「一分間の」
     『Esクレプシドラ』第22号(2011年11月)掲載
             
−「特集・儀式」参加作品−


  いけにえが処女でなかった村だけが滅びればいい神の御前で

  死んだのを確かめてから一人ずつ魔女であってもなくても埋める

  手続きは必要だから勇ましく宣戦布告だけはしておく

  くだらない、と決めつけるなよ いつだって旗は高々掲げるものさ

  景気づけのラッパ程度で征くわけにいかぬいかなる戦いであれ

  バンザイも今日なら許す送り出すときはいそいそするものだから

  馬の耳は気楽でいいね 壇上に長のつく人ひとりを立たせ

  支えなきままに生き来し巨星いま比喩にあらざるものとして墜つ

  毎年のことにてあれば気兼ねなく忌日みんなで祝おうじゃないか

  一斉でなければあまり意味のない黙禱おわる さあ目を開け