日本の宇宙科学技術水準と
人工衛星「はやぶさ」

-どこかおかしい日本2-


どこかおかしい。一度かしげた首が戻らないほどだ。科学技術の進歩というものは、時には大飛躍というものがあるが、基本的には、基礎技術の積み重ねと経験の繰り返しということに相場が決まっている。

ところが、突然降って湧いたように、小惑星探査機「はやぶさ」という人工衛星が、去る2003年4月9日に鹿児島の宇宙空間観測所から、H5ロケットによって打ち上げられた。その飛行計画によれば、余りにも突飛なことが言われている。日本の先端技術に対する信頼は人一倍の私だが、この計画だけは、どうにも理解できない。

話によれば、この和製人工衛星は、直線にして、太陽までの距離のほぼ二倍にあたる距離を二年間かけて飛び続け、小惑星「1998SF36」に接近する。この小惑星の大きさは、直径わずか700mでラグビーボール状のいびつな球体をしているのだが、わが「はやぶさ」は、その惑星に接近し、軟着陸をする。この間わずか一秒。獲物を捕る「はやぶさ」のように岩石を数グラム採取し、帰還軌道に戻り、更に二年間飛び続けて、その岩石を平成19年に地球に持ち帰るというものだ。

更に、この人工衛星には、小惑星に降りる際に、ふたつのものを投下する。ひとつは小さなボール。そのボールには世界中から寄せられた87万7千人の署名が、極小文字で、アルミファイルに印字されている。ふたつめは、向きを変えながら、写真が撮れる写真ミニロボット「ミネルバ」の投下だ。

これによって、文部科学省の宇宙科学研究所は、宇宙探査技術の向上と太陽系の起源の研究に大きな前進になると強気の構えだ。

まるでサンテグ・ジュペリの「星の王子様」を彷彿とさせるロマン溢れるミッションだが、こんなことを出来ると信じているとしたら、少し技術というものを甘く見ている技術者か、それとも北朝鮮の人工衛星騒動ではないが、何か政治的な意図があって、リークされたものとのうがった考えも浮かんでしまう。日本経済があまりにも萎んでいるので、日本人を元気づけようとの思いもどこかに感じる・・・。

さてこのミッションを検討する前に、日本の宇宙技術の水準を冷静に見ておかなければならない。大体目と鼻の先にある月の石も持って帰る技術もない日本が、どんな技術を用いて、「はやぶさ」が餌を捕るように、宇宙からすれば、ハエか蚊の如き小惑星の表面に、接近し、その背からミクロのウイルスを採取する芸当が出来るだろう。NASAが、火星の表面を探査し、様々な角度から写真を送ってきたが、おそらくあのミッションの何千倍もの、難易度を持つものだ。それを月にも火星にも人工衛星を送ったことのない日本がどうしてできよう。世界最先端のNASAの上を行く技術の蓄積は、どんなにひいき目で見ても、現在の日本にはないのである。

日本の技術の水準を否定するわけではないが、今回の企画は余りにも荒唐無稽である。おそらく、このミッションの技術的前提は、数年前であったか、彗星の中心に、人工衛星が、突入するというミッションがあったと思うが、その延長にある挑戦だと思われる。しかし残念ながら、余りにも技術の蓄積がない。

これと比べて、今、火星に向けて航行中の「のぞみ」という人工衛星がある。これが来年1月頃、火星に接近し、その大気を調べることになったいるが、この「のぞみ」のレベルなら、その意図も十分理解できる。「のぞみ」は、日本の宇宙探査の技術水準に見合ったミッションだ。

ところが今回の企画は、それより遙かに時間が長く、その技術の精度も飛躍的に高い。いや高すぎるのだ。とすれば荒唐無稽で「オタクチック」なこの計画が、いつの間にか、「・・の故障により、連絡不能に」となって、立ち消えになることのないよう、しっかりと今後の動向を見据えて行くことが必要だ。さて現在の所の当ミッションの予算は、200億弱のようだが、これも国民の血税である。残念だが、意味不明なミッションで、国民の貴重な税金が暗黒の宇宙に消える確立はとてつもなく高いと言わざるを得ない。ロケットがいきなりUFOに変化することはない。佐藤


結論
自己の技術水準を錯誤した無謀な飛行計画

参考
文部科学省 宇宙科学研究所URL
http://www.isas.ac.jp/j/index.shtml
 
 

 

 


20035.13
 

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