アメリカ国民のブッシュ選択   

  

2004年11月2日。アメリカ国民は、試行錯誤の末、ブッシュ大統領を選んだ。9.11以降、アメリカの国民意識は、明らかに変化した。理屈ではなかろう。テロに対する恐怖感が、国民の投票行動として、共和党ブッシュ候補に流れたと観るべきだ。

ふと視点を変えてみる。弁証法の基本概念に「対立物の相互浸透」というものがある。簡単に言えば、対立物が相互に影響をしあって、新しい変化が起こるとということだ。「9.11のテロ」と「テロに対する憎悪」が対立物である。「ビンラディン」と「ブッシュ」が対立物でもよい。今回の大統領選挙間近に、ビンラディンがテレビに登場して「アメリカ国民の愛国心」を刺激したことも記憶に新しい。結局、9.11のテロは、アメリカ人の保守化の傾向を助長したことになる。一方の負のエネルギーはもう一方の負のエネルギーを生む。

9.11は、その意味で、アメリカ社会を大きく変える出来事だった。その後、アメリカでは比較的リベラルな人も愛国的になったと云われる。大リーグの試合でも必ず国歌が歌われるようになった。

9.11のテロへの恐怖は、憎悪となって拳が振り上げられ、イラクへと向かった。そしてイラク戦争の勃発。戦争の大義は、イラクが禁止されている兵器を隠しているという疑いだった。EUの中心であるフランスとドイツは、この戦争開始を反対したものの、アメリカは、強引に戦争を開始した。イラク統治のモデルは、日本だったとされる。容易に首都バクダートは陥落した。いやしたかに見えた。ところが、アメリカの思惑は完全に外れた。大義としていた禁止兵器もなければ、統治もうまく遂行しなかった。そしてついに一年後の今年、アメリカは、イラクに兵器がなかったということを認めざるを得なくなった。

国際法で、今回のイラク戦争を裁けば、アメリカが不利という見方が多い。しかしアメリカは、国際司法裁判所の存在を認めない。力は正義ということはまさにアメリカのためにあるような言葉だ。今回の大統領選挙で、アメリカはもしかするとあと四年間、戦争の道を歩むことになるのかもしれない。

こまったことに戦争によって、潤う企業もある。それは戦闘機一機、数百億を越える次元の利益を生む巨大な利権そのものだ。戦争によって利益をうる企業がある限り、戦争が最終的に終わることはない。対立物は互いに影響し合って、より危険な道を歩んで行く可能性がある。ブッシュのアメリカの今後四年間の暴走が心配だ。佐藤
 


2004.11.4

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