ある国際平和維持機関にエンジニアとして入隊した彼は、作業時間を 終え、交代メンバーに業務を引き継いだ後に、個人的な日誌を書くのを 習慣としていた。度重なる敵の攻撃に対し、味方の損害も多い、 GR (通称ジャイアントロボ)のメンテナンスにあたる彼の疲れもピークに 達していたが、ベッドでその日の日誌を書くと、彼にも、深い眠りが訪 れる。

ある機関員による、
GR メンテナンス日誌

19XX:某日
某作戦行動にあたっていた機関員が、偶然から敵の巨大ロボットを入手した。 機関内には、一般火器や輸送手段、そして、通信機器などに関 する整備セクションが存在していたが、巨大なロボットをメンテナンス する技術はなく、内部での混乱は大きい。やむなく、都下の研究所 をメカの格納庫に転用することになった。いままで、電磁波の漏洩を防 止していた建物に、ロボット操縦用の電波の受信、増幅装置を設けるな ど、数件にわたる改造があったようだ。自分も、極秘 のうちに、某社より出向勤務を命じられることになる。

19XX:某日
深夜、ロボット飛来。操縦が不慣れな為か、発進口の一部が損傷。 ロボットの入力は、音声認識を用いるもので、操縦者(小学生) が新隊員として迎えられるとのこと。常時、スタンバイ状態に おかれなければならぬ為、ロボット内部メカニズムの把握、ソフトの解析、武器の 弾薬等の補充には、なかなか十分な時間が割けない。さしあたっては、保有武器の調査、 音声認識の正当率の調査、そして、隊員とのコンビネーショ ンのとれた作戦行動を図るための”顔合わせ”が行われることになろう。

19XX:某日
小学校が休みになる日曜日を利用して、音声認識に関する調査を行った。 メカ内部に、モニター用の計測機器が接続されていたので、比較的楽な 作業ではあったが、声変わり前の小学生の声は、なかなか認識されにくい らしく、計器は、なかなか満足な値を示してくれない。しかし、声そのものについての認識のレベルが低いにもかかわらず、ロボ側の行動 パターンは、常に安定しているので、さしあたっての動作に関する不安 はない。納得のいきにくい結論ではあるが、ロボのソフトに、 ”あいまいさ”を考慮した、何らかの対策がとられているのかもしれない。
U7 のような子供を戦いに参加させなければならぬことは、非常につらい ことであるが、支部長以下、隊員達も、同じような気持ちであろう。
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19XX:某日
ロボの各部品のコピーを作成した成果がついにあらわれることになった。 溶解液を発射する怪獣の攻撃でロボの片腕がとけたが、修理を行い、 次の出動に間に合わせることができた。弾薬の規格、破壊力などの解析 も進んだので、後は、これらの品質を守り、短時間に補充することを 目指さねばならない。ロボの各パーツを制御するソフト部分の解析も進ん でいるが、OS については、謎の部分が多く、いまだにブラックボックス となっている。
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19XX:某日
先日、某女性隊員の願いを受け入れて、ロボが、U7 の位置をつきとめる 手助けをしたという。技術的に考えると奇妙な現象であるが、”彼”には 心があるのであろうか。暗闇で彼(当然、機能を停止している) をみあげるたびに、ふと、話し掛けてみたい衝動にかられる。
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19XX:某日
ロボの燃料が急激に減少しているが、急な出動が続き、補充できない。 やむなく、補助燃料装置を設置したが、正常に機能せず、切り替え時にシステム全体の コールドスタートを要するという不具合がある。ほかにどのような不具合があるか、 予測もつかぬ為、さきほどまで、スイッチは解除されたままだった。しかし、 私は、個人的判断でスイッチをいれてしまった。次回の点検の際に、 この措置が発見され、自分は注意をうけるかもしれないが、それでもいい。 私は、ロボに勝利してほしいのだ。



夜勤明けに、昨日の感想を書くと、彼は疲れた体をベッドに横たえた。 奇しくも、数時間後にロボが最後の出動をする、その日の朝のことであった。




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