「明日撃つ日」
『遊子』第29号(2022年12月)掲載
太初より深きに棲みて視えざればメナシウオなお闇を知らざり
魚なべて横長なれば横向きに置かれて順に買われゆくなり
時間には終わりなけれど巡りきて針だけがまた0時に戻る
風吹けば風になびかう考えることを忘れた名もなき葦が
粛々と終わらせゆかむそれぞれの起承転まで済みし一期を
まず締めてそれから捌く人様に食わせる鳩肉料理の鳩も
やり方を教わっている やるときは真綿で絞めるように絞めろと
利き手ではない方の手で引き寄せる今度は使うような気がして
笛吹けばピッと響いていたいけな子ら次々にでんぐり返し
抗える者は滅ぶるならいにてかくいじらしきメダカの群れも
赤とんぼ群れなすうちの一匹が向きを変えたり飛び去る前に
八の市に売れ残りいしひとつにて幹やや傾ぎたるを買いたり
深夜デモは人にあらざるもの多く百鬼百様の姿(なり)して歩む
勝者すなわち強者とわかるその日まで堤に穴を穿ち続けよ
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『2022年 コロナ禍歌集(仮)』参加への誘い再びありて詠める
射(う)てと言われれば射つ歌えと言われれば歌う疫禍ぞ 射て!歌え! 撃て!!
Ⓒ現代歌人協会