「昇天せり」 
    
『遊子』第29号(2022年12月)掲載
     ―「特集 歌人が詠む川柳」参加作品―



 だからもうスパゲティーとは呼ばないで

 ありふれた木ばかり生えてきてにょきにょき

 魂はちょうど留守ですすみません

 あの夏が青春だったはずがない


 まだ負けたわけじゃない。でも負けている

 目刺しにする前に目玉は抜いておく

 食べるため卵の外へ割って出す


 炙る火は魔女だと決めてからつける

 生きながら胴を輪切りにして撮す


 ただのシャンプーでした使ってみるまでは

 川柳の五七五が何か嫌(や)


 使ってみればただのシャンプー

 この世の声耳だけがまだ聞いている


 恥ずかしいのはお天道様にだけ

 天国へ焼き場の煙突から昇る