日本的システムのほころび?

 
 
 
外務省でとんでもない横領事件が起きた。自分の立場を良いことに、公費を5億円ほど使って、競馬ウマは10頭ほど、ゴルフ会員権、愛人と住むマンション、などを買いあさった。まさに前代未聞の不祥事である。この男、身分不相応な金遣いを聞かれると、自分は良いところのボンボンで、山ほど遺産が入った、とうそぶいていたと言うのだ。

何のことはない。ただの苦労人のノンキャリアだった。神奈川の高校を卒業し、外務省のやっとの事で職を得て、夜学にも通って、学歴の無さを何とかカバーしようとした。信長の草履取りから天下を取った秀吉を好きだったという噂もあるが、とにかく人に取り入るのがうまく、必死の思いで働いた挙げ句、「ロジの神様」と言われるまでになった。ロジとは英語のロジスティックスの訳で後方支援の事である。ここまではまさに外務省の木下藤吉郎を思わせる頑張りで、一市民として何か共感のようなものを感じさせる話だ。

絶大な上司の信頼を得て、ノンキャリアとしては、異例の出世だった。とにかく外交に関わるホテルの手配から、手みやげの事まで、外務省内では、彼に任せて置けば安心という雰囲気まであったらしい。まあ根っからのワルではなかったのかもしれないが、いつの間にか、自分の立場を悪用して、悪事を働くこととなった。おそらくはキャリアの連中に対するコンプレックスのようなものも彼の内部で複雑に絡み合っていたのかもしれない。

しかし外務省の連中は、彼の変節に気づくことなく騙され続けた。同じようなノンキャリアの後輩達に至っては、「自分も将来は彼のようになりたい」と憧れまで抱いていたと言うことだ。ここに人間という者が、イメージによって、騙されてしまうものであるかを表している事件だ。何しろ巨額の横領をし、競馬ウマを何頭も購入し、愛人を囲い、三度の結婚離婚を繰り返し、まるで収支の合わない派手な生活をしようと、誰も可笑しいと言うものはなかった。

いったい外務省という省庁は、どんな価値観の下に、人間を管理しているのであろう。こうなると、単に外務省の内部監査のシステムという問題を飛び越えて、外務省の外交スタンスさえ問われかねない不祥事である。いややはりこの事件は、氷山の一角で、多くの馬好きの役人が、霞ヶ関にいるのかもしれない。そうなると構造的問題ということにもなる。

まあやはり日本的システムのほころびのようなものが現れ出ているのかも知れない。それにしても実に情けない事件としか言いようがない


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2001.1.26