「日本経済新聞(夕刊)」―チャレンジ―(2000.08.01)


漂う閉塞感〜出口探したい

 ビデオカメラで映画を制作する新世代のドキュメンタリー作家。自らは「ビデオアクティビスト」と名乗る。「作品を撮って終わりではなく、多くの人々に見てもらうことで社会とかかわりたい」という意思の表れだ。

 とはいえ、作品の内容は主義主張をふりかざすものではない。新作『新しい神様』は、右翼思想を掲げるバンクバンドのメンバーと、天皇制に疑問を感じる自分との交流を追いつつ、自らの存在意義を見いだせず、この国の未来も信じられずにもがく若者の心を描き出した。

 そこには「学制時代は周囲となじめずに悩んだ」という三十三歳の作家自身の内面が重ねられている。孤独をいやし、うっ屈した気持ちを発散させる場所が映画館だった。それから身近にあったビデオカメラを手に、作品を撮りはじめた。

 「僕にとって作品は映画というより、観客一人一人にギリギリのメッセージをこめたビデオレター。問いかけたテーマについて一緒に考えてほしい」。作品を撮ることは「等身大の自分を表現すること」。次は、現代の閉塞感というテーマを推し進め、「そこからの出口を探す作品を作るつもり」。


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