苦悩

苦悩


バルタンが、また? 科特隊からの緊急連絡を受けた岩本は、 自分がいま、何をすべきなのか、とっさに判断出来なかった。 彼らは、ウルトラマンによって、倒されたのではなかったのか?

岩本は、毛利博士の ”おおとり”についてコメントを求めら れた後、研究室に戻って、ある思いにふけっていた。
毛利が求めたのは、本当に名声だけだったのだろうか? 自分は ”安全の確立された技術こそがすばらしい”と言ったが、単に 臆病なだけだったのではないのか?

そのとき、大声が、岩本の思考をさえぎった。
「博士! 科特隊から連絡です! バルタンが現われました」

「何だって? 彼らはすでに...」
「間違いありません。イデ隊員のパンスペースインタープリタで、彼らの言語を分析したそうです。」

「そうか。では、我々の役目は、いつも通りの後方支援になる可能性が高いな。君、科特隊との映像回線をチェックしてくれ。戦闘の様子をモニターしたい。」
「いえ、実は、遭難した”おおとり”を、科特隊が救助に 向かうらしいのですが、その件について、ムラマツさん が、先生にご相談があるそうです。...どうも、バルタ ンの仕業ではないかと....」

すでに、岩本の意識には、部下の声はなかった。
毛利君が遭難した。ムラマツは、”あれ”を借りる為に、やって くるのだ。そうだ。フェニックスだ。
安全性の追及の為に、あえて開発競争を避けたのだが、宇宙空間 での救助活動に、突然引っ張りだされることになろうとは。思え ば皮肉な巡り合わせになってしまったものだ。
いや、待てよ。バルタンとの戦闘もありえることを考えると、丸 腰のフェニックスでよいのであろうか.....

「君、格納庫に整備の済んだビートルがあったね。あれを燃焼試験室に移動して、あのエンジンと接続してくれたまえ。」
「先生、あれって、まさか、ハイドロジェネレートのことではないですよね。」
「いや、その ”まさか”なんだ。これから、科特隊の諸君にご披露しようと思う。それから、燃料注入を行なって、格納庫へ移動だ。そうそう、飛行管制用の電子計算機が必要になるから、予備のシステムを使用できるようにしてくれたまえ。」

部下が慌てて出ていったドアの前で、岩本は思った。このような開 発途上のマシンを彼らに使わせることは本意ではない。ビートルの 開発にあたっては、確かに大気圏外での使用を予測して、機首を強 化、翼端の材質も、宇宙往還機と同程度に強化してある。しかし...
岩本は、窓際に歩み寄り、空を見上げた。
毛利君。私は、君を、少し誤解していたのかもしれない。 残念ながら、私は地上に残って、万一に備えねばならないが、すぐに 私も、迎えに行くからな。

「先生、科特隊の方々が見えました。」

「わかった。すぐ行く。」



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