「Third」
      『北冬』No.013(2011年12月)掲載


  天然の美ってたとえば人知れず咲いてしおれて咲く野のあざみ

  見届けるにはちょうどいいころだからふたり残して帰りはしない

  遠くから見てるときれい 黄昏を花から花へ蝶行くところ

  ゆらゆらと肩並べゆくひとかげに月のひかりが冷たく刺さる

  曇りなき目にのみ視える星砂が落ちてる道でそっとわらうの

  空の彼方の出会いのために国中の子らが祈るよ、おんなじ夜に

  宇宙にも降る雨があり降るごとに一本きりの河にあつまる

  去るときはこんなものかも 跡濁すことなき鳥の飛び立つに似て

  味方とか言えるわけない裏切れる側の立場じゃなかっただけで
                  ゆかり
  気休めとわかっていても縁ある人のことだし一、二度は言う

  思い出の続きのように今日まではいい子ぶってるふりをしていた

  ぎざぎざに空いた穴でも地上なら水か空気ですぐに塞がる

  気持ちだけで埋めてくつもり人ひとり分にすぎないすきまだけれど
  まばた
  瞬きがばかに気になる視線には直線だけしかないと知った日