『川の名前』 川端裕人

384P、早川書房
税込み1785円、ISBN: 4-15-208567-3

 夏、少年は、川の名前を知る。
 本格ペンギン小説登場!

 菊野脩、亀丸拓哉、河邑浩童の、小学五年生三人が、夏休みの自由研究の課題に選んだのは、自分たちが住む地域を流れる川でした。普段の生活の中では一顧だにされない小さな川ですが、そこには数々の驚くべき発見が隠されていました。ここに、少年たちの川をめぐる冒険がはじまります。
 川は少年たちを受け入れ、居場所を与えます。一昔前ならどこにでもいた、川で遊ぶ子供たち、つまり、「カワガキ」の復活です。彼らはときに対立したりしながらも、つぎつぎに立ちふさがる疑念や困難を、協力してしりぞけることによって、物事を真摯に見つめる姿勢や、自分の行動に責任を持つ態度などを身につけてゆきます。
 夏休みの冒険によって、少年たちが一段と成長してゆく姿は、スティーヴン・キングの名作『スタンド・バイ・ミー』を思わせるみずみずしさを感じさせてくれます。そしてその姿をとおして、川という身近な自然のすばらしさ、そして我々人間との隠されたつながりが生き生きと描きだされています。少年たちの活躍は、かならずや読者の感動を呼ぶことでしょう。
 川端氏が得意とするネイチャーライティングを、ピュアでハートフルな青春物語へと昇華させた、「川」小説であり、実は「ペンギン」小説でもあります。かわいらしいペンギンは、少年たちが川で発見したものと密接にかかわってくるのですが……。ここから先は、ぜひ本書をお読みになって、ご自身の目で確かめてください。川と、川に生きる動物や人間のことが、きっと気になってくるはずです。
 この本を読む前と読んだ後では、「川」を見つめる目が変わります。今年の夏、自分の「川の名前」を見つけてみてはいかがでしょう。