負っていた母親は、すぐに中国の警察隊に阻止されて、転んだでもみくちゃとなった。そこで髪の毛を小鬼のように結んだ彼女が、母親が木の葉のように扱われて逮捕されるのを、側でじっと悲しげに見つめていた。別の映像を見れば、将来の不安から、母の眼から止めどなく流れる涙を、ハンミちゃんがそっと拭ってあげているシーンがあった・・・。

母親は、身重のまま中国に逃れてきて、不法入国の中国でハンミちゃんを生んだ。初めこの若き母親は、生まれてきたら、中国人に売ってしまおうと考えていたと言う。ところがいざ実際自分の命そのものであるその幼いハンミちゃんを産み落とした瞬間、その考えはどっかに飛んでいってしまったと語っている。当然だろう。

ハンミちゃんという娘の存在は、あの悲惨な政治的迫害を受けながら、何とか生きる活路を見出そうとするキム・グァンチェル一家の希望の星というだけではなく、この事件を傍観者然として対処してしまった結果、世界の世論の轟々たる非難を浴びている外務省と日本政府と我々日本人にとっての救いでもある。いやそれ以上に、全人類に平和の尊さを身を以て教えてくれる存在と云えるかもしれない。

私は2才の少女のあどけない表情に、亡命希望者の祈りを聞き入れた神の御技をみる思いがした。ハンミちゃんの面差しは、まさに平和を願う神が、人類のために使わした天使なのかもしれない。そうだ。彼女は平和の天使なのだ。

 


2002.5.23
 

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