「しゃばまんだら」
『遊子』第18号(2011年11月)掲載
ごまめにはあらざるもののおのおのが夜ごとしきりになせる歯ぎしり
縁先に裏返りいるこの虫もゆめたまさかに死ぬるにあらず
横ざまにのたうちまわる魚たちのこれじゃ終わりにできぬ夏の日
安らかに逝かせむがため備えおくこの世に人数分の眠剤
生きているうちに踏むべし花も実もいっそ蹂躙と呼びたきまでに
成仏という語のあるを僥倖として思い出す海の手前で
瞬かぬ目になら人は騙されるそんなつもりじゃないといっても
まったくもう何の因果かキーパーが四肢のみならず五体を投ず
爆竹はときにめでたく祝宴の終わりではなく始めに鳴らす
やいば
凶器にはあらぬ刃に切り刻むやがて食材たらむあれこれ
人以外のものならどれも同じにてまずは見た目と値段で選ぶ
軀ごと人も機械も捨てられる内側だけが壊れたときは
またひとり時代とともに逝く者のためにいくたび唱えやりし異
棒に当たる犬のほかには引き合いに出すべきものの多くはあらず
あくまでも空はそらいろ 天井に画くとき青は使わずに画く