「remix8月号」(2000.06.29)


 「週刊SPA!」で"ミニスカ右翼"などと紹介されてる女性を主役にしたドキュメンタリー・・・といった宣伝文句を最初に聞いた時は、正直いって辟易としたものだ。ミニスカ+右翼=?全共闘オヤジか文化コンプレックス小僧を相手にした、またもや姑息な商売なのか?と。しかし本編を観てその先入観は、脆くも崩れた。

 主人公はその、"右翼"パンクバンドで女性ヴォーカルをつとめている雨宮処凛。学校でのいじめ体験〜自殺癖〜人形製作〜ビジュアル系追っかけ〜民族派(右翼)運動に参入、そして現在のバンド活動・・・冒頭で辿られる彼女の半生は、わかりやすすぎるくらい"ありふれた"自分探しの行程。そしてそのモチーフとして選択された"天皇制"。しかしカメラは、それを手厳しく批判するわけでもない・・・どころか、雨宮の手に渡されたビデオカメラは、彼女の独白を淡々と収録していく。天皇の戦争責任を過去、問い続けてきた経歴をもつ監督の土屋豊は、きわめて"民主的"なやり方で、彼女に思う存分"自分語り"させる。途中で一水会の会合風景が出てきたり、北朝鮮に飛んだ彼女がよど号ハイジャック犯と対面したりも・・・する。なんか凄いぞ!と思うのは年寄りの感覚(価値観)にほかならず、彼女にとってはそんな"歴史"も、自分探しの一中継点。そして映画の結末部、(自分と対峙している)ビデオカメラを、雨宮は手放せなくなってしまう・・・

という具合に、茶髪のキャバクラ嬢、にして民族派のモノローグの前に、戦後史も何もトホホなくらい"相対化"されてしまうというあたりをして、すこぶる"批評的"な映像。そういえば昨年秋の天皇在位10周年祝賀会で、元X-JAPANのヨシキがピアノ演奏を披露して、少なからずのファン少女たちを皇居前に集めてたなぁ・・・なんて、みんなもう忘れてる?

(木村重樹)


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