「月刊ドンドン11月号」―異能の女に聞く―(1999.11.10)


 軍服を身にまとい、手には軍刀を捧げ持ち、日の丸の腕章には墨跡も鮮やかな『神風』の2文字!「大和民族に栄光あれ!」雄々しい軍国スタイルでそう絶叫するのは、パンクバンド『維新赤誠塾』のボーカル、雨宮処凛(あまみや・かりん)だ。長い茶髪を振り乱し、客席を睨み付け、「我らが敵はアメリカだ!」とシャウトする。

 つまり、雨宮処凛は右翼なのである。どんなふうに右翼なのかというと、今年の春まで民族派右翼団体『超国家主義民族の意志同盟』の由緒正しき構成員であり、イロイロあって脱退した今も『日の丸』に忠誠を捧げ、『君が代』を歌い、大和民族の誇りを取り戻すため、『安保破棄・反米』を旗印に前述の過激右翼バンドによるライブ『第四次ヤルタポツダム体制打倒決起集会』を開くほど、とにもかくにも、バリバリの民族派闘士なのである。

 右翼であると同時に驚くことに雨宮処凛は美少女でもあるからして、ちゃっかりキャバクラでアルバイトしちゃったりもする。なんといっても165cmの身長に、上から82・56・83のキュートなバディ。

加えてメチャ愛くるしいベビーフェイスに、甘くハスキーな声。キャバクラの制服ファッションでもある超ミニのスリップドレスを着てニッコリ微笑めば、オジサマ方はみな鼻の下を伸ばして「ウンウン、いい子だネェ」とスリスリしてあげたくなるほど可愛いのだ。

 現在24歳、北海道出身。血液型はA型、水瓶座。好きな男性はいるけど、恋人はいない。好きな食べ物はおにぎりとゆで卵。

 それにしても世にも珍しいミニスカ右翼、雨宮処凛嬢。なんでまた右翼を活動の場として選んだのだろう。

「社会との繋がりを持ちたかったの。自分を認めてもらえる場所が欲しかったのかもしれない。」

 でも、処凛ちゃんの世代だと、右翼ってかなりアングラなギョーカイじゃない?宗教でもなく、左翼でもなく、なんで右翼なの?

「私が悩んでいたいろんな矛盾が何なのか、ストンと分からせてくれたのが民族派右翼思想だったの。この腐り切った現代平和民主主義を、徹底的に粉砕しなくちゃいけないのよ。」

 日本はこんなに平和なのに、世界には飢えた子供たちが大勢死んでいる。殺し合い中の人、祖国を捨てて逃げ出さざるをえない人がいる。そう考えると腹が立って仕方がなくなる。そんな行き場のない正義感を受け止めてくれたのが、民族派右翼の思想だったというわけ。彼女は限りなく真面目なのだ。

 そんな彼女がなんとこの秋、映画デビューしてしまった。タイトルは『新しい神様』(ビデオアクト)。自主ビデオ界の奇才・土屋豊監督によるドキュメンタリー作品だ。民族派右翼の活動家であり、かつバンドのボーカルであり、かつキャバクラのオネーチャンでもある雨宮処凛の日常が、カメラを通して淡々と語られる。

 といっても、小難しいイデオロギー映画ではない。作中雨宮は、バスローブをはおっただけのしどけない姿を披露。訪れた北朝鮮でも、「お風呂に入れないから早く帰りたーイ」と寝ぼけた発言をかまし、挙げ句、歓談した『よど号』メンバーを、「すっごく面白いオジサン」と恐れを知らぬ発言。なんともすっとぼけた、笑える作品なのだ。山形国際ドキュメンタリー映画祭’99にも正式招待されているこの作品。興味がおありの方はぜひご覧頂きたい。

---自分のこと、どんな女の子だと思う?

「ウン、目立ちたがり屋かな。」

---そりゃ、目立つよね。若い女の子で、オマケに美人なんて、まず右翼にはいないもん(失礼)。お陰で  映画にも出られちゃったりするし。

「アハハ、でも、もともとすっごい暗いヤツだったんですよ。小学校の時なんかイジメられっ子だったもん」

というか、話を聞いてみればどうも目立ちすぎてたらしい。というのも、彼女、「初体験は小学校高学年の時。しかも相手は女の子!」いわゆるレズだったのである。

「好きだなぁと思う女の子とは片っ端からヤッてた」

そういうものだと思っていたらしい。彼女に憧れる男の子には全くの無関心だったというから、当然周りからは異端視される。

「学校や社会から否定される悲しさを、小学生で学んだんですよ、私(笑い)」

長じて青春時代を迎えても、周りから認めてもらえないという寂しい思いが続く。

中学3年での男の子との初体験以来、セックスのほうはノーマルに軌道修正されたとはいえ、やはり雨宮処凛は独自の道を突っ走っていくのだ。

「完全にサブカル、アングラおたくだったのネ」

との言葉通り、死を連想させる不気味にきれいな人形作りにハマッたこともある。その人形の展示会で知り合った友だちや、10代後半で始めたビジュアルバンドのオッカケ連中になぜか自殺未遂者が多かった。雨宮自身も、感染したように自殺を繰り返すことに・・・・・・。

「私、影響受けやすいんですよ」

しかし、彼女の場合、それだけには終わらない。「自殺未遂者よ、この指止まれ」とばかりに、なんと『自殺未遂ナイト』とやらのイベントをブチ上げてしまったこともある。

---今後も右翼活動を続けていくの?

「モチロン!ババーになってもやってると思うな。」

---日本は変わりますか?

「正直言って、私が理想とする方向には変わっていかないと思う。いくら『君が代』『日の丸』が法制化されたって、相変わらず平和ボケ日本が続くことには違いないモン」

---じゃ、何のために活動するの?

「自分のため、かな。自分がなにをやっているかというリアリティーが欲しいのかもしれない。」

そんな彼女の悩みは、鼻血。興奮したり暑かったりするといとも簡単に鼻血を出すらしい。

「キャバクラで客の相手をしてても、いきなりタラッと出るの。(笑い)」

きっと活力を持て余しているのだ。インタビューのあとの9月後半から雨宮処凛はイラクの国民的音楽祭にバンド『維新赤誠塾』として参加してきたのだ。天晴れ大和撫子の心意気を、遠い異国で見せつけてみたに違いない。

(吉川由佳)


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