「霹靂の夏」 
      
『遊子』第21号(2014年11月)掲載


  勝負師を自任しおればいそいそと敗けいくさへと来てうつ博打
          らい
  だしぬけの雷はいかなる必然もあらでそのときその場所に落つ
                               しりぞ
  またすこし歴史が動くおのずから正と正とが斥けあえば
                                    
   えにし
  どのようにこだわればいい流したることなき血にてつなぐ縁に

  手は清く保つ その朝迷いなく愛する者の背を押さむため

  あくまでも兵の一人として犯す今日の罪もう明日には忘れ

  掃討の旅の途上に咲きいたる花の名を知る末期の声に

  無垢ゆえに滅びし旧き帝国のありという かの氷河の真下

  人の口に立つる戸のなき世であれば悪しき言の葉おりおり狩らむ

  天さえもひれ伏すならむ未曾有なる空色の薔薇生みし人知に

  これまさに熱血球児 見逃せばボールのはずの魔球に手を出す

  平和なるときも戦時も知恵にては外すすべなき五つの輪っか

  人も野もやさしく濡らす日照り雨 事前は事後の次にまた来る

  あといくたび生きてまみえむ空爆のごと華やげる花火の夜に

  
光ある限りというは永遠によく似ていたり 日時計回る