一億総白痴化の予言的中

2000年「理想の上司」アンケートを読む


かつて評論家の大宅壮一氏(1900-1970)が、テレビが急激に普及し出した60年代前半、「一億総白痴化」という言葉を使って、日本人の思考パターンに与えるテレビ文化に懸念を表明したことがある。それから40年近い歳月が過ぎ、奇しくもこの大宅氏の懸念は当たった感がある。恒例の「理想の上司」アンケート(産業能率大学)の結果を見て、正直私はそんなが気がしたのであった。

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このアンケートは、毎年、新入社員500人を対象にして「理想の上司」を挙げてもらうものだ。例年、新入社員気質や世相を反映するとして、注目されているアンケートである。何か例年ひどくなる一方のような気がしていたが、今年はついに来るところまで来たという感じがする。今年はその男性の一位が、31票を獲得した所ジョージで、女性が江角マキコだと言うのだ。これは冗談ではない。只々唖然である。

まず所ジョージというキャラクターから、導き出されるイメージは、余り下の人間に注意をしない。自分自身も無理をしない。出世欲というものがない。適当に生きる。と言った負のキャラクターばかりだ。こんなのが理想の上司としている企業だったら、あっさりと倒産してしまうだろう。自分にとって薬にも毒にもならない楽な上司が、側にいたところで、自分の人生にプラスになることはないのである。

さて上位にランクされるかと思った石原慎太郎都知事は、6票を獲得して9位と低迷した。トップダウンで、思い切ったことをする面が嫌われてしまったのだろうか。それにしてもこのアンケートに答えた新入社員のレベルというものを知りたくなった。こんな若者ばかりなら、日本は本当に駄目な三等国に転落してしまうだろう。

女性の1位の江角だって、あの最低のテレビドラマ「ショムニ」とやらのキャラクターが受けてのことで、まったく話にならない。要するにこの500人の日本の若者の脳を支配しているのは、テレビとマスメディアでしかないのだ。それ以外の人物判断の基準が、おそらく構築されていない可能性が強い。本来なら、学校で学び、歴史の中から、多くの優れた人物を知り、倫理社会では、倫理思想や哲学を学ぶことによって、事の善悪判断が、身に付くようになる。ところが最近ではマスメディア、その中でもとりわけテレビの影響力が強くなり過ぎているのであろう。

もし私が新入社員で、このアンケートを答えてくれ、と言われたら、おそらくへそ曲がりの私のことだから、このように答えているであろう。
「あなた方は、すでに答えを用意しているんでしょう。その中から選べと言ったって、選べませんよ。あなたに言った所で、私が挙げる名前を、アンケートを取るあなた自身知らないでしょうし、たった一票がマスコミに載ることもないでしょうから、答えないことにしましょう」

世相調査と称して、こんなくだらない調査をする産能大も産能大だが、くだらないアンケートに、よりによって「所ジョージ」と書く新入社員が多くいることは、偽らざる事実である。誰が、どこで、どんなに、嫌悪しても、これが日本という国の現実なのだ。今日、日本人の頭の中は、マスメディアというものに占拠されていることは明白だ。さて日本人が、もう少しマスメディアなどに左右されない、個性有る自己を構築するためには、どんな方策があるだろう・・・。佐藤
 


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2000.5.16